第12話 平和

「んっ・・・・・・」


朝、普段は感じないはずの温もりを感じて、いつもより早く目が覚めた。

普段ならここで起き上がるのだが、今日は何故かこのままもう一度目を閉じれば、再び夢の世界に飛び込めそうであった。

どうやら少し、疲れが溜まっていたらしく、身体が重い。


【おはようございます、マスター。本日の天気は雲一つない快晴です、本日の予定は特にございません。久しぶりの休日を、お楽しみ下さいませ。】


う〜んと、どう思う?

起きた方が良いのかな。


【試してみればわかると思いますが、起き上がる事は現状難しいと、判断いたします。】


わかった・・・・・・


言われた通りに身体を起き上がらせようとしたが、確かに動けない。

首を左右に動かして原因を探ると、すぐにわかった。4人の可愛らしい少女たちが俺の腕や身体に抱き着きながら気持ち良さそうに眠っていた。

服や下着は周囲に飛び散っており、全員が何も身に付けずに身を寄せていた。

それと同時に、俺は昨日の事を思い出す。


【昨日はずいぶんとお楽しみでしたね、マスター】


そりゃあ、前世がどうだったのかわからないけど、今世じゃ初めてだったし・・・・・・


意外だったのは、みんなベッドの上では普段の雰囲気とは正反対になるところだ。

普段は気が強いイレーナは妙に弱々しくなり、反対のユリアは強くなってた・・・・・・

何がとは言わないけど。


というかちょっと待って、聞いてたの?


【はい。最初から最後まで、じっくりと見て勉強しておりました。マスターが1人2回ずつ行った事ももちろん存じております。】


そういえばそうだった・・・・・・


【ご安心下さい。私がマスターの体内はしっかりと管理しておりますので、枯れるような事は絶対にありません。】


アイとの感覚共有を解除してから始めればよかったのと、軽く後悔していると、右下から物音が聞こえた。

どうやら目が覚めたようで、ムクっと起き上がる。


「ふぁ〜、おはよ〜ございます、あなた」


「おはよ、ヘレナ」


「ふふふ、どうやら私が一番乗りのようですね。」


ヘレナは、辺りを見回しながら言った。他の3人が、まだ起きていない事を確認したのだろう。

すると、突然いたずらっ子のような顔になったヘレナは、俺の身体の上に馬乗りになった。


「ではあなた、朝のご奉仕をさせて下さい。」


少し遅れて、俺は彼女の言っている意味がわかった。馬乗りになった事によって、ある事に気がついたのだろう。


「あ、あ〜今日はいいかな。また今度頼むよ。」


「わかりました。ではまた今度、2人きりの時にしましょう。」


正面から俺に覆い被さるように抱きついた彼女は、耳元で色っぽく囁いた。

自然と、顔が少し赤くなるのを感じる。


「あ、ちょっとヘレナ、抜け駆けはダメだよっ!」


続いて起きて来たイレーナが、顔を真っ赤に染めながら言った。おそらく、俺たちの現在の格好が恥ずかしいのだろう。


「羨ましいならイレーナも、隣に来ればいいのに。」


「わ、私だってっ!」


ヘレナの、びっくりするぐらいわかりやすい挑発にのったイレーナも、俺の上へと乗っかった。俺は、2人まとめて優しく抱きしめる。


少し視線を下に向けると、2人がこちらを見ているのがわかった。


「ねぇ、あなた・・・・・・」

「ねぇ、レオルド・・・・・・」


顔を赤く染めた2人は、声を揃えて俺に愛の言葉を伝えた。


「大好きですっ!」

「大好きっ!」


そして俺は、2人に抱きつかれたまま、再び眠りにつくのであった・・・・・・

ちなみに、朝起きたら2人から4人に増えていたのは別の話。



✳︎



俺の誕生日&家督継承を記念して、昨日と今日は領民の休日の日という事になった。

サッカーの試合は行うらしいので、公共交通機関やサッカー関係の人、飲食業は働いているが、それ以外の多くの人が休みとなり、それぞれの休日を満喫していた。

かく言う俺もその内の1人で、お嫁さん達と5人でサッカー観戦にやって来ていた。


ここは、俺が初めて作ったサッカースタジアムであり、サッカーにおける聖地とも呼ばれている。


「ほんと、平和な時代になったよな〜」


目の前で、縦横無尽に駆け回る選手達を観ながら、思わずそんな言葉を呟いた。


「ふふふ、レオルド様の作った平和が、長く続くといいですね。」

「旦那様にはこの平和をしっかりと守って欲しいです。」

「私もそう思うわ。こんな感じの平和が、ずっと続いたらなって・・・・・・それができるのは、あんたしかいないよ、レオルド」


周囲に座った少女達は、平和を願ってそう言った。

クレアも無言で頷いている。




「そうなると、いいな。」


4人に対して、俺は少し遅れて返事をした。


何故なら、この言葉に頷いていいか迷ったからだ。


俺は、心の中でみんなに謝る事にした。


ごめんみんな、一時の平和は訪れても、恒久の平和が訪れる事はしばらく無い。



何故なら、次の戦争もこちら側からタネを撒くからだ。


今までの戦争は全て、俺の手のひらの上。

サラージア王国とトリアス教国が戦争を仕掛けて来たのも、

ギャルドラン王国とサーマルディア王国が戦争を始めたのも、

ハーンブルク家がそれぞれの戦争に介入したのも、

全部俺の計算通りだった。



確かに俺の目標は平和だ。

だが、中途半端な平和じゃない。


大陸における、絶対的な優位性を確立した上で、安全と言い切れる平和だ。


決して、仮初の平和で、平和ボケするような事にはなりたくない。


【平和という言葉は、とても魅力的で理想的な言葉です。ですが、その裏には悪魔が潜んでいます。平和を優先するあまり、妥協して、言いなりになって、できるだけ外部の情報が入らないようにして、そして滅んでいきます。】


俺は、これからも戦争を続けるだろう。


平和を望む、みんなを守るために。





__________________________


どうでもいい話


いつもの時間にエピローグとあとがきを投稿します。お楽しみにっ!

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