第35話

 翌日も、翌々日も、その後も毎日ダンジョンに潜り続けて5日目の今日。俺たちは膝丈くらいのゴブリンたちに襲われていた。


「アルくん、前三匹押さえて!」


「はい……って、あ、エルさん、一匹抜けて行きました!」


「任せろ、はあっ!」


 前で、アルが押さえて、撃ち漏らした魔物をエルが一刀両断にする。そして後ろで、魔法の発動を準備していたモユが……


「ライトニングランス」


 雷の槍でゴブリンの隊列を分断した。


「行きます!」


「ああ!私は右を!」


 あわてふためくゴブリンの背を討つように、アルとエルが駆逐していく。


 俺は二人が討ち漏らしたゴブリンをぴゅんぴゅんと射抜いていき、ゴブリンの群れを殲滅する。


 戦闘が終わると、攻撃をもらったアルにエルは回復薬を飲み、モユは少ない魔力を補給するために、魔力回復薬をがぶ飲みする。


「うええ、気持ち悪い」


「お腹もうたっぷたぷだよ」


「……苦しい」


 不平不満を漏らす三人に声をかける。


「ほら、まだまだ序盤だよ」


「わかってますよ〜」


「アル、泣き言を言わない」


「うぅ〜、それでも辛いんですよ。もっと楽になっていくはずなのに」


「そうだな、5日も潜れば楽になってくると思ってたな」


「ですよね、エルさん!」


「まあそうなっていないわけだが……」


 二人が意気消沈する。


 5日でそれなりにレベルは上がっている。だがそれでも適性より上のダンジョンにいるので、楽になるはずがないのだ。


「ま、でも、レインくんの言う通り、泣き言いっても仕方ないよ。さ、次行こうか」


「ですね……頑張りますか!」


「ああ」


 三人に元気がもどったようなので、再びダンジョン攻略を再開する。


 ……が。


「アル、右だ!」


「い、いや、こっちも手一杯ですって!」


「え!? ボクまだ準備できてないって!! レインくん!!」


 とてんやわんやだったり、


「グッ……!」


「エル、大丈夫かい!?」


「モユさん、前!」


「っぶない!!」


 と冷や冷やするシーンがあったり、


「もうダンジョンには潜りたくないです……」


「同感だ」


「ほとほと疲れたよ……」


 とダンジョンを攻略する頃には満身創痍だった。


「あてどないし、楽にはなりそうもないですね……」


 帰り際、泣き言を漏らしたアルに、モユが手刀を頭に下ろした。


「いて!?」


「アルくん、そういう士気の下がることは言わない」


「そ、それはすみません……」


「まあ、気持ちはわかるし、ボクも言おうとしてたけど」


「じゃあ叩かれ損じゃないですか!?」


 アルを見て、モユはからからと笑った。


「ごめん、ごめん。でも、さっきもだけど、そう落ち込んで仕方ないよ。きっとすぐに見つかってこんな日々も終わるさ」


「ですね! すみません、ちょっとネガティブになってました!」


 明るさを取り戻したアルに皆は同調し、明日のダンジョン攻略に備えて早々に帰路についた。

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