第4話 委託

結婚後、俺はインフラ業や軍事産業、一部の重要な産業を除くほぼ全ての第二次産業を民間に委託する方針を固めた。もちろん、これは何も急に決まったと言うわけではなく、結婚をする前から密かに少しずつ行われていた事だ。

簡単に説明するとハーンブルク家は、今後のハーンブルク領の発展の為に必要だと思った技術や実験結果などを公表する代わりに、企業(商会)側は収益の一部を法人税としてハーンブルク家に納める事と、戦時中の全面協力が約束された。

同時に、企業側に独自の研究機関を持たせ、日々研究させるようにした。


「立派な工場だな・・・・・・」


「ハーンブルク銀行からの資金援助があってこそでございます。」


「これから先は、我々ハーンブルク家だけが引っ張るのではなく、民間企業の力も借りて共に前へ進まなければならないと考えたのだ。」


「レオルド様のお考えは理解できましたが、いささか急すぎではありませんでしたか?」


「それはすまなかった。」


これを行った目的として、俺やハーンブルク研究所が開発した様々な技術や製品を最大限に活かす事が期待されていた。というのも、製品をより効率よく作ったり、物の売り方なんかは俺やアイよりも商人に任せた方が良い場合が多いからだ。

領外に流出させない事が一番ではあるが、流出しても大丈夫なギリギリのラインまでの情報をハーンブルク領に本拠地を置く信用のおける企業に渡した。


ちなみに、流出が発覚した場合は、軽くない罰が与えられる事となっている。罰金や取り潰しはもちろん、最悪武力制圧も視野に入っている。

まぁ正直、他国に情報を流すメリットよりもデメリットの方が大きいと思うので、大丈夫だと思うが一応念のためだ。


「だが、今回の一件で、民間企業に新たな流れを生み出す事には成功したはずだ。きっとこれが、今後のハーンブルク領の発展に繋がるはずだ。」


「なるほど、確かに市場の膠着は、経済成長の膠着を意味しますからね。レオルド様が強引にでも民間企業へ委任したかった理由が何となくわかりました。」


彼は、納得したような顔をしながら頷いた。確かに俺は、ハーンブルク家が大きな方向転換をする事をあえて企業達に事前告知しなかった。それには、もう一つの理由があった。


【この政策を施行したもう一つの理由、それは時代に乗れる者と乗れない者の選別する事でした。そして、こちらの思惑通りに新興企業が多く誕生しました。】


この政策を行う前まで、ハーンブルク領の学校を出た有能な若者は、企業や商会に勤めるか、ハーンブルク領の公務員になるしか道は無かった。が、今回の改正で新しく企業を作るという選択肢が追加された。

俺たちの思惑は見事的中し、隙間産業が誕生したり、ハーンブルク領内の競争が激化したりした。


【経済規模は、かなりのペースで拡大しております。また、最近では大陸西側の様々な都市で鉄道や港の建設が行われております。】


鉱山などで採れた鉱石や資源を、ハーンブルク領へと運ぶ際に必要になると言うことで、港の建設が進められた。

何故このような動きになったのかというと、俺たちが黒船の造り方を一部の企業に公開した事によって造船業が誕生した。その結果、商船を持つ企業の数が増え、港の需要が急激に高まったからだ。

大きな企業は、大陸西側各地に小規模な港を整備し、物資の運搬や集積に利用した。特に、新領地となった『トモタカ』周辺は、かなり発達したと聞いている。


「これから先の時代、どう転ぶかわからない部分もあるが、全体としての方向性は確立できたと思う。その為にも、今はお前の協力が必要だ。」


「わかっております、レオルド様。以前言っていらした計画についてですね。」


「あぁ、その話で間違いない。ハーンブルク家はこれより、ガラシオル帝国とパラス王国の戦争に干渉する。」


「わかりました、ではその事についての話し合いと参りましょう。」


その後、誰も知らない秘密の話し合いが始まった。





話し合いは、日が落ちるまで続いた。各々が持ってきた開示可能な情報を交換しながら、作戦や目標を立てた。

そして、ひと段落した所で、一度解散となった。理由は、今回話し合ったことを一度精査したいと考えたからだ。


そんなわけで、頭をフル回転させ続けた結果、かなり疲れた俺は、癒される事になった。


「お仕事お疲れ様です、レオルド様。」


ミドール地区を管理している、区役所へとやって来た俺は、話し合いという事で先に帰っていてもらったヘレナの膝の上で、一日の疲れを落としていた。


「あ〜もう無理〜ヤクルト飲みたい〜」


「やくると?何ですか?それ。」


「け、健康飲料だよ。毎日飲めば、健康になるってやつ。」


「そんなものがあるんですね。」


そう言えばこの世界にはヤクルトが存在しない事を思い出し、慌てて誤魔化す。

俺は今、思わずヤクルトを求めてしまうほど脳が疲労していた。

アイがカバーできるのは、身体的な疲労のみで、精神的な疲労はどうしようもない。

まぁ正直、たとえヤクルト飲んでも精神的な疲労の方はどうしようもない気がするけど・・・・・・


「じゃあ今日は、私がレオルド様を癒してあげますね。」


「よろしく頼むよ、ヘレナ」


「はい、任せて下さい!」


その後も俺は、愛する妻の膝を堪能しながら、深い眠りについた。


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どうでもいい話コーナー、これ必要ですかね。

個人的には、日記みたいな感じで少し気に入っていたのですが、一気読みする人にとっては無いほうがいいのかな?

よろしければ、意見をいただければ幸いです。

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