第38話
お待たせいたしました。更新予定は活動報告にあります。
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気合を入れてダンジョン攻略を再開したはいいものの、気合で戦闘が楽になるわけもなく、下層に降りるころには、全員が肩で息をしていた。
「ちっ、またかっ!」
遠吠えが聞こえると、エルが剣を抜いて戦闘体制に入る。俺たちもその場で足を止めて武器を構えた。
すぐに視界に入ったハントウルフの数は、大体6、7匹。中層より数が多いだけでなく、一回り大きく強いキラーウルフという魔物が群れを率いていた。
統率された動きで襲いくるウルフたちの攻撃をいなすため、固まってそれぞれ視界をカバーする。
「来たよ! アルくん!」
「は、はい!」
アルは、襲いかかってきたハントウルフに対して、振り払うように剣を横に薙いだ。が、躱されてしまい、ぶん、と空を切る。地面に着地したハントウルフに目を奪われているアルに、別の個体が歯を剥き出しにして飛びかかったので、急いで弓を放つ。
矢は命中し、ウルフは甲高い悲鳴を上げて粒子と消える。が、それと同時に苦悶の声があがった。
「ぐっ」
また別の個体が、エルの腕に噛み付いていた。血を流し、苦悶の表情を浮かべるエルを仕留め切らんとばかりに、複数のハントウルフが飛びかかる。
「ライトニングランス!」
モユが放った雷の槍の魔法がエルに迫ったウルフたちを散らす。その隙を見て、エルは腕に噛み付いたウルフを無理やり引き剥がした。
「エルさん、大丈夫ですか!?」
「っ、ああ、何とか」
エルは苦しげにそう言って、ハントウルフたちを睨みつけた。
その目から放たれる殺気にあてられたのか、ハントウルフがまた攻撃しようと一歩踏み込んでくる。
今すぐウルフたちを矢で射抜きたいが、またエルに攻撃がきたら今度はただですまないかもしれない。エルを守るために、いつでも矢を放てるよう弦を引いた。
ぐるぐると低い唸り声を上げてもう一歩と迫ってきた時、その個体に向けた一喝するような吠え声があたりに響いた。
声の主は、上位のキラーウルフ。押し留められたハントウルフはこちらに鋭い歯を向けたまま、ゆっくりと後ずさる。
どういう意図かはすぐわかった。出血するエルが弱るのを待っているのだろう。
「ちっ、魔物くせに小賢しいっ」
「エルさん、早く回復薬を!」
「ああっ!」
ポーチの回復薬を取り出そうとエルが視線を下げた瞬間、モユが叫んだ。
「待って!!」
モユの声に警戒を強めたエルを見て、攻撃態勢入っていたウルフたちはまた距離をとって下がる。
「ダメだね……。回復の隙を狙ってくる」
「……どうします? 早くしないと、エルさんが」
不安の色に染まるアルに、大丈夫、と声をかける。
「もう少し、ウルフたちが距離を取れば俺が何とかする」
今までは、近い距離にいる皆を巻き込まないよう、強力な技を控えてきたが、もう少し離れれば使える。
苦悶の表情のエルを見る。もはや、聞かれたら面倒だったり、モユのレベル上げだったり、悠長なことは言ってられない。
そろりそろり、と距離を取るウルフに気取られぬよう、ゆっくりと矢をたがえる。
あと、3m。2、1。
ウルフが暗闇に紛れない限界の距離で、矢を放つ。
朱色の矢が風を切って飛んで行き、中央のウルフに突き刺さる。視界が真っ白になるほどの閃光、爆発する轟音、吹き飛ばされそうなほどの爆風が巻き起こった。
風が収まると、周囲は真っ暗になる。松明の火はさきほどの風にかき消されていた。
「モユ、松明」
「え、うん」
松明に再び火を灯すと、皆の呆気に取られた顔がはっきりと見えた。
「れ、レインさん? 今のは?」
大侵攻で使ったエクスプロージョンアローのことを、なんと言おうかと思ったとき、また遠吠えが聞こえた。しかも、二つの。
皆の顔が緊張感に張り詰める。
魔物の足音が近づいてくる。それは、大きい、いや、多い。
段々と近づいてきて、そして暗闇の中から姿を現した。
「に、二頭のキラーウルフ?」
「二グループ、だね……」
暗闇からぞろぞろと現れたのは、二つのウルフの群れだった。
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