第15話 連邦
サーマルディア王国軍による兵糧攻めを開始してから2ヶ月ほどが経過し、トリアス方面の戦線の戦況は大きく動いていた。
「我が軍は多数の敵兵を撃ち破り、拠点の防衛に成功したか。」
「はっ、多少の犠牲は出たものの、港と輸送船の防御には成功しました。」
まず、首都が包囲され、大量の船を失った教国は、河の北側で戦っていた別働隊への食糧供給がだんだんと苦しくなっていった。
結果として各地で敗戦が続き、後退していった。
そんな中、王国軍はアルバス河に沿って北上し、トリアス教国の分断を図った。その動きを早急に察知したトリアス教国軍は、川沿いを制圧すべく東進していた王国軍の別働隊と衝突、双方合わせて10万人近い兵士が命を落とすという激戦はトリアス教国軍の奮闘によって痛み分けに終わった。
むしろ拠点防衛の成功という観点から見れば、トリアス教国軍の勝利と言える内容でも合った。
「また、敵の別働隊にかなりのダメージを与えたので、当分攻撃は無いと思われます。」
王国軍による兵糧攻めによって教国軍は首都に食料や武器をほとんど輸送できない状態になっていたが、情報だけは得ることができた。
暗闇に紛れて脱出すれば、例え6万5000の兵に囲まれていても斥候であれば突破が可能だったからだ。
「具体的な数字を教えてほしい。確かあの港には10万弱の兵がいたな、敵はどれほどの兵力だったのだ?」
「はっ!およそ12万ほどだと聞いています。」
「おかしい・・・・・・報告では、敵の動員可能兵力は最低でも16万はいるはずだ。いったいどこへ・・・・・・」
トリアス教国の軍事部門のトップである騎士団長は考える。
だが、奴らが行きそうな場所は思い当たらなかった。
「今のところ、接敵の報告は受けていません。兵力を維持できなくなって農場へ返したのでは?」
「いや、いないと楽観視するよりいると危険視した方がいいだろう。報告を密にしろっ!」
「はっ!」
今回の大規模な攻防戦は、確かにトリアス教国の勝利に終わった。
しかし、視野を広くして見れば、サーマルディア王国の勝利と言える内容であった。
この戦いは、これまでで最も激しい戦いとなり、トリアス教国崩壊への次なる一撃となった。
✳︎
同じ頃、もう1つの戦線がついに決着を迎えた。
ハーンブルク家の介入によって、それまでサラージア王国側に味方していた多くの貴族がジア共和国側に味方した。
そこからは早かった。
サラージア王国の重要な拠点は次々と降伏し、王都での攻防戦が長引くと予想していたが、思ったよりもずっと早く陥落し、サラージア国王を含む多くの貴族が捕らえられた。
そして、ジア共和国の臨時首都となった『リアドリア』にて、講和会議が行われる事となった。
ちなみに『リアドリア』は、シュヴェリーンからおよそ100kmほどの地点にあり、今ではシュヴェリーンから『リアドリア』にハーンブルク家が作った道ができている。
会議に参加するメンバーは、平民優遇派のリーダーであるベルダルスを中心とした元サラージア王国貴族と、ハーンブルク家から俺とお母様が参加した。
「戦争の終結、おめでとうございます。無事平和な国になったようで何よりです。」
「ありがとうございます、エリナ様。今回の戦争、勝てたのはハーンブルク家の助けがあったからで間違いございません。」
「いえ、皆様1人1人の強い思いが、国民や私を動かしたのですよ。これは間違いなく皆様の掴んだ独立です。」
「はい・・・・・・」
「では早速、ジア共和国の今後の方針から決めましょうか。」
「よろしくお願いします。」
ジア共和国の今後の方針を決める重要な会議であるが、実はこの場で1番発言権があるのはベルダルスではなく、お母様だったりする。
当然、国家運営を行った事がある人物はいないが、この中ではお母様が1番詳しい。
「今のところ、あなた方には3つの選択肢があります。1つ目はサーマルディア王国の属国になる事です。ですがこの方法では、利益が王国に流れていくのであまり良くはありません。」
確かに俺もこの案は辞めておいた方がいいと思う。何故ならサーマルディア王国にいいように地図を書き換えさせられる可能性があるからだ。
戦争によって、現在サーマルディア王国はだいぶ疲弊しており、新たに土地が手に入ったとなればすぐにその領地を自国の貴族に配り始めるだろう。
つまり、いい事無しなのだ。
「2つ目は、あなた方もしくは旧王家の中から国王を選び出し、その方に統治してもらうというやり方です。ですがこの方法もあまりおすすめはできません。王位継承などで揉め事を起こし、再び内戦になる可能性があるからです。」
絶対王政の国家は基本的に成功しない。
国が荒れ果てた今、国民を引っ張っていく強いリーダーは必要かもしれないが、この選択をすべきでは無いだろう。
「そして3つ目は、ハーンブルク家の支援のもと、このまま共和国として独立するという方法です。現在ジア共和国はとても弱っています。そこで、ハーンブルク領からあらゆる分野の優秀な技術者や優秀な道具を送ります。」
最後のは要するに、ジア共和国の政治にハーンブルク家が口出しをするという事だ。
ジア共和国を共和制連邦国家にして、国の最高意思決定機関である連邦議会にハーンブルク家も参加して、色々とやる予定だ。
もちろんこの世界に連邦国家はないので初めての試みだ、それどころか共和制の国も極少数である。
「では、我々は3つ目の案を採用させていただきます。」
「わかりました、ではその方向で調整を始めましょうか。」
「よろしくお願いします。」
その後、およそ1週間ほどの時間をかけて、ジア連邦共和国の法律の整備を行い、ついにサラージア王国とハーンブルク家の争いに終止符が打たれた。
____________________
どうでもいい話
安定の中途半端な終わり方・・・・・・
次話でしっかりと詳細を書きます。
それと、4000ブックマークありがとうございます😊
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます