第12話 sideクレア6

ハーンブルク領周辺マップその5

に、今回の海戦を簡単に書いておきました。

イメージしにくかったら使って下さい。


それと、今回は短めです。

____________________________


「目標、敵1番艦、AP弾(運動エネルギー弾の一種)による砲撃用意。」


私の命令で、この『秋雨』に配備されている前方に6門、後方に2門の合計8門の砲門が敵船団の方へ向いた。

姉妹艦である『春雨』と合わせれば合計16門の砲門が、狙いを定めた事になる。


「砲撃開始っ!」


「うち〜かた〜始めっ!」


私の合図とともに、正面にある主砲が火を吹き、1発の弾丸が飛び出した。

改良されたこの主砲の射程はおよそ8000m、相変わらずクールタイムが長いので8つの砲門で10秒に1発ずつぐらいのペースで砲弾の雨を浴びせ続ける。

まるで、秋霖とも呼ばれる『秋雨』のように長い時間・・・・・・


砲撃の反動は、艦橋にいた私にも伝わった。だが、火薬の量は増えたはずなのに以前より衝撃が少ない。


放たれた砲弾は、美しい放物線を描いて、真っ直ぐ飛んでいった。初速が秒速1000mを超える砲弾が、船速が遅いギャルドランの大型船を襲う。


「命中っ!敵1番艦大破っ!」


「「「おぉーー!!!」」」


命中の報告に、艦橋内で歓喜の声が上がる。やはり、初弾命中は嬉しいものだ。

放たれた砲弾は、敵の船のど真ん中を貫き、船を2つに割った。

まだ撃沈判定は出ていないが、もうほぼ撃沈のようなものだろう。


「お見事です。次は、1番後ろの艦を狙って下さい。」


先頭の船を止めたら次は1番後ろのやつを狙う。敵の動きをできるだけ封じ込み、混乱させるのだ。

私は賞賛しつつ、次なる目標を指定する。


「了解、誤差修正、次弾照準っ!」


「了解っ!誤差、修正します。」

「次弾装填完了っ!」


「撃て。」


「発射っ!」


私の命令に従って、砲手はレバー引いた。続いて、主砲の一つ前にある副砲が火を吹く。主砲、副砲で分けてあるが、『秋雨』に搭載されている8つの砲門はすべて13cm砲で統一されている。

ちなみに、迫撃砲なども13cmで統一されており、そのおかげで量産がより楽になっている。


「目標の少し手前の水面に命中っ!撃沈はしていないものの、発生した波でダメージを与えていますっ!」

「誤差軽微、照準そのままで良いかと・・・・・・」


「照準そのまま、砲撃を継続せよ。」


「「「了解。」」」


私の指示に、全員が答えた。

私も、双眼鏡を片手に様子を見る。敵船団と『秋雨』は5000mほど離れているが、見えない距離じゃない。


「艦長、敵の砲撃が始まりましたっ!射程はおよそ1500m弱、最大射程は未だに不明ですが、現状被弾の心配は無いと思われます。」


「では、『アウトレンジ戦法』を継続します、敵の射程外から一方的な攻撃をして下さい。」


「「「了解っ!」」」


私は、そう命じた後、再び双眼鏡を眺めた。

同時に、少し昔の事を思い出した。


レオルド様と出会ったのは、今から8年ほど前の話だ。ただの孤児であった私が、今では16歳で国内最強の戦艦の艦長を努めている。

昔の自分は、このような未来など1ミリも想像しなかっただろう。

レオルド様は私を『戦闘メイド』にして育てたいとおっしゃっていたが、今思えばレオルド様は私を優秀な軍人を育てたかったのだと思う。

わずかな睡眠を除けば毎日のほとんどをレオルド様の護衛か、勉強か、訓練をして過ごしてきた。

今では部隊や戦艦を指揮する立場になり、部下を統制する立場にもなった。


確かに勉強や訓練など、大変なものも多かった。でもそれ以上に、レオルド様は私の上達をいつも褒めてくれるし、私もそれに合わせて嬉しい気持ちになった。


ある時、私はレオルド様に聞いた。


「え?あの時何でクレアを引き取ったのかって?あ〜あの時な〜ん〜ちょっと覚えて無いかな〜」


「えっ!覚えて無いのですか?」


「まぁ理由はともあれ、俺はクレアを選んで良かったなって思うよ。」


レオルド様は、いつもの書斎で資料に目を通しながら答えた。


「真面目で一生懸命頑張っているのがよく伝わる。クレアにはいつも助けられているよ。」


「あ、ありがとうございます。」


私は、レオルド様からのお言葉を聞いて、思わずありがとうと伝えた。

何となくだが、レオルド様は照れ隠しをしているように感じる。証拠はどこにも無いが、長年の経験から確証はあった。


そして、何故か私にはこの日の記憶がはっきりと残っていた。

だから・・・・・・


「進路変更、右舷60度回頭っ!敵との距離を2000で維持しつつ、全速前進っ!敵の裏に回り込んで畳み掛けて下さいっ!」


「「「了解っ!」」」


私はレオルド様のために、全力で自分にできる事をする。


「主砲発射っ!」



ギャルドラン王国海軍の大型船の2倍近い速さで敵を撹乱し、完全に背後をとった『秋雨』と側面から突っ込んだ『春雨』による波状攻撃によって、ギャルドラン王国海軍の軍艦はほぼ全てが大破もしくは撃沈した。


ギャルドラン王国海軍vs『春雨』&『秋雨』の一戦は、わずか数時間足らずで決着がついた。


そして、ギャルドラン王国は、更なる劣勢に立たされる事となる。



__________________________


どうでもいい話


相変わらず展開早いな、この作品は。


by読者目線の佐々木サイ

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