第50話
モユが試し終わり、成功を見届けたあと。
制服に着替えて戻ってきたモユが戻ってくると
「やったぁああああ!!!」
歓喜の声が研究室内に響いた。
「うん、これなら戦えるよ。ちゃんと勝負になる」
嬉しそうに笑うモユに俺も同意する。アルのときはそれほどだったけど、無事モユが本番に挑めるとわかって気が楽だ。
「勝てる確率も高い。見た目のインパクトもいいしね」
「はい! 優勝間違いなしですよ! それにダンジョンでの魔法修行のお陰で僕より魔法持続時間がかなり長いです! 試験時間は余裕でしょうし、人前でえっちな下着姿を見られることはないので安心です!」
緊張から解放された安堵でテンションが上がる。テストが終わった後の開放感なんか比にならないくらいだ。
ただ興奮すると睡眠不足がたたってくらりと目眩がくる。
「じゃあ試験が上手くいくことを祈って、無事完成したことを祝ってパーティーでも開きませんか!?」
「アルは若いね。俺は明日遅刻しないよう帰って寝るよ」
「ボクもそうしようかなあ〜」
「え、ええ! あぁでも祝勝会にお預けっていうのもいいですね! それにエルさんも体調が万全なときの方がいいですしね!」
「私は気にしないでくれ……」
エルの顔色は良くない。モユは止めたみたいだけど、完成した魔法を見たくてどうしても、と研究室に足を運んだのだった。
「そんなわけには行きませんよ。じゃあそうと決まったら、今日は帰って寝ましょう! 明日は事前に集まりますか?」
「そうだね。研究室に魔導書を取りに行って、皆で魔法が発動できるか確認してから試験会場に向かおう」
「わかりました、モユさん! それじゃあ今日は解散でいいですか?」
「うん」
モユが頷くと、エルは口を開いた。
「それでは私は保健室で休んでから帰る。先に寮に戻っててくれ」
「大丈夫? 一人で行ける?」
「ああ」
そう言ってエルは研究室を出て行った。足取りは確かだったので、心配はいらないだろう。
「じゃっ、僕も帰りますね。時間が余ったしパーティー用の買い出しに行ってきます」
続いてアルも研究室を出たのでモユと二人きりになったが、すぐに研究室を出て寮へ足を運ぶ。
「ふぅ、何とかなったね」
「本当、今回は俺も流石に疲れた」
寮への道すがらモユと会話する。
「最初はダンジョンに潜って、慣れないながら何とか魔物を倒しながら進んでさ」
「モユも皆も辛そうだったなあ」
「本当に死にそうだったよ、回復薬でうげーって何回もなったし」
モユの冗談に笑う。
「回復薬で気持ち悪くなることはなかったけど、最後に潜ったダンジョンは俺も危険を感じたよ」
「アレはもう思い出したくないなあ。ボクも死を覚悟したよ」
「しかもアイテムがなくて、俺は本当に絶望した」
「あはは、あの時は空気が葬式だったからね」
「うん。でも、あそこでムキにならなくて良かった」
「ボクはヤケになったのかと思ったけどね。もう残り時間がないし、何のアドバンテージもない研究に舵を切るなんて相当馬鹿げてるよ」
「我ながら、本当にな」
「自分で言うんだ」
モユはからからと笑う。
すずらんの花が綻ぶような笑顔に空気はより和み、
「研究も睡眠時間削って苦しかったけど、振り返ってみれば楽しかったなあ。何だかんだボクはこの試験期間、すっごく楽しんだなって今になれば思う。だから……」
「だから?」
「遊びは終わりだ」
ぞっとするほど凍てついたモユの声に、和んだ空気は一気に張り詰めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます