閑話 マギ
私は王宮地下牢とは別、後宮に程近い閉鎖塔の地下牢に入れられていた。
以前、自身がこの塔に監禁の魔法陣を貼り付け、限られた者しか出入りできなくした場所だ。
拷問しようと、生きたまま忘れ去られようと誰一人、気に留めるものはいない。
私の魔法が封じられ、監禁魔法陣の効果が失われてしまった後、別の誰かがこの塔を封印し直したようだが、今はそれが誰かすらわからなかった。
「マギ、あの魔法陣は魔王の力をあとどのくらい封印していられんだ?」
突如、暗闇の中、若い男の声が石壁に反響する。
すでに事情は全て話したし、神官の奴らも必死に言い訳をしただろう。
今更、なにを聞きたいというのか。
そこまで考えて、水色の髪の少年を思い出す。
持ち駒の一つ。
打ち捨てて当然の存在。
無意識に自分の手の甲を押さえ身をすくめるが、無性に惨めな気分になり顔を上げた。
「私を殺すのか?」
「いや、話を聞きにきただけだ」
王子の地位を奪い、奴隷にまで堕ち、助けるどころかその魔力まで奪ったと言うのに、少年はなんの感情もこもらない声で答える。
どうやって私の魔法封じを解除したのか、その強大な魔力で王族をどうするつもりなのか、聞きたかったが、そんなことを今更知っても遅すぎたのだろう。
「あの魔法陣はお前たちの言う祝福をしなければ、あとどれくらい持つ?」
「さあ、一年かもしれないし、一日かもしれない」
「初めから俺の魔力、いやアリエルの魔力も祝福として奪うつもりだったんだな」
「そうさ、どちらにしろあんな強大な力を扱うことなんてできない。暴走する前に国のために捧げたほうがいいだろ」
「なるほど。国王の指示か?」
「もちろんだ。お前のことも聖女候補のことも全て陛下はご存じだった」
「そうか」
少年が魔法封じされた腕を掴んだ。
「なにをする?」
殺しはしないと言ったが、拷問するつもりか?
「お前にはもうその魔力はいらないだろう?」
ほんの一瞬触れられただけなのに、身体中の魔力が消えていくのがわかった。
錯覚じゃない。
少年の気配がきえ、地下牢に静寂が戻ったがそれどころではない。
確かめなければ。
目を凝らし魔法封じの痕跡を探すが、さっきまで確かに薄く光を放ち浮かび上がっていた魔法陣を見つけることができない。
絶望が心に落ちてくる。
うわぁぁぁぁぁぁ。
許してくれ……私は叫び続けた。
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