第25話


「うええ!?」


 と驚くアルには申し訳ないが、何も意地悪で否定したわけではない。いや、拍手やスパイだなんて言う必要はなかったので、意地悪が多分に含まれている。いや、いじりたくなるアルが悪いので、俺に非は一切ない。


 まあそんなことはどうでもいい。


 どうして俺がダンジョンに潜ることに固執するか、それを説明するにはゲームにおける魔法試験について知る必要がある。


 入学後、最初の月末課題、魔法試験。


 ゲームでは二つのアプローチがある。


 研究コマンドとダンジョンに潜ることで魔法書を手に入れることの二種類だ。


 前者は、コマンド実行により、大成功、成功、失敗、の成果で研究ゲージをためて、最終的に溜まったゲージに応じた魔法を取得できるというもの。


 後者はそのままで、ダンジョンに潜って魔導書を見つけることにより、魔法を習得するというものだ。


 両者を比較すると、研究には時間を無駄にしない利点がある。


 ダンジョンに潜り攻略できるか否か、また、魔導書のあるダンジョンを見つけられるか否か、そしてその魔導書に価値があるか否か。そういった時間、運の危険性を排除し、着実に魔法習得を目指せる。


 だから安全牌を選ぶなら研究だけれど、モユと一位を取るにはそれでは難しい。


 研究コマンドは、班長の魔法技能に応じて、大成功確率があがる仕組みになっている。つまり、魔法技能が高いフランとモユでは、大成功確率に雲泥の差があり、同様の手法で戦えばまず負けるのだ。


 また、仮に運で大成功を繰り返したとしても、習得した魔法が練度不足で使えなければ、試験当日に使用することができない。モユの魔法の練度は低いので、それを上げる意味でも、ダンジョンに潜った方がいい。


 それに何より、魔導書のあるダンジョンを知っているので、時間を無駄にすることはない。


 まあそんなわけで、ダンジョンに潜ることを俺は選ぶのだ。


「このスパイめ〜、とっちめろ〜」


「モユ、任せろ」


「ひ、ひぃ〜」


 何だか簀巻きにされそうなアルが目に浮かんだので、フォローを入れてあげる。


「ごめん、スパイっていうのは冗談」


「えー、つまんないよ、レインくん」


 モユがわかって巫山戯ていたのに気付いたアルは「うぅ……」と悲しそうな声を出した。


 そんなアルは当然放置して考えを話す。


「でも、ダンジョンに潜った方がいいというのは、冗談じゃない。フランにローレル、シリル相手でも、真っ向勝負しかければ勝ち目は薄い。負けるにせよ、地道に努力して4位より、いちかばちか賭けて失敗して4位の方が気分は悪くないと思う」


「モユに随分なことを言うな?」


 エルに睨まれて居心地が悪い。


「エル。ボクが魔法の面で3人に劣ってるのは事実だから気にしないでいいよ」


「だとしても、だ。もう少し言い方はあっただろう」


「それを言えばそうだねえ。レインくん、ボク傷ついたな……」


 悲しい顔をモユはしたけど、いつもみたいに揶揄われてるだけだろう。


「ということで、俺はダンジョンに潜った方がいいと思う。モユはどう?」


 スルーされたことにモユはちぇっ、と舌を打ってから頷いた。


「うん。ボクも同じことを考えてたからそれでいいと思う。エルはどうかな?」


「私はモユの判断に従うだけだ」


「そう、ありがとう。じゃあそういうことで」


「え!?」


「どうしたんだい、アルくん?」


「え、いや、そのぅ、僕には聞かないんですか?」


「忘れてた」


「忘れてた!?」


「冗談だよ、君は面白い反応するね」


 からからと笑うモユに、アルはがくりと肩を落とした。


「仲良くやっていけそうだな」


 俺がそう言うと、アルは怒った。


「どこでそう思ったんですか!?」


「で、アル。ダンジョンに潜る、ということでいい?」


「いいですけど! ですけど!!」


 こうして俺たちはダンジョンで魔法書を手に入れることに決めた。


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 ガチ作に一杯一杯になったので、息抜きの作品書いてます。

 ギャグギャグした趣味全開のラブコメディです。


『ノンケ女子を百合に落として「相手は女の子なのに!?」と感情ぐしゃぐしゃにしたのち、男バレしてさらに感情をぐっしゃぐしゃにする話〜』

 https://kakuyomu.jp/works/16817330650191224442

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