第10話
☆☆☆
今日1日の授業は頭に入っている。
3時間目は体育の授業で、女子生徒はグラウンドで持久走をやるはずだ。
着替えは外のロッカールーム。
恵一が今日一番狙っているのはそこだった。
だけど仮面をつけた恵一が最初に向かったのはB組の教室だった。
教室内から先生の話し声が聞こえてきて、周囲はとても静かだ。
換気のためか廊下側の窓が少しだけ開けられていて、そこから覗き込めば教室内の様子がわかりそうだ。
しかし、窓の向こうにはすぐに生徒の席があり、近づけばバレてしまう。
普段の恵一なら決してこんな危険なマネはしないだろう。
だけど今は違った。
仮面をつけた恵一はプロの盗撮魔なのだ。
体は勝手に動き、ほしい写真を手に入れてくれる。
開いている窓の下に身を屈めて恵一は息を潜めた。
そっと確認してみると一番近くにいる生徒は机に突っ伏して寝息を立てている。
これはチャンスだ。
恵一の右手が勝手にデジタルカメラを取り出し、窓の隙間から教室内を移し始めた。
リナの机は中央あたりだから、それまでに生徒たちの机が障害として立ち塞がっている。
更に恵一は自分の目ではカメラを確認していないので、どんな写真が撮れているのかもわからない。
それでも恵一は自分の体が動くがままに任せていた。
そして5分ほど写真を撮影すると、体は勝手に近くのトイレへと駆け込んだ。
うまく撮れているだろうか?
仮面を取り、はやる気持ちを抑えきれずに恵一はデジタルカメラの保存写真を確認した。
その中にはしっかりとリナの授業を受ける姿が保存されていた。
リナは右手にシャーペンを持ち、小首をかしげて先生の話を聞いている。
いつの間にかアップでも撮影していたようで、それははっきりとリナだとわかるように撮影されていた。
「すごいぞこれ」
思わず興奮した声が漏れて、慌てて右手で自分の口を塞いだ。
同じクラスになってからリナのこういう姿は幾度となく見てきている。
しかし、写真に収めたことは一度もなかった。
そんなリスクの高いことできないからだ。
このレアな写真を撮れただけでも恵一は興奮していた。
だけど今日の目的はこんなもんじゃない。
体育の授業はまだ先だ。
それまで休憩していよう。
恵一はそう考えてトイレを出たのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます