第15話 処分

「我々としては、ハーンブルク家と講和をさせていただきたく・・・・・・」


俺がリトア王国の王都に着いた時には既に、王都がほぼ陥落していた。

移動が大変な機関銃は砦に置いてきたものの、ほぼ全員が『M-1』か『M-3』を装備したハーンブルク軍の敵ではなかった。

ちなみに、軽榴弾砲を撃ちまくるという戦法もあったが、王都には住民がいたという事もあり、今回は採用されなかった。


弾薬に限界がある事から、消極的な戦闘ばかりを繰り返し、さらに敵を消耗させた上で『M-3』を装備した狙撃部隊が敵兵を狙撃するという作業を繰り返すという事を続けた結果、王都はわずか1週間でほぼ陥落していた。

さらに、お母様の指示は的確で、味方の死傷者数はわずか百数十人に留まった。


そして、正確は数字はわからないが王都守備隊のほとんどが戦死し、これ以上の防衛は不可能だと判断したリトア王国は話し合いの場を設ける事を要求した。ハーンブルク軍の総大将であるお母様はこれを了承し、今日講和会議が行われる事となった。


「講和、ですか。具体的にはどのような内容をお望みで?」


「は、はい。我が国としては、リトア王国領からの即時撤退を要求します。」


交渉のためにやって来た男は、少し慌てながら言った。おそらく、緊張しているのだろう。


「条件は何ですか?」


「賠償金として10億ヴァンを支払いとそちら側の陣営に入る事を約束いたします。」


男は、今度は自信ありげに言った。それに対して、もちろんお母様は微妙な顔をしていた。


「なるほど・・・・・・レオルド、どう思いますか?」


「話になりませんね。」


お母様の問いに、俺はキッパリと答えた。それに対して、交渉に来た男は驚いた。


「なっ!どうしてですかっ!」


「例えばこの紙切れ、君にとってはどれぐらいの価値がある?」


俺は、ちょうど持っていた10万ベル札を見せながら尋ねた。『ベル』は、ハーンブルク家のみが通貨発行権を持ち、主にハーンブルク領とジア連邦共和国内とエルフ共和国内のみで使える。

だが、この紙切れがお金であり、金貨と同じぐらいの価値がある事を彼らは知らない。


「高くてもせいぜい1000ヴァンぐらいでしょうか。真っ白い紙であれば、多少は値がついたかもしれませんが、色が塗られているので価値はあまり無いかと・・・・・・」


「と、貴方は判断するかもしれませんが、ハーンブルク領ではこれが硬貨のようにお金として使えます。」


「え?!」


「と、このようにお金というのはその国でしか使えないのです。その国の外では価値が大きく変わってしまうのです。そして、10億ヴァンというのがどれぐらいのお金なのかは知りませんが、あなたの国でしか使えない硬貨に価値はありません。」


「そういう事が・・・・・・」


つまり何が言いたいかと言うと、

は?お前の国の金なんて貰っても信用無いし、使う道ないじゃんって話だ。


【さらに、戦勝国が敗戦国に賠償金を命じても、恨まれるだけで、しっかりと帰って来ない場合があります。】


第一次世界大戦で敗戦国となり多額の賠償金を支払う事となったドイツが良い例だ。結果として、借金は踏み倒され、第二次世界大戦が勃発するという最悪の結果となった。


流石に、あの時はドイツが凄かっただけで、今のリトア王国にそれだけの事ができるとは一切思っていないが、足を引っ張られる可能性は大いにある。


例えばいきなり周辺諸国を攻撃し始めたり、無差別テロなどをされたら、最悪だ。


「それと、我々の陣営に着くというのは、どういう意味でしょうか。」


「はい、ギャルドラン王国との連絡を断ち、ハーンブルク家を支援いたします。場合によっては、軍隊も派遣します。」


「なるほど、確かにそれはありがたいですね。では具体的には、どれぐらいのを用意できますか?」


「それはっ・・・・・・」


男は、答える事ができなかった。リトア王国にはもはや、正規兵は数えるほどしかいなかった。残りはだいたい傭兵か農民兵たちであった。

そもそも、正規兵が沢山残っているならハーンブルク家との戦争はもっと長引いたはずだ。


「それと、武器や食糧は残っているのですか?」


「戦死した兵士の武器を再利用すればあるいは・・・・・・」


一回の戦争にかかる費用を舐めてはいけない。

たいていの国は、戦争を一回すればあらゆる物質が枯渇する。もちろん全ての国が、というわけではないが、敗戦を重ね王都まで攻め込まれた今のリトア王国にこれ以上戦える余裕はどこにも無かった。


「では、我々からの要求を伝えます。一つ、我が国への戦争協力として現在運用可能な全ての部隊をヴィスラ河付近に配備し、ポラド王国が接近した際はこれを追い払う。一つ、リトア王国は国民に対して税金を徴収する事を禁じる。一つ、リトア王国の国民は武器を持つ事を禁じる。最低でも、この3つを守っていただきます。」


お母様は、3つの条件を講和の条件として突きつけた。



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どうでもいい話


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