第2話 鉄橋
エラリア王国とジオルターンの間を流れるヴィスラ河は、正直なところ渡れない事もないぐらいの河幅であった。
そこで、ハーンブルク軍は河沿いのほぼ全てを監視できるように薄く広い範囲の防御を固めていた。
ヴィスラ河の監視に約8000人を配置し、残りの約7000人は補充要員としていつでも戦闘に参加できるように後方で待機させつつ、ジオルターンとエラリア王国の間に鉄橋を掛けるように命じた。
ジオルターンに住む領民の中から仕事が無い、もしくは仕事が欲しい人を募集してハーンブルク軍と共に働かせた。
こうなる事を予測して、ジャイアント将軍との会談が始まる前に、テラトスタから大量の物資と道具、人材を送ってもらい、急ピッチで橋の建設が行われた。
「これじゃあ軍隊じゃなくて土木工事部隊じゃない。」
目の前で土木工事をする兵達を見ながら、イレーナがぼやいた。
だが、この戦場での土木工事技術も必要だったりする。そのため、ハーンブルク軍では、土木工事の訓練も行われている。
「まぁ現代戦でも、塹壕掘ったりインフラ破壊して焦土作戦をやったりするからな。」
「塹壕は分かるけど、そのインフラと焦土作戦ってのは何なの?」
「あ〜まぁ簡単に言うと、この前のサラージア王国戦でやった作戦の事だな。」
「街を壊すってやつ?」
サラージア王国戦では、戦場の周囲に住む全ての人々に避難命令を発令し、強制的にハーンブルク領の4大都市に移住させる事によって敵の補給戦と連絡線を寸断した。
「そうそう。街だけじゃなくて、道を塞いだり橋を落としたりして、敵の行軍速度を落とす。そーすると、その分疲労が溜まったり、食料が必要になったりして敵を全体的に弱体化させるって作戦。」
「なるほど、使い方によっては絶大な効果を与えるわね。」
実際、サラージア王国戦では、それのおかげで勝てたと言っても過言ではない。
【ナパームの殲滅力もありましたけどね。】
まぁそこは噛み合わさったって事で。
「それで?今回はどうして橋を立てたの?しかも鉄橋じゃない。」
「1番の目的は防衛かな。」
俺は少し考えてから、答えた。
すると、イレーナは予想通り疑問を浮かべた。
「防衛?」
「そう、エラリア王国がもしもハーンブルク家を裏切って、攻撃して来た時、この橋を使わない手はない。」
「そうなるわね。」
「そうすれば、例えハーンブルク軍に数的不利があったとしてもこの橋を渡り切る前に『M-1』か『M-3』を使えば殲滅できる。」
「っ!!!」
正直、大量の小型船を作ったうえで、同時攻撃を受けるのが1番こちら側のダメージが大きい。しかし、こうして橋からの攻撃に限定されれば、ハーンブルク軍のメイン装備である『M-1』と『M-3』が大いに活躍する。
ちなみに『M-3』というのは、ハーンブルク領で新たに開発された新型のライフル銃で、『M-1』よりも有効射程と命中精度が高い。
もちろん、イレーナもハーンブルク軍の新兵器については情報を得ている。
そしてもう一つ、商業の面でも大きな期待ができる。
「それに、ジオルターンとエラリア王国の間で交易もできるから一石二鳥って感じ。」
「あなた、相変わらずとんでもない頭しているわね。」
「褒め言葉として受け取っておくよ。」
プレハブ工法を選択したため、作業はおよそ2週間ほどで終わった。
ちょっと強度の面で不安は残るが、とりあえず渡るのは可能になった。
✳︎
「という事は、ハーンブルク家と停戦をするだけでなく、同盟を結んでいただけたのだな?」
「はい、王よ。」
エラリア王国の国王は、国王にとって右腕とも呼べる存在であるジャイアント将軍からの報告に、ホッと一息ついた。
ギャルドラン王国から、ハーンブルク領と戦争になるかもしれないと聞いた時は、とても驚いた。
しかしそれ以上に、船はやられたものの、一向に攻めて来ないハーンブルク軍が不気味に思えた。
このような状況から、ジャイアント将軍は、ある予測を立てた。それは、ハーンブルク軍の目的は侵略ではなく牽制ではないか、という物だ。
綿密な情報収集から、ギャルドラン王国の敗北を読み切ったジャイアント将軍は国王にハーンブルク側に付くように助言した。
国王はそれを了承し、ジャイアント将軍はハーンブルク家に休戦協定の話し合いの席を設ける事を提案し、話し合いをまとめる事に成功したという感じだ。
「それで、其方の目から見て、ハーンブルク家の鬼才はどうであった?」
「はっ。まだ全てが判明しているわけでは無いものの、才能の片鱗をこの目でしっかりと実感しました。」
「それほどか?」
「はい。まず、我が国に対して、ハーンブルク家が独自に開発した帆船と呼ばれる船を数十隻を提供してくれるとの事です。」
「何だとっ!」
「実物を見せてもらいましたが、操船に多少の技術は必要なものの、とても素晴らしい船でした。」
ハーンブルク海軍によって、エラリア王国が所有していた船のほとんどが沈められてしまい、実はかなり困っていた。
そのため、これほどありがたい話はなかった。
「それだけではありません、我が国には無い珍しい商品を販売して下さるとの事です。」
エラリア王国と、ジオルターンの行き来を可能にし、エラリア王国の国民、ハーンブルク領民、連邦市民の交流を許可した。これで、両方に利益が出るはずだ。
(ただし橋には通行料あり)
「さらに、軍事的な支援の話も受けております。」
「おぉ。」
元々は、海だけしか取り柄がない小国であったエラリア王国であったが、ハーンブルク家や連邦共和国との同盟締結によって、存在価値は大きく跳ね上がる。
ジャイアント将軍の英断によって、エラリア王国は生き残った。
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どうでもいい話
パズドラとワンピースがコラボするのでは?
と、最近はずっと期待しています。
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