第14話 方向
「陛下は、ハーンブルク家の独立を認めるとおっしゃっていた。」
ギュスターは、俺たちの目を見ながらそう言った。一瞬、理解するのが遅れる。
そろそろサーマルディア王国から援軍の要請が来るだろうな、とは思っていたが、こうなるのは聞いていない。
独立?何その面倒そうなワード。
【実際面倒ですが、メリットとデメリットがあります。】
う〜む、長くなりそうだけど一応聞かせてくれ。
【まず独立すること最大のメリットは、王宮の指図を受けなくても良くなる事です。現状、王宮はハーンブルク家が反乱を起こす事を恐れて不干渉を貫いていますが、それがいつまで続くかを予想するのは不可能です。また、ハーンブルク家は他の上位貴族から色々と恨みをかっており、いつ技術を盗まれたり暗殺されるかわかりません。マスターには私がついていますが、マスターの家族や家臣達が巻き込まれないとは言い切れません。】
別にそういう事を考える貴族が居たら武力侵攻をすれば良いんじゃ無いの?
【はい、通常ならばそうですが、サーマルディア王国では貴族間でのあらゆる戦闘行為は禁じられております。強引に破ろうと思えば破れますが、その場合まず間違いなく王宮が干渉してきて、ハーンブルク家に不利な要求を飲まざるを得なくなります。】
こっちに正当性があっても?
【はい、王国には一応『調停騎士団』と呼ばれるそういった貴族間での争いを王宮の意思を除いた上で調停し、場合によっては武力をもって対処するという騎士団がありますが、はっきり言って機能していません。】
確かに、ハーンブルク家がこれだけ色々とやっているのに、その何ちゃら騎士団が出てこないのはおかしいよな。というか俺そんな騎士団の存在知らなかったし。
明らかに王宮から指示を受けている。
【つまり、独立せずにいた場合、口実を作られた上で色々と面倒な事に発展する可能性があるのです。】
確かに土地を持たない貴族も合わせると、貴族ってたしか200家ぐらいあるらしいからな。レーテーン家とデュークス家は俺らに味方してくれるかもしれないが、他は怪しいからな〜
【他にも、サーマルディア王国が引き起こした戦争に巻き込まれない事や、税金や戦費を払わなくてよくなったり、無理な話を無視する事が可能になります。】
確かに俺ら戦争に巻き込まれてばっかだもんな〜。
出来るだけ死人がでないように技術力を底上げして、圧倒的な戦力差を作ったところまではよかったんだけど、それによって発生した戦費はとんでもなく多いんだよな〜
弾薬はただでは無い。
という言葉がハーンブルク家の財政に響いている。それと燃料、石油や石炭をアホみたいに使っており、それの費用もバカにならない。
【ただ、デメリットもあります。私が考える最大のデメリットは、軍備の増強による軍事費の倍増です。】
え?守らなきゃいけない所はそんなに増えないと思うけど。
【現状、ハーンブルク軍は本隊およそ3万がシュヴェリーンで待機しつつ、ジオルターンとハワフシティに5000ずつ配置しております。(ハワフシティは開拓も含む。)この状況から、サーマルディア王国もしくはサーマルディア王国内の貴族から攻撃される事に備えて各都市に最低でもそれぞれ500名、国境線上にも配置しなければならない事を考えると合計で1万5000名ほどの兵士を新たに雇わなければなりません。同盟を結んでもらえるとは思いますが、技術力を目当てに小規模な戦闘は起こるはずですし、第三国と連合を組まれてあらゆる方向から攻撃されれば、かなり厳しい戦いとなると思います。】
まぁ確かに、サーマルディア王国っていう大きな緩衝地帯が無くなるって事はその分だけ軍備を増強しなきゃいけないだろうな。
あとは食料も面倒だよな。ハーンブルク領は人口が飛び抜けて多いから、サーマルディア王国との関係が悪化して貿易ストップ、とかになったら洒落にならない。
【貿易ストップは絶対に無いと思いますが、関税をかけられて輸出量や輸入量が減る可能性は大いにあります。ジア連邦共和国が上手く発展すれば関係ないかもしれませんが、鉱山資源の事を考えると色々と不都合が増えます。後は他にも、厄介な挑発行為を繰り返されるかもしれません。】
挑発か、煽り運転みたいなやつ?
【領土ギリギリで軍事演習をされたり、変な噂を流されたり、テロとかですね。テロに関しては直接実行されるだけではなく、悪党などに強力な武器を供給されるのも含みます。】
うわ〜自爆テロとか、立て篭もりとかされたら面倒だな〜
SHSとTKSETが頑張ってくれはいるけど、飛び地があるためどうしても穴はある。軍隊がいるシュヴェリーンとその周辺やジオルターンとその周辺はまだいいが、リバスタでやられたら大損害だ。
【他にも、国同士の付き合いをしなければならなかったり、サーマルディア王国の貴族との間に溝ができたり、様々な国家としての責任が勝手に付いてきます。】
うわぁ・・・・・・
嫌だわぁ・・・・・・
お母様に押し付けるか?
いや、あんなに俺のために頑張ってくれてるいお母様にそんな事できるわけがない・・・・・・
どうするんだよ。さっきの説明だと、独立しないデメリットもあるって事だろ?
【はい。世界情勢というものは常に動き続けるので、正確な予測はできませんが、デメリットはたくさん存在します。】
じゃあどうすんだよ。
【はい、私は第三の案としてハーンブルク家、サーマルディア王国、ジア連邦共和国の3つの団体を主軸とする、統一連合国家の設立を提案します。】
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どうでもいい話
書いている途中で、地元の方言が紛れている事に気づいて慌てて直しました。
そこで気になったのですが、文章から私の出身地わかった人います?
私の作品を問題なく読めるなら同じ出身地かも。
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