第24話
カフェテリアのテーブルに、4人対角になるように座っていた。
「まずは自己紹介から始めようか。ボクはモユ・サドラー。サドラー国の元首候補……なんて私のことは皆知ってるか。じゃあレインくん自己紹介お願い」
モユに振られたので口を開く。
「俺はレイン・ミレニア。公爵を任じられているけれど、今は学生をしています。なので、気安く接してくれると嬉しい」
と、アルでもモユでもなく、もう一人の少女に向けて言った。
肩までの茶髪の高身長の女の子。その子はキリとした感じで自己紹介しだした。
「私はエル・プラド。サドラー国のプラド侯爵家出身だ。よろしく頼む」
彼女のことは知っていたけど、名前まで知っていたわけではない。
モユの元家令バスティンと同じで、ちらと映るだけのモブだ。
「……」
今日初めて声を聞いたくらいで、一切関わりがないはずなんだけど……。
なんだろう。睨まれている気がする。
「エルはね、ボクの友達なんだ。同い年の侯爵家令嬢として、社交会だったり色々と接点が多くってね」
「ああ。モユとは深い付き合いだ。幼い頃は私の後ろをついて回ってたくらいだからな」
ふふん、とエルは鼻を鳴らした。
なるほど、やきもち、ってやつか。
ほしければいくらでもどうぞ、とつい言いたくなったが、そんなこと言えば、翌日に俺は行方不明だろう。
「あはは〜。ま、そういうことで、仲良しってことでこの班にいてもらってる。それに、卒業後は義兄と結婚する予定だから、今後も付き合いが多くなるし、右腕って形で参加してもらいたいんだけど、いいかな?」
別に決定権があるのはモユなので、特に不満もない。
頷くと、モユはアルに目を向けた。
「アルくんもそれでいいかな?」
「は、はい」
「じゃあアルくんにも自己紹介してもらおうか? 特に、どうしてこの班を希望したかは詳細に話してもらいたいんだけど?」
モユの目が笑ってない。ひやり、とした思いをしたのは俺だけでなく、アルは怯えた様子で俺にアイコンタクトを送ってきた。
本当の理由を言っていいかの確認だろう。
当然、首を振る。
別に言ってもいいはずだけれど、何だかよくない気がした。
「あの、それは、モユさんの力になりたかったからです……」
「ボク、嘘かどうかわかるんだ。ねえアルくん、邪な感情はないよね?」
「な、ないです! そんなの!」
「モユ、こいつ怪しいぞ。レガリオの王女と仲良くしてるところはたびたび見かけたし、スパイやもしれん」
「な、なんでそうなるんですかぁ」
アルが目で、レインさん助けてください、と訴えかけてきたので、目を逸らす。が、机の下で足をすりすりされたので、フォローに入る。
「大丈夫だよ、アルは悪い奴じゃないから」
「うーん、それはどうかなぁ?」
にやにやしてそう言ったモユをみて、わかっていてからかっていることを理解した。
ごめん、アル。俺にはどうしようもない。
「ぼ、僕、本当に悪いこと考えてないですよ!」
「なら証明できるかい?」
「え、えっと、は、はい! 今回の課題について、いい案を考えてきました! その本気度で証明できると思います!」
面白そうなので、続きを促す。
「アル、聞かせてくれる?」
「はい! まずですね、魔法試験。2つの方法があるとおもっています。1つ目は研究して新たに魔法を開発すること、2つ目はダンジョンに潜ったりして、新たな魔導書を手にすることで……」
それからアルは力説した。そして5分くらいたったのち、アルは話し終えた。
「———というわけで、4人で研究して成果をだしたいと思います!」
肩で息をするアルに拍手を送る。
「ありがとうございます! レインさん!」
笑顔で礼を言ったアルに俺は言った。
「反対。俺はダンジョンに潜って、新たな魔導書を手に入れた方がいいと思う。だから、モユ。こいつはスパイだ」
「うええ!?」
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