第13話 勅命

「困りますよ、ギュスターさん」


「あはは〜急に訪れてすまなかったね、レオルド君。」


「一歩間違えば海の藻屑となっていましたよ。」


「いや〜それは怖いね〜」


結論から言うと、北西方向からこちらに向かってきた謎の船はサーマルディア王国の宰相であるギュスターさんを乗せた船であった。


国籍不明船は、普段ならば撃沈しているところであったが、船の型がハーンブルク家がサーマルディア王国にプレゼントしたものにそっくり、というか同じで、乗組員達が必死にサーマルディア王国の旗を振っていたため、撃沈する事ができなかった。

結局、港で停泊中であった全ての輸送艦を念のため避難させ、『霧雨』がいつでも砲撃できる状態を維持したまま国籍不明船は入港した。


多くの兵士が機関銃や小銃を構える中、見た事がある人物が船から降りて来た。


「ギュ、ギュスターさんっ!」

「ちょっとパパっ!何やってんの!」


「やぁ、私の可愛い子供達。」


船を降りた彼は、何事も無かったかのようにこちらに向かって来た。

だんだんと乗組員達も降りていく。合計で100名ほどの乗組員がこの船には乗っていた。


「もうっ!どうしてここにいきなり来たのよ。」


「いや〜すまないイレーナ、レオルド君。急で悪いのだが、話し合いの場を設けてくれないだろうか。」


「構いませんが、何か問題が発生したのですか?」


「あぁ、どうしてもまた、君たちの力が必要みたいだ。」


イレーナが、どのような用事があってここを訪れたのかを尋ねると、ギュスターさんは、頭はを下げながら話し合いの場が欲しいと言った。

どうやら、また何か問題が発生したようだ。

まぁきっとアレの話だろう。



✳︎



「単刀直入に言おう。王宮は、ハーンブルク家の参戦を期待している。」


「詳しくお願いします。」


「先日、王宮にて終戦に向けた話し合いが行われた。現在の戦況や世界の情勢を参考にしながら、我々はどのようにすべきなのか、どのような結末を終える迎えるのが王宮にとって最大の利益なのかのを国王陛下や王太子殿下も交えて話し合いが行われたのだ。」


前世でいうところの『御前会議』のようなものだろうか。


【おそらくそんな感じだと思われます。】


「そこで王宮は、ある結論に至りました。それは、このまま終戦を迎えても、サーマルディア王国は大した利益を得れないという結論です。」


そして、彼は王宮がそのような結論を出した理由を話した。

まず、今回の戦争は既に泥沼の戦いに突入しており、従来の戦争のように互いの王都を陥落させて勝敗を決するのではなく、食料か人的資源が先に尽きた方が敗北となる。


サーマルディア王国軍は、背後にハーンブルク家がいるため、実質食料供給は無限であり、ハーンブルク家を直接攻撃できない限りギャルドラン王国に勝ち目はないという事になる。


では、ギャルドラン王国軍はどうか、王宮の出した結論ではこのまま戦争が続けばギャルドラン王国が敗北を認めるまで最低でも2年近くかかり、今はまだ情報は無いが、ギャルドラン王国が第三国を巻き込まない保証はないのだ。もし仮に、ガラシオル帝国などの大国がギャルドラン王国側につき、サーマルディア王国を攻撃したら、サーマルディア王国の敗北はほぼ確定となる。(ハーンブルク家が相当な活躍をしない限り)

さらに言えば、ハーンブルク家から無限に食料を供給してもらえるとはいえ、もちろんお金は払う必要がある。

つまり、戦争が長引けば長引くほど、王宮にとって不利になるという結論に至ったのだ。


そして王宮は、ギャルドラン王国を早期降伏に追い込むための作戦を練り始めた。だがもちろん、今まで散々苦戦した敵国を、自分達の力だけで封じ込むのは不可能だ。トリアス地区の国民達を強制的に徴兵して攻めさせる案もあがったが、それで裏切られたら元も子もないという事で却下された。


そこで白羽の矢が立ったのが、ハーンブルク家であった。王宮としては認めたくない部分も多かったが、もはやサーマルディア王国がハーンブルク家に国力で負けているのは明らかであった。人口はかろうじて勝っているが、それ以外のあらゆる面で王宮は王国がハーンブルク家に劣っている事を自覚していた。

つい最近まではたくさんいた、反ハーンブルクの貴族たちは、いつの間にか姿を消していた。


だが、どうしても一点決まらない所があった。それは・・・・・・


「では、ハーンブルク家が参戦してくれたとして、彼らへの報酬はいかがしますか?」


「それは・・・・・・」

「「「・・・・・・」」」


参戦を要請したならばもちろんハーンブルク家に対して何らかの報酬を支払わなければならない。

だが、誰もその報酬を提示出来なかった。思い浮かばなかったのではなく、口に出す事ができなかった。


「だが、誰もが口を閉ざす中、国王陛下はこうおっしゃった。」


「何とおっしゃったのですか?」


俺が尋ねると、ギュスターさんは飲んでいた紅茶を机に置き、真剣な表情でこう言った。




「報酬として、ハーンブルク家の独立を認める、と。」



___________________________


どうでもいい話


私の前作のPV数が1週間前に比べて4倍に急増しました。

夏休みという事で暇だから読んでみよってなった人が多いのかな。


まだ読んで無い人は是非読んで見て下さい。前半は恋愛メインですが、後半はみんな大好き戦争メインです。

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