第17話


 劇団と交渉が成立した翌日の新都観光!!


 朝食!!


 終わり!!


 非常に悲しい観光ではあったが、もう少し、滞在しても良かったのではないか、という言葉はロレンツォからも出なかった。


 元々、領を離れることは良くないことだ。仕事を頼んだ皆は、俺たちに判断を仰ぎたいことがあるかもしれない。公爵就任にともない、俺への急な来訪があるかもしれない、と色々と、いないことによる弊害は考えられる。


 だからそういうわけで、新都での用が全て終わったのなら、いち早く領に帰る必要があった。


「今頃、どうなっているかな?」


「どうなっている、とは?」


「ほら、移転とか、噂がちゃんと流れて人が集まってるか、とか、法整備とか」


「まあ、そんな早々には、結果は出ないでしょう」


「そうだよな。どれもそれなりに時間はかかることだしな」


「はい。少しでも変化が見られたら幸運くらいの意識でいいかと」


 と、そんな話をしながら、帰路を辿った。


 ***


 ミレニアの町の城門にたどり着いた時、警備にあたっていたチークと出会した。


「あ、レイン様とロレンツォさん!」


 笑顔のチークが駆け寄ってきた。


 なんだこの、飼い主の帰りに尻尾振る犬みたいな感じ。


「お勤めご苦労様、チーク。で、やけに嬉しそうだが何かあったのか?」


「いやぁ、町に出ればわかるっすよ。お二人の馬は、厩に繋いどきますんで、悠々と帰ってください」


 うん? 一体、何だと言うんだ?


 俺とロレンツォはわけもわからぬまま、城門を抜けて領主館への道を辿る。


「あ、レイン様とロレンツォ将軍!」


「レイン様〜!!」


「わーわー!!」


 と、町の皆から手を振られる。


 な、何だこの歓迎ムード? というか、以前に比べて人が多い気がする。


 通りには人が行き交い、街道には荷馬車も走っている。市場からは景気のいい呼び声が聞こえてくる。この前、視察に出た時に閑古鳥が鳴いていたのが嘘みたいだ。


「レイン様、これは?」


「わからない、とにかく館に戻ろう」


 館に帰宅すると、カレンが出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ、レイン様!」


 ばっと、抱きついてこようとしたので、半身になって躱す。


「うぅ……」


「不在の間に、何かあったのですか?」


 恨めがましい目を向けてくるカレンに、何もなかったように尋ねた。


「ひぐっ」


「……はい」


仕方ないので、手を広げると、抱きついて頬ずりしてきた。


それで満足したようで、カレンは離れると、つやっつやの顔で言った。


「上手くいっているんです」


「何が?」


「全部です」


 ————————————————————————————————————


 長くなったので、2話にわけます。今日中にもう1話あげるかもしれません。

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