第14話 謀略

「戦況はやはり膠着したか・・・・・・」


「はい、先の戦争で大活躍をしたハーンブルク軍を参考に、防衛計画を立てましたが、やはり武器と練度に圧倒的な差があるようで、敗走はしていないものの膠着が続いております。」


サーマルディア王国軍は、国境から30kmほど後退した地点にある小さな都市に陣を構えた。

ここは、敵国から王都への最短ルートというわけではないが、ある作戦を行う上で重要な地点となるので、ここが採用された。


「だが正直、かなり善戦しているように感じる。反撃こそできていないものの、攻撃を食い止める事はできているというわけだな。」


ハーンブルク軍も戦争をしなければならないので、武器の支援などは受けてはいないものの、戦略などのアドバイスはしっかりと受けていた。

敵の行動予測などの情報は、サーマルディア王国軍にとってこの上なく有益なものとなっていた。序盤は待ち伏せや罠などによって敵軍を混乱させる事に成功し、優位を得たが、ハーンブルク軍からの情報の効果がだんだんと薄れ始めると戦況は反転し、サーマルディア王国軍は苦しい状況が続いた。

その後は、国境付近の要塞に立て篭もり、敵の侵入を食い止めていた。


「おっしゃる通りでございます。しかし、このままいけば先に音を上げるのは恐らくこちら側でございます。」


「そうだな・・・・・・国がガタガタで、食料の蓄えも心許ない。ここを突破されたら、もう迎え撃つ手段は無いな。」


王太子は、今の国内の状況をそのように判断した。

実際、その判断はほぼ的確であった。戦勝によって増えた膨大な領地を一応は貴族達に配分し終えたが、やはりまだ各地で混乱が生じている。

トリアス地区には、今年の税収がほぼゼロのような地域すらあるほどだ。


このままでは間違いなく、防衛ラインを突破されるだろう。


「まぁ、突破されたらの話だが・・・・・・例の作戦の準備はどれぐらい進んでいる?」


「今すぐにでも実行は可能ですが、敵に対してよりダメージを与えるならば、もう少しといったところでしょうか。」


王太子の問いに、軍師であるギュスターは答えた。サーマルディア国防軍とて、ただ黙ってやられている訳ではない。逆転のための布石はしっかりと打ってあった。


すると、伝達役の男が部屋に駆け込んで来た。


「報告しますっ!現地で敵の攻勢が始まったとの事です。」


「ついに来たかっ!」

「っ!」


部下からの報告に、王太子とギュスターは慌てて立ち上がった。


「敵の攻撃には、敵の主力部隊である騎馬兵2万も含まれているとの事です。敵の予想進路はここを無視して王都に攻め込むと思われます。」


「想定通りだ。今すぐ作戦を開始しろ。」


「了解っ!」


「この戦争、勝ちは拾えなくても負けは無くなったな。」


「はい。」


この瞬間から、戦況はサーマルディア王国側に少しずつ傾き始めた、いや最初からサーマルディア王国側が圧倒的に有利だったのかもしれない。

彼らは、ギュスターの仕掛けた罠には気付かなかったのだ。


それぞれの要塞に大量の兵士がいた事から、肝心な王都がガラ空きになっているのではないか、と判断したギャルドラン王国軍は付近の要塞を無視し、ひっそりと進軍を開始した。ただし、この攻撃が気付かれないように全体の半分ほどを国境付近に残し、少数先鋭による攻撃を行った。


しかし、侵入から2日後、突如として敵の大軍が姿を現した。これは、ギャルドラン王国にとって驚くべき事であった。


「何故ここに、これほどの大軍が構えているのだっ!」


「王よ、敵は多く見積もっても10万足らずでございます。我が軍は8万といえど、精鋭のみなのでごり押せば突破できるかと・・・・・・」


「問題はそこでは無いっ!」


ギャルドラン王国の国王は、机を思いっきり叩きながら答えた、

一体どこからこれほどの大軍を用意したのか、その答えはすぐに予想がついた。


「おそらくこれは、敵の罠でございます。」


「ではまさか、あそこの要塞は全て囮で、我々を誘き寄せるための作戦だったというのか?」


「はい、おそらくは・・・・・・」


「・・・・・・撤退だ。先に敵の要塞を全て落とすぞっ!」


「ですが王よ、このままでは追撃に遭う可能性が・・・・・・」


「では、我が軍の騎馬隊のみを残して、すぐさま全力反転だ。騎馬隊のみならば多少遅れても合流できるだろう。」


ギャルドラン王国軍8万は、サーマルディア王国軍10万と相対した直後、騎馬隊2万を残して全力反転を行った。

いくら精鋭の騎馬隊がいたとしても、サーマルディア王国軍10万を退けた上で、王都を落とすのは不可能と判断したからだ。


もちろんこの動きも、ギュスターは予想していた。


「作戦通り、敵の騎馬兵を蹴散らした上で追撃を行うぞっ!」


「「「おぅ!」」」


左右なら大きく広がり、ギャルドラン王国軍を囲むかのように陣を構えていたサーマルディア王国軍は、挟撃を行った。

それと同時に、サーマルディア王国の精鋭部隊である騎馬隊が敵の殿しんがりを無視して、攻撃を開始。

わずか4000ほどの騎馬兵しかいなかったが、連日の急速行軍によって疲弊していたギャルドラン王国軍は、まともに応戦もできずに敗走を続けた。


ギャルドラン王国の敗因は、敵に作戦が漏れる事を恐れて斥候をあまり派遣しなかった結果、サーマルディア王国軍本隊の発見が遅れた事であった。


決定打には欠けるが、精鋭部隊である騎馬隊の多くを失ったギャルドラン王国軍は一気に旗色が悪くなった。

そして、要塞攻略を諦め、自国の要塞まで後退した。



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どうでもいい話


佐々木サイは、スピード感のある作品をお届けします。

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