第31話
赤い顔でぷるぷる震えるアルは、スカートの裾をギュッと摘んだ。
「な、何ですかぁ、これ!」
至る所にふりふりがついた、いわゆる白ロリと呼ばれるドレス。少女的なアルの可愛さが引き立てられ、ひと目見れば口がにやけてしまいそうなほど似合っている。
「可愛いよ、アル」
「ふえ!? や、や、やめてくださいよ、レインさん!」
「やるね、レインくん。だけど、私も負けてないよ。ほら次に着替えて、アルくん」
モユに試着室に押し込まれたアルは、別の服を着てきた。
「うぅ、恥ずかしいです」
アルが着てきたのは、魔女っ子の服。肩に乗っただけのミニマント、白のブラウスに、超ミニスカート。細くて柔らかそうな手足に目がいくと、アルは恥ずかしそうに太ももこすりあわせた。
「悔しい、モユに負けた」
「ふふん、レインくんも中々だったよ」
「仕方ない、これにしよう」
「わかったよ」
「わからないでください! しません!」
仕方ないなぁ、と俺とモユは別の装備を見にいく。
それから、盗賊の服だったり、狩人の服だったり、メイド服だったり、色々と着せ替えて遊び、満たされると、真面目に装備を選んだ。
「これ! これいいです! 格好いいし、動きやすい!」
アルが気に入ったのは、勇者っぽい装備。マントに、ローブにベルト。タイツに長ブーツといった、つまらない格好だが、気に入ったアルが可愛いのでいいか。
「モユさん、本当に買ってもらっていいんですか!?」
「うん、色々と付き合ってもらったしね」
「恥ずかしい思いをしたけど良かった!」
ちょろいなアル。そう思いながらも、つっつかないことにした。
「あ、僕だけ浮かれてすみません。皆さんの装備がまだですよね?」
「いやもう、アルで遊んでる間に買ったよ」
「そうなんですか。というか、僕で遊んだとか言うのやめてください」
なんて会話ののち、防具屋を出て、目的は達したので帰路を辿った。
学園についた頃には、日は落ちきり、すっかりと暗くなっていた。
「じゃあ今日は解散かな。明日から早速、ダンジョンに潜るから、今日は早く寝てね」
とモユの言葉があり解散。アルは図書館に、エルは教室に忘れ物をとりに行き、寮への帰り道はモユと2人きりになる。
普段なら、ハグしにきそうなものなのに、そんな気配はない。モユは静かに遠くを見つめていて、どこか物憂げだった。
「モユ、何かあった?」
つい心配して聞いてみると、モユは弱々しく笑った。
「あはは、わかる?」
ちょっとね、とモユは続けた。
「今回の課題、どうしようかなぁ〜って思って」
「どうしようって、どういうこと?」
「上手くいかないことに、レインくんたちを巻き込んじゃったのかなって」
魔法の能力において、他3人に劣っていることからくる不安、それと同じ班になったことの申し訳なさだろうか。
わからないけど。
「モユが何を悩んでいるか知らないけど、俺のことは気にしなくていいよ。俺が自分でモユの班を選んだんだから。それに、上手くいかないって思い込まなくていいんじゃない?」
「……そか。レインくんは優しいね、ハグしていい?」
「ダメ」
「ええ、いけずぅ。でも2人きりってだけで嬉しい」
モユはそう言ってはにかんだ。
物憂げな表情は消え去り、帰るまでずっとニコニコ嬉しそうにしていた。
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