亡国編

第1話 同盟

ハーンブルク軍とヴィスラ河を挟んで反対側に布陣した3カ国による連合軍による睨み合いが始まってから1ヶ月後、1番北にある国から交渉の場を設けたいという使者が来た。


連日による海上封鎖&砲撃によって、その都市の住人の多くは内陸部に避難した。そして、複数あった港町は既にそのほとんどが都市としての機能を失いかけていた。


そのため、この始まってすらいない戦争で、唯一被害を受けた国であった。

俺は、待ってましたと言わんばかりにこの話を了承し、7日後に話し合いの席を設ける事を約束した。



✳︎



会談は、例によって『秋雨』の中で行われる事となり、鎧を被った屈強そうな男を中心とした使者数名が、『秋雨』に乗艦した。


「お初にお目にかかる。エラリア王国軍所属のジャイアント将軍だ。」


「どうも、ハーンブルク軍参謀長レオルド・フォン・ハーンブルクです。ようこそ、我が艦隊へ。」


「噂には聞いていたが、本当に小さいな。」


「どのような噂を聞いたのかは知りませんが、私の身長は昔から大して変わりませんよ。」


「はっはっはっ〜そのようだな。ふむ、このお茶、我が国の物よりも甘いな。」


豪快に笑いながら、将軍は先程クレアが出した砂糖をたくさん入れた紅茶を飲みほした。


「はい、うちの特産品である砂糖を大量に使っておりますので。」


「そのようだな。他にも、王国では見た事がないものがたくさんだ。まずこの船、少し触ってみたがおそらく鉄かそれに似た金属でできている。儂が今座っているこの椅子もそうだ。はっきり言って、何でできているかわからん。」


将軍は、自分が座っている椅子を撫でながら答えた。

確かに、クッションなどを使って、出来るだけ身体に負荷がかからないように工夫してある。長時間、船の上にいなければならない海軍にとって、身体のケアは大切だと思って先日設置した奴だ。もちろん、海軍には大好評で、中には俺のところへ直接お礼を言いに来る者もいた。

って、そんな話はどうでもいい。


「ハーンブルク領で開発された新素材と言っておきましょうか。既に量産体制に入っております。」


「そうか、流石大陸西側一の生産力を持つ都市だな。」


「光栄です。」


俺は、笑顔を見せながら答えた。褒められたので、ちょっと嬉しい。


「さて、本題に入ろう。儂は、いや儂の国はハーンブルク家と停戦交渉をしたいと考えている。」


「停戦、ですか・・・・・・」


「あぁ、そもそも事の発端は、ギャルドラン王国とサーマルディア王国が戦争状態になったため、牽制のため双方が軍を出した事だ。ならば互いに軍を引かせるのが道理ではないか?」


「まぁそうですね。我々が軍をジオルターンに送った理由は、ギャルドラン王国と仲が良いそちらの5カ国が、連邦国やサーマルディア王国に進軍する事が予測されたからで間違いありません。」


「ならば、平和的な解決ができるはずではないか?」


将軍は、そのように訴えた。言わんとしている事は理解できる、しかし今あげた5ヵ国中4ヵ国はギャルドラン王国の指示に従って戦争ができる状態となっていた。

調べてみると、どの国も国民に対して徴兵を行ったり、武器防具を軍に納品する用に鍛冶屋へ命令を行っていたりと、戦争の準備を進めていた。

SHSから得た情報によると、どの国も戦争する気満々であった事がわかった。

つまり、それに対する備えが必要という事だ。


「言いたい事は理解しました。しかし、残念ながら我々はここを離れるわけにはいきません。」


「それは何故だ?」


「仮にあなたの国と停戦をし、それが信じられるものであったとしても、他の4つの国が攻めて来ない理由にならないからです。」


エラリア王国としては、侵攻されたら困るから警備兵以外の兵士がジオルターンに滞在しないで欲しい。それと、海上封鎖をやめてほしい。


一方のハーンブルク家としては、目と鼻の先に国境があるので、万が一侵略を受けても持ち堪えられるだけの兵力をジオルターンに滞在しておきたいと考えていた。


「このように、話はどこまでいっても平行線のままなんです。」


「なるほど・・・・・・」


未だに何の反応もない他の3ヵ国から、何らかの打診が有れば話は別だが、今のところその可能性は少ない。

という事で、俺は元々の計画通りに話し合いを進める事にした。


「ですので、軍事同盟はいかがですか?」


「っ!軍事同盟を結んでいただけるのか?!」


俺が餌をまくと、すぐに食いついた。


「はい、ハーンブルク家としても、人口およそ40万弱のジオルターンの安全は確保したいと考えております。その上で領土の東に同盟国がいる事は、とてもありがたいのです。」


「その話、我が国としても是非とも受けたい話です。」


ジャイアント将軍は即答した。

エラリア王国は、はっきり言ってパッとしない国であった。

人口はジオルターンの40万よりも少なく、漁業はそれなりに盛り上がっていたが、それ以外は農業も工業も鉱山資源も大した産業はない。

そして、唯一の希望である漁業は、ハーンブルク家による海上封鎖によって壊滅的なダメージを受けていた。そのため、この話をジャイアント将軍が断れるはずがなかった。


「わかりました、では細かい事の話し合いを進めましょうか。」


「お願いする。」


その後、ジャイアント将軍と意見の擦り合わせを行った。お互いの要求を提示した上で妥協点を模索し、次々と構築していく。

相互軍事支援、合同軍事演習、使わなくなった旧兵器の販売なども話し合う。

そして意外な事に、マッスルマンことジャイアント将軍は頭の回転がとても速かった。


【筋肉質=馬鹿と、単純解釈するのは間違っていますよ。】


俺の父親と1番上の姉の事を考えるとな〜


【それらについては、否定しません。】


だよな。


【おそらく、あの方達はDNAからして異常なのだと思います。】


おい、それだと血が繋がっている俺も異常になるぞ。


【違うんですか?】


おいっ!


と、こんな馬鹿な話はともかく、数時間にわたるすり合わせが終わると、エラリア国王の承諾を待たずして、同盟が締結された。


______________________________



どうでもいい話


ちょっとテキトー過ぎた気がする。

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