第10話 sideヘレナ6

「さて、本日は皆さんにお話ししなければならない事があってお呼びしました。」


「「「「はい。」」」」


私たち4人は、声を揃えて返事をした。


「では、話し合いを始めましょうか。」


エリナ様の言葉に、私たちは緊張感を高めた。



✳︎



パーティー終了直後、私たち4人はレオルド様の母親であるエリナ様に後で少し時間をください、と言われた。

結婚式の直後ということで、どのような内容なのかは嫌でもわかった。そして、少し浮かれ気味だった私たち4人は、エリナ様からのお呼び出しで一気に現実に引き戻される形となった。


エリナ様との話し合いの事が頭に残り、緊張しっぱなしであったお見送りが終わり、ひと段落した所でいよいよその時がやってきた。


「じゃあレオルド、私はちょっとこの子達と話をしてくるから、久しぶりに集まった姉弟とゆっくりしていて。」


「あ、はい、わかりました、お母様」


察しの良いレオルド様は、おそらく私たち4人の様子からこの異常事態に気づいていたが、スルーしていた。

レオルド様は、今でも母親であるエリナ様に頭が上がらないのは知っている。


「では少し、私の部屋の方へいきましょうか。」


「「「「は、はい。」」」」


レオルド様から、視線で「頑張って」というエールを貰った私たちは、エリナ様の後に続いてこの部屋を出た。



✳︎



「本当は、ヘレナさんとイレーナさんとの結婚が決まった時点で行うべきだったのかもしれないですけど、何となく増える予感がしていたので、結婚式の後に行った方がいいのかなって思い、先延ばしにしていました。」


軽い説明を受けながら、4人分用意された席に私達はゆっくりと腰を下ろすと、エリナ様はいつもと同じ席にお座りになられた。

そして、丁寧な口調で話し始めた。


「ヘレナさん、イレーナさん、ユリアさん、クレアさん、ご結婚おめでとうございます。私も元当主代理として、そしてレオルドの母親として大変嬉しく思います。」


「「「「ありがとうございます。」」」」


ふと隣を見ると、みんなはそれぞれ緊張でガチガチになっていた。おそらく、私もそうなのだろう。

普段はこういう話に強いイレーナも、とてもビビっているのがわかった。


「本日の結婚式、とても素晴らしいものでした。私も、昔行った自分の結婚式の事を思い出しました・・・・・・ですが、結婚後はさらに大変で忙しくて、そして幸せな日々が待っています。結婚は確かにゴールインと呼ばれますが、むしろスタートでもあるのです。」


経験者であるエリナ様のお言葉は重い。英才教育なのか、それとも才能なのかは知らないが、目の前にいるこの人の凄さには、頭を下げずにはいられない。

他の名門貴族を差し置いて、王立学校の成績は歴代最優秀記録を樹立させ、それは20年以上経った今も、未だに破られていない。レオルド様の政務の手伝いをしているイレーナが言うには、エリナ様の調整能力はレオルド様をも上回るほど素晴らしいらしい。

元はただの商人の娘であったが、当時は国中の女性の憧れの的であったそうだ。今でも、憧れている人はいる。


「というわけで、皆さんはレオルドの妻になったという事で、それに相応しい人になって頂かなければなりません。」


「「「「は、はいっ!」」」」


いよいよ本題が来たっ、と私は集中力を高めた。

昔読んだ恋愛小説を思い出す、いわゆる嫁姑問題と呼ばれる奴だ。

確かあの時、物語の主人公は・・・・・・


「と、言いたいところですが、皆さんに直して欲しいところはありません。」


そうそうこんな感じに・・・・・・

ってあれ?今少し違ったような・・・・・・


「私は、レオルドの母親として誰よりもあの子を信じています。そして、そんなレオルドが選んだ皆さんです。私は皆さんの事を、本当の娘のように扱うつもりでいます。」


物語で読んだ展開には、ならなかった。

考えてみれば当たり前だ、エリナ様が普通とは違う人な事は、私もよく知っている。

エリナ様は、私達の反応が面白かったのか、少し笑いながらおっしゃった。


「ふふふ、どうか、私の大切なあの子の事を支えてあげて下さい。そして、あの子との愛を育んで下さい。」


「「「「はいっ!」」」」


私達はお互いに目線を合わせると、声を揃えながら力強く返事をした。

エリナ様からのお許しもいただき、自信を持った。

少し不安なところも、正直に言えばあったが、エリナ様からこのように言われたからには、頑張らないといけない。

そう、心に決めた。



だったのだけど・・・・・・




「ところで、初夜についてはどうするか、皆さんで話し合いはしたのですか?」


「えっ!それは・・・・・・」

「これから話合おうかなって・・・・・・」

「ま、まだです・・・・・・」

「私は最後でいいので・・・・・・」



「ふふふ、初々しくていいですね。ですが、お風呂の時にしっかりと話合って下さいね。では、そろそろ戻りましょうか。」


「「「「は、はい////」」」」


気を遣ってか、先に席を立ったエリナ様は、扉の方へ歩いて言った。


そして、残された私達は、顔を赤らめながら、顔を見合わせた。




_______________________________


どうでもいい話


お母様好き集合っ!

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