ss 人気投票4位ヘレナ
「では行きましょうか、レオルド様」
「あぁ、一緒に楽しもうか。」
午後7時、少し早めに夕食を食べた私とレオルド様は、2人で一緒にハーンブルク鉄道に乗って、2つ目の駅へと向かった。
ハーンブルク鉄道の7つの駅にはそれぞれテーマがある。例えば4番目の都市は音楽の街ウィートン、6番目の都市は海の街クューレといった具合だ。
そして、2番目の都市『ラスベスタ』は遊戯の街と呼ばれている。
何故そのように呼ばれているか、その最大の理由は、ハーンブルク領における娯楽の多くがこの街に集まっているからだ。
サッカースタジアムは無いものの、様々な演劇会場やサッカー以外のスポーツ、テーブルゲームの専門店、図書館などが集まっている。
そして、その中でも一際目立つハーンブルク家が運営している施設に私とレオルド様は入った。
いつものVIPルームへと向かった私たちを、この施設の代表が出迎えた。
「ようこそいらっしゃいました、レオルド様、ヘレナ様。本日もいつも通り1000ずつですか?」
「あぁ、それで頼む。あと、仮面もな。」
「かしこまりました。」
しばらくして、先ほどの男は緑と黄色の仮面を1つずつと、私とレオルド様の2人分合わせて2000枚のチップを持ってきた。
私は黄色、レオルド様は緑色の仮面をそれぞれ被ると、私たちは腕を組みながら中に入っていった。
そしてすぐさま『10-20』でエントリーを行い、空いた卓に腰を下ろした。
「いや〜久しぶりのポーカーだから緊張するね。」
「はい、私もです。」
そう、ここはハーンブルク領で最も大きくて有名なカジノだ。男女問わず16歳以上のハーンブルク領民が参加する事ができ、それぞれ熱いバトルを繰り広げている。ちなみにレオルド様はまだ16歳に達していないが、そこは許されている。
チップレートは1枚1000ベルと少しお高いので、どちらかと言えば裕福な人が集まる感じだ。それと、ここは有名人に会える場としてと知られている。参加する人は全員仮面を被るように定められているが、基本的に誰かわかる。
そうすると、有名なサッカー選手やピアニストなんかがここを訪れる事がよくあるのだ。
また、参加したい人全員が付ける事を義務付けられているこの仮面には、それぞれ意味がある。青は未婚の男性、緑は既婚の男性、赤は未婚の女性、黄色は既婚の女性となっており、この場でカップルが誕生した、という話もよくある。
私たちが座り、最大人数である9人が揃うと、ディラーがゲームを開始させた。
まずは最初のゲーム、私の手元に配られたのはハートの2とクローバーの7、これはポーカーにおける最弱の手札だった。
この手札で勝負を仕掛ける人はまずいない。私も、いつもなら即降りていた、だけど久しぶりのポーカーの最初ぐらいは、という考えでbetする事にした。
強制betの2人がそれぞれチップを支払い、3人目と4人目、5人目はそれぞれfold、6人目はcallした。7人目であるレオルド様はfold、私は先ほど決めた通りにcallした。
最後の1人はfold、最初に強制betした2人はそれぞれfoldとcheckをしてターンを終えた。
「フロップに入ります。」
ディーラーの女性が手慣れた手つきでカードを3枚表にする。
私は自分の手札を確認しながら、出されたカードをみた。
「ハート5、クローバーの2、スペードの7です。」
良い、凄くいい。
ポーカーはそれぞれのプレイヤーに配られる手札の2枚と場に表向きで置かれる5枚の合計7枚のカードの中から好きな5枚を選んで役を作り、その優劣を争うゲームだ。
そして私の引いた『2と7』が、手札の中で1番弱いとされている理由は、ポーカーにおける数字の強弱として、1が最強で13、12、11・・・の順で強く、2が最弱となっているからだ。
これが、『2と5』のように2つの数字の差が4以下であれば、ストレート(数字を階段状に揃える役、2,3,4,5,6など)になるのだが、『2と7』でどうする事もできない。
