第5話 広告

話し合いの翌日、次なる仕事をこなすために自宅へ一旦戻り支度を整えると、リアドリアへと向かった。

というのも、天使であり、俺の弟であるユリウスからヘルプコールがあったからだ。まぁ行かないわけにはいかない。

ここは兄としての威厳を保つのだっ!


「こんにちは、兄さん。」


「久しぶりだな、ユリウス。相変わらず元気そうだ。」


兄弟で軽くハグをしながら挨拶した。俺は16歳、ユリウスは15歳で、2人の背はほぼ同じぐらいだが、母親似の俺と父親似のユリウスなので外側からみたら兄弟には見えないだろう。


「久しぶり、あえて嬉しいわ、イレーナさん。」


「こちらこそです、カレンさん。」


隣では、イレーナとカレンが軽くハグをしていた。2人の左手の薬指には、ダイヤモンドの指輪が輝いている。もちろん、両方とも俺が作ったやつだ。


「一年ぶり、では無いわね、最後に直接会ったのはあの時だから、3ヶ月ぶりぐらいかしら。」


「そのぐらいだと思うわ。」


イレーナ仲が良いらしい。イレーナは、コミュニケーション能力が凄く高い。ツンデレ美少女であるが、同性には人気があるようだ。

また、聞いた話によると、手紙なんかも出し合っているそうだ。


「早速、案内するよ。付いてきて、兄さん、義姉さん。」


「あぁ。」


俺達は、ユリウスの案内に従って、お目当ての場所へと向かった。





今日ここを訪れた理由は、突然の思いつきというわけでは無い。

以前から計画していた事で、そろそろやってみてもいいんじゃないかな〜って思っていた事を実践しようと考えたからだ。


【事の発端は突然の思いつきですけどね。】


そこはいいんだよ。

それじゃあ流れに身を任せるだけのミーハーみたいじゃん。ミーハーが悪いとは言わないけどさ。


【え?違うんですが?】


おいおい。


と、そんな話はともかく、実は数年前から計画していたある出来事がやっと実現可能段階にまでなったのだ。

というわけで、俺達は目的の場所へと到着した。

俺達が顔を出すと、ピッチの上で練習をしていた選手の1人が大声を出した。


「お、おいあれっ!」


その選手を先頭に、選手達は次々と騒ぎ始めた。ボールを止めて、俺達の方へと視線を向けた。


「あれ、FCTの元監督、イレーナ様だっ!」

「隣はRSWの元監督のレオルド様だっ!」

「やっぱりそうだよっ!どうして俺達の練習場に・・・・・・」


そう、ここはジア連邦共和国首都『リアドリア』に本拠地を置くプロサッカーチーム『ACR』の練習場だ。ちなみに、リアドリアの中央にある駅の南側に本拠地となるスタジアムを持っており、最近では多くのサポーターが毎週ゲームを楽しんでいる。


「楽しんでいるかい?」


「「「はいっ!」」」


選手達は、声を揃えてそう言った。彼らは、数年前に行った選挙制度を広めるために誕生したプロサッカーチームであり、現在は4都市6チームによるリーグ戦が行われている。

ハーンブルク領ほどでは無いものの、こちらも人気を博しており、多くの人とお金が動いている。

また、ハーンブルク・リーグやジア・リーグの他にも、ジオルターンを中心としたジオル・リーグ、サーマルを中心としたサーマルリーグ、トモタカを中心としたトモタカ・リーグが誕生した。

これで5つのリーグが誕生した事になる。


とは言っても、ハーンブルクリーグと比べたら人数も規模も段違いだ。そもそも鉄道などの移動手段が無いので週に一度の開催も難しいし、賞金や給料だって低い。

代わりに、他のリーグで活躍した選手が、ハーンブルクリーグへと移籍する、という例が増え始めた。


少しずつだが確実に、大陸西側のあらゆる所でサッカーという文化が広まっていた。


プロとして日々練習に励む少年少女達との会話を楽しんだ後、俺達はある人物の所へとやって来た。


「お久しぶりでございます、レオルド様」


「久しぶりだなイナ。」


俺達がやってくると、彼女は少し会釈しながら出迎えた。

彼女は、ジア連邦共和国サッカー協会のリーダーであり、ジア連邦共和国にサッカーを広める事に大きく貢献した人物だ。

彼女自身はそれほど上手いというわけでは無いが、ボールは友達と豪語するレベルのサッカー好きだ。


「今日は、この前話していた例のアレがついに実現可能段階に到達したからそれを伝えに来た。」


俺は早速、ここにやって来た理由を告げた。少しぼかしながら告げたが、彼女はすぐに何の話か分かったようで、手に持っていたペンを置いてこちらに食い付いて来た。


「という事は、ついに世界大会が実現できるのですねっ!」


「あぁ、参加地域数はそれほど多くないが、大きな大会になるはずだ。」



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どうでもいい話


『ACR』というのは、『A.C.リアドリア』の略です。

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