第4話 軍議
数日前
ジオルターン
「流石レオルド様ですな。」
「一体どれほど深く読んでおられるのだろうか・・・・・・」
「戦争は、大きく変わるのだな。」
集められたハーンブルク軍の将校達は、目の前に置かれた模型を囲んだ。
それは、今回の戦場となるであろう地、ジオルターンとその周辺の模型であった。
山の高さや河幅などもしっかりと再現されており、将校達は自由に意見を出し合った。いわゆる、軍議というやつだ。
どこを誰が担当するかなどをしっかりと確認し、軍としての方向性がブレない様にした。
その際に、決まって名前が上がるのが、今回の戦争の要とも言える敵の戦略的重要地デルミアン要塞だ。
「レオルド様、やはりここは新兵器を使った波状攻撃が最適解だと思われます。敵が目視できないほど長距離から『L-1』を用いて砲撃すれば、その効果は絶大かと・・・・・・」
新兵器である『L-1』隊の隊長であるシューメルが言った。
『L-1』隊は、SHSではなくハーンブルク軍の一員という位置付けになっているが、隊長であるシューメルとその他数人だけはSHSメンバーから選出されており、頭がキレる人物だ。
「私もシューメル殿の考えに賛成です。敵の要塞がいかに堅かろうと、我らの『L-1』の敵ではありません。」
「しかし、あそこはかの有名なデルミアン要塞ですぞ?私も新兵器の性能と破壊力は存じておりますが、それほど上手くいくでしょうか・・・・・・」
「だが我々としては早急にラトシア王国のデルミアン要塞をどうにかしたいところです、早期決着が理想かと・・・・・・」
将校達は、それぞれ自分の意見を述べた。ちなみにハーンブルク軍には、女性もおり、彼女らも今回の軍議に参加している。
将校達の意見を聞きながら、俺は隣にいたイレーナに意見を求めた。
「俺は要塞攻略戦をした事が無いから知らないが、『L-1』を全力投入しても厳しいのか?」
「正直、分からないというのが正しいかもしれないわね。私もお父様から何度かデルミアン要塞を巡った攻防戦の話は聞いているわ。もちろん、『L-1』を使った要塞攻略戦の前例は無いけれども・・・・・・」
「なるほどな。まぁそりゃそうだな。」
軽く咳払いをして、将校達を黙らせた後、俺決断した。
「諸君らの意見は十分に理解できた。中には、要塞攻略戦という事で不安に思っているようだが、俺の計算ではデルミアン要塞の一つや二つならば軽く捻り潰せると考えている。」
俺は、全員を見渡しながら言った。
「だが、もしもの心配はある。そこで、兵士の数を5000に減らした上で、攻撃を仕掛ける事とする。そして、もし仮にデルミアン要塞に対して『L-1』が一定以上の効果を発揮しなければ、兵糧攻めに切り替えるものとする。」
まずは失敗した時のプランを示して、兵士達に考えさせる。そしてその上で、成功した時のプランを提示する。
「そして、成功した時は河の対岸に待機しておいた別働隊5000で挟み撃ちを行う。歴戦を生き抜いた老兵を、退場させてやるぞっ!」
「「「おぅ!!!」」」
「ではこれより、第一陣に加わる者を発表する。」
ハーンブルク軍は、闘う前から綿密な計算を行い、戦場でどのような行動をするか話し合った。
現在のハーンブルク軍の上層部は、お父様のようなマッスルマンよりも、どちらかというとインテリ系の人が多い。
ちなみに、そのほとんどがシュヴェリーンにあるエリート学校の卒業生で、知識が豊富な人が多いのだ。
✳︎
「『L-1』発射っ!」
「「「了解っ!!!」」」
シュメールの合図とともに、20門の軽榴弾砲が火を噴いた。
そして、鮮やかな放物線を描きながら目標に向けて飛んでいく。
「着弾を確認。20発中、4発が命中です!」
「おぉー結構当たるものだな。やっぱり日頃の訓練のおかげかな?初弾を命中させた班には後でご褒美を渡さなきゃだな。」
【勢いで全弾同時発射を行なってしまいましたが、普通は照準を合わせるために単発で撃って狙うものです。もっとも、標的が大きい場合はその限りではありませんが・・・・・・ちなみに、命中させたのは2、3、5、7班です。】
俺は、アイからのアドバイスを耳に入れながら、あたかも自分の手柄のように部下に伝えた。
「レオルド様、次弾発射を命じますか?」
「命中したのは2、3、5、7班だ。どの角度で砲撃を行ったかそれぞれ共有しろ。」
「「「了解っ!」」」
「シュメール、正直初弾で命中が出るとは思わなかった、良くやった。」
「はっ!ありがとうございます。」
部下をしっかりと誉める、まさに良き上司の鏡だな。
【私はマスターに誉められた事ありませんけど・・・・・・】
いつも、ありがと、アイ・・・・・・
【・・・・・・まぁいいでしょう。】
うわチョロっと思ったが、一応黙っておいた。言ったら色々と面倒くさそうだからだ。
「では、1班から10班と11班から20班に分けて波状攻撃を仕掛けろ。」
「了解。」
俺がシュメールに指示すると、彼は砲撃を再開した。
「次弾発射っ!」
そして、ハーンブルク軍は、一切の容赦をせずに砲弾の雨を降らせ続けるのであった。
______________________________
どうでもいい話
アレ?進んで無い・・・・・・
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