故に最弱なのだ。
だが、フロップで『2』と『7』が登場してくれたおかげで、私の最弱はかなりの強さに一瞬にして変わった。
相手が『2』か『5』か『7』のポケット(手札の2枚が同じ数字である事)でない限り、現状私が一番強い。
続いてbetタイムに入ったが、全員がcheckを選択し、賭け金の上昇は無しでターンに入った。
再び、ディーラーは無作為に選んだ1枚のカードを表向きにする。
「ターンに入ります。ハートの12です。」
うっ。これはまずい。
まだ戦えるが、相手の手札次第では簡単にひっくり返ってしまう状況だ。
隣を見ると、レオルド様が心配そうな顔をしてこちらを見ていた。顔に出ないようにしているが、レオルド様にはどうやら伝わってしまっているように感じた。
「bet、40。」
レオルド様の隣に座った赤い仮面を被った女性が、堂々とbetした。
良い役が揃ったのだろうか、だがもちろんブラフの可能性もある。
続いて私の番、ここで降りる選択はない。『2』と『7』のならまだまだ戦えるはずだ。問題は、callするかraiseするかだ。
ここは、強気にraiseして賭け金を増やすのも一つだろう。そう考えた私は、賭け金を倍にした。
「raise、80。」
宣言とともに、チップを前に出す。
あまり自信が無かったのか、1人目の男はすぐにfoldし、先ほどの女性はcheckを選択し、最終ターン、『リバー』に入った。
「リバーに入ります。スペードの13です。」
ついに、最後の1枚が表になった。
私と先ほどの女性の一騎打ち、緊張が高まる。
相手がスリーカード(同じ数字を3枚揃える役)か、私より強いツーペア(同じ数字が揃った組を2組揃える役)だと、スリーカードよりもツーペアのほうが弱いので、私の敗北が確定する。
まずは私のターン。様子見で、私はcheckを選択、すると相手は予想よりも大きくbetしてきた。
「bet、400。」
現金に直すと40万ベル、かなりの大金だ。それに、今回私が持ってきたチップは1000枚なので、全体の40%に相当する。
私は、一騎打ちの相手である女性に注目した。
その時、私はある事に気がついた。
どこかで見た事がある体型・・・・・・
「あ、もしかしてRSWのアンさん?」
「っ!」
私が思わず呟くと、彼女はビクッと震えた。どうやら本人らしい。
「やっぱり・・・・・・」
「そういう貴方様はヘレナ様でよね、その金と青のオッドアイは、貴方様ぐらいしかいませんよ。」
どうやら私の方もバレているらしい。オッドアイなんて、おそらくこの国でも私ぐらいしかいないからしょうがない気もする。
私はとりあえず、誤魔化しておいた。
「ふふふ、違うかもしれませんよ?」
「そういう事にしておきましょう・・・・・・それではヘレナ様、この勝負、乗りますか?降りますか?」
お互い相手の正体がわかっていても、変に取り繕う事なく、ゲームに集中する。
私は少し考えたあと、自分の直感を信じる事にした。
「callで。」
私は、手札を出しながら、callを宣言した。
盤面の2,7,13で、ツーペアが完成する。
対するアンさんは、ゆっくりと手札を公開した。
「お見事です、ヘレナ様。」
彼女はそう言いながら、2枚のAを場に出した。Aはポーカーの中で最強のカードだが、役が作らなければ話にならない。
私の完全勝利であった。
「ありがとうございます、アンさん。」
喜びを噛み締めつつ、私はチップを受け取る。
そして、私が前を向くと、それを確認したディーラーが次のゲームの開始を宣言した。
「では、次のゲームに参りましょうか。」
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どうでもいい話
ポーカーわからない人でも分かるように書いたけどどうかな・・・・・・
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