第16話 建国
サラージア王国の内戦はついに終結し、新たに『ジア連邦共和国』が誕生する事となった。
サラージア王国側に味方した旧貴族は全て処刑もしくは投獄、鉱山送りとなり、軍部も全て解体された。
また、旧王家は全員、俺の命令でリアドリアにある行政府の地下牢に収監されていたが、新政府の方針により処刑された。
また、領土についても明確に定められた。
臨時首都であった『リアドリア』は正式に首都となり、ハーンブルク家との停戦の際に割譲された沿岸部全て返還された。
代わりとして、ベール川上流にある資源地帯と、サラージア王国の重要拠点であった『ジオルターン』がハーンブルク領となり、元『王都』は30年間租借されることなった。
理由としては、王都をどの貴族が統治するか揉める可能性があったからだ。
そして、首都と租借地を除くジア連邦共和国の領土を30分割し、今回の内戦で活躍した20家の貴族に分配された。
残りの10個の州は、5年に一度開催される選挙によって2人の代表を選出させ、それぞれの州の代表(議員)にするという選挙制度を試験的に行う事にした。
それに加えてハーンブルク家が9議席を所持し、合計49議席による連邦議会を国の最高意思決定機関(日本で言うところの国会)とした。
また、連邦議員の中から1人代表を選出し、その人物を国の代表とする事にした。ちなみに初代連邦議員代表は、革命成功の功績を考え、ベルダルスが選ばれた。彼は今日から5年間、連邦共和国の代表を務めることになる。
これだけでは、民主主義の州と貴族が統治すること州に差ができてしまうかもしれないので、州間の移民や移住を自由にし、民主主義の州に住む国民には、戸籍を登録させる事を義務付けた。ちなみに、民主主義化される州は全てハーンブルク領から近い所、もしくは元ハーンブルク領だった場所に作られ、比較的インフラが整備された場所に作られた。
解体した軍部は、連邦議会に命令権がある国防軍と、各州を警備する警備部隊(警察)に分けられた。また、それぞれの州には警備部隊の人数を増やすのに承認が必要という法律を定めた。
他にも、ハーンブルク領となった『ジオルターン』に軍港を整備して、海上の防衛拠点とした。
そしてさらに、貨幣制度も一新させた。これまで使っていたサラージア王国独自の硬貨を全て廃止し、この革命を成功させた英雄である『ベルダルス』から名を取って『ベル』という新硬貨が作られた。
ちなみに硬貨の発行権はハーンブルク家が持ち、ジア連邦共和国が経済を操作できないようにしてある。
国名は『ジア連邦共和国』で、ひとまず国の土台は出来上がった。
✳︎
選挙などに関してはもちろん今すぐ実施というわけではない。
少しずつ、みんなで力を合わせていい国を作ろう、という方針だ。
だから、今はとりあえず・・・・・・
「かんぱーいっ!」
「「「かんぱーい」」」
新たに国の代表となったベルダルスの掛け声に合わせて、その場に集まった多くの貴族や軍人が手に持ったグラスを高く掲げた。
今日は新首都『リアドリア』で戦勝記念パーティーが行われる事となった。
ハーンブルク領からも、何人か軍人が参加しており、両軍の仲を深めてもらうつもりだ。
トリアス教国方面に部隊を展開する必要が無くなったので、お父様も参加している。
また、実は停戦後、表向きにはサラージア王国と戦争をしていなかったが、裏で2000名ほどの先鋭部隊を送り込んでいた。
全員が最新の移動用装備である自転車と『MK-1』を装備しており、主に遊撃部隊として大いに活躍した。
国民達も、戦争が終わった事を聞き大喜びだと聞いている。
「ついに、終わりましたね。」
「はい、とても長かったです。」
ワインなどのアルコール類を未成年なので自主規制している俺は、飲み会になると付いていけないので1人でベランダに出て、月を眺めていた。
そんな俺に、おそらく同じような理由で抜け出して来たであろうがヘレナ様が俺に声をかけた。
「今回の戦争、私はレオルド様にとても感謝しています。」
「それは、何故でしょうか・・・・・・」
心当たりはもちろんある、そしてそれにヘレナ様が気付いている事もわかった。
だけど何故か、誤魔化したかった。
「私やイレーナ、そしてハーンブルク領に住む人々を守ってくれたからです。」
「・・・・・・」
ヘレナ様の言葉は、俺の心に深く刺さった。
俺は何も言えずに、視線を彼女の方に向けた。
「確かに、犠牲は多かったです。もちろんその事実から目を背けてはいけません。しかし、あなた様はハーンブルク家の次期当主として、領民を守らなければならないのです。」
「本当に、これでよかったと思うか?もっといい方法があったんじゃないか?」
「レオルド様は、一生懸命頑張りました。それは、私が1番わかっております。」
確かに必要な戦闘であった。
攻撃されているのだから守るしかない。
そうしなければ、もっと多くの領民が命を落とす事になる。
人もたくさん殺した。
両手では数えきれないほど・・・・・・
もう俺は、この世界に染まりきっているのかもしれない。
人類の歴史とは、戦争の歴史である。過去の偉人はどのような事を考えながら戦争を行ったのだろうか。
「なぁ、これからも俺を支えてくれるか?ヘレナ」
「ふふふ、夫婦というものは、お互いに支え合い、寄り添い合う存在です。任せて下さい、レオルド」
ヘレナはそう言いながら、俺の両手を強く握った。俺は自然と、彼女の身体をこちら側に引き寄せた。
そして、抱きしめた。
「だから・・・・・・過去に失った悲しみより、掴み取った未来に目を向けて下さい。」
この時の彼女の声は、何故か俺の記憶に鮮明に残った。
そして、この日を境に、俺とヘレナの距離は一気に縮まった。
*
「お前が言っていたのは、こういう事だったんだな。」
「はい、確かにレオルドは天才です。ですが天才なあの子にも支えとなる人物が必要です。」
「噂程度にしか聞いていなかったが、第3王女様はレオルドがとても好きなんだな。ところで、どうして彼女にしたんだ?」
「彼女は何処となく似ていたからです、あなたの妻となった私と・・・・・・」
抱きしめ合う2人を眺めてこちらの夫婦は、思わずそんな事を呟いた。
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どうでもいい話
自分で書きながら、これ多分実現は無理だなって思いました。
頑張れ、レオルドっ!
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