第16話 入城

一つ、我が国への戦争協力として現在運用可能な全ての部隊をヴィスラ河付近に配備し、ポラド王国が接近した際はこれを追い払う。

一つ、リトア王国は国民に対して税金を徴収する事を禁じる。

一つ、リトア王国の国民は武器を持つ事を禁じる。


「以上の3点が守れない場合は、ハーンブルク家は交渉に応じません。そしてこれが、ハーンブルク家からの最終通達です。」


「そんな・・・・・・」


お母様は、堂々と宣言した。ちなみにこれは、昨日俺とお母様で話し合って決めた物だ。

ハーンブルク家の目的は、リトア王国の無力化であり併合ではない。例によって、併合した時のデメリットを考えると、エラリア王国かグニルタ公国に任せるか、傀儡政権を立てた方が楽なのだ。

俺たちは、どちらでも取れるように保留にした。とりあえずは戦争を片付ける方が先決だからだ。


お母様から最後通牒を受け取ったリトア王国は、王族の命が保証されるという事で渋々同意した。

リトア王国は滅ぶこととなった。



✳︎



プップップー


ハーンブルク軍の兵士である事を現す迷彩服を着た兵士達が、ラッパの音に合わせて王都の大通りを行進した。


俺を乗せた馬車を中心に、およそ5000人の兵士が堂々と行進した。

当然、多くの国民の目に留まり、リトア王国が戦争に負けたという事を印象付けた。


「壮観だな・・・・・・」


俺は、外の様子を眺めながら呟いた。

軍事パレードならば何回かやった事があるが、既に停戦したとはいえ敵の首都(王都)で堂々とパレードができるとは思わなかった。

ちなみに、俺たちの警備としてリトア王国軍の元兵士が何人か通りの両端に整列しており、自分で言うのも難だがかなりの屈辱を与えていた。


また、お母様を含めた本隊は撤退の準備を進めていた。ここからさらに南下して、ギャルドラン王国を叩くのも一つの候補として上がったが、色々と考えた結果マイナスになると判断し、撤退する事になった。


都市の様子を眺めていたクレアが呟いた。


「シュヴェリーンと比べると貧富の差が激しいですね。」


「シュヴェリーンと比べちゃダメでしょ。あっちは世界最大の都市と言っても過言じゃないほど栄えているからさ。」


「そうなんですか?」


「まぁ俺も実際世界を見て回った事が無いからわからないけど、あそこまでの人口と生活水準を維持できる都市は無いでしょうね。」


実際、人口でシュヴェリーンを上回っている都市はあるかもしれないが、生活水準でシュヴェリーンを上回っている都市は無いと断言できる。

そもそも首都なのに水道が無い都市も普通にあるし、電灯がある都市はハーンブルク領の都市だけだろう。


そんな感じに城下町を眺めながら、俺たちは王城に入った。

大きさとしては、サーマルディア王国の王城の半分ぐらいであったが、一瞬目を奪われるような立派な城であった。

中庭らしきところで止まった俺たちを、1人の少女とその部下が出迎えた。


「ようこそいらっしゃいました。」


俺と同じか、少し年上ぐらいのその少女が少し頭を下げながら優雅に挨拶をすると、周りにいた部下達がいっせいに頭を下げた。


【今のところ、殺意は感じられません。武器を持っているのも、王女と思われる少女の周辺にいる者のみです。】


どうやらこの場で暗殺ってのにはならなかったらしい。

だが、もちろん油断はできない。中央の王女と思われる少女はともかく、その部下達は明らかに敵意を抱いているように感じた。


「どうも初めまして。レオルド・フォン・ハーンブルクです。」


「これはご丁寧にありがとうございます。第四王女のユリア・フォン・リトアです。」


中央にいた少女は、そのように名乗った。という事はやはり、この子は王女のようだ。

肩よりも長く伸ばしているロングヘアに、特徴的な金色の目を持つ美少女。いかにも王女っぽい見た目であった。


はっ!これはもしかして色仕掛け食らってる?!


【マスター、妄想のし過ぎです。と言いたいところですが、おそらくそうでしょうね。】


うわー

喧嘩売っておいて、武力で勝てないってなったらこれかよ。


【向かうも、生き残るために必死なのでしょう。】


ま、そうなるか。


「ではそろそろ案内をお願いできますか?」


「は、はい。こちらに・・・・・・」


先ほどまで行進をさせていた兵士にはその場で休憩を指示した。

そして、SHSメンバーの中から顔を知ってい者を数名選ぶと、俺たちは指し示された方に向けて歩き始めた。


んだけど・・・・・・


「キャッ!ご、ごめんなさい。」


「大丈夫ですか、レオルド様。」


緊張したのか、少しよろけてしまったユリアさんが、俺にぶつかった。

俺を心配した部下の1人が、さっと俺のそばにやって来た。

いやいや大袈裟だろ。


「あ、うん。俺は大丈夫。君は?大丈夫、怪我は無かった?」


「は、はい。ありがとうございます。」


「そう、気をつけてね。」


「は、はいっ!」


う〜むこの子には下心など無いような気がする。もし下心があるなら今このタイミングで何かしらの攻撃を仕掛けてくる気がするし。


【マスター、少しお話ししたい事が。】


大丈夫、わかっている。

俺は、そんな事を考えながら、彼女の案内に従う事にした。


______________________________


どうでもいい話


久しぶりの新キャラです。


『ユリア・フォン・リトア』


名前の通りリトア王国の王女です。(正確には王太子の娘)

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