第11話

中庭のベンチで仮眠をとっていた恵一は2時間目の授業が終わったチャイムで目を覚ました。



すぐさま男子トイレに駆け込んで個室に鍵をかける。



「頼むぞ」



仮面へむけて声をかけ、それを顔につけた。



つるりとした仮面が肌に吸い付いてくるのを感じる。



それはとても心地よく恵一と一体化していくような感覚だ。



このまま仮面と一緒になってしまってもいいと思うくらいだが、それでは普段の生活がままならなくなってしまう。



仮面をつけた恵一はまた自分の行動に身をゆだねた。



仮面は自分の思考回路を読んでいるかのように、勝手に体を動かしてくれる。



自分が次になにをしたいのか言葉で伝える必要がないのはとても便利だった。



足は勝手に外へ向かい、女子更衣室へと向かう。



その間もメインのルートではなく遠回りをして生徒たちに見つからないようにしていた。



「いいぞ、その調子だ」



そんな言葉が口をついて出て、恵一は自分の口を塞いだ。



昨日は悲鳴も出すことができなかったのに、今は自分の意思で言葉を出すことができた。



一瞬混乱したが、すぐに冷静さをとり戻す。



もしかしたら回数を重ねるごとに自分の意思も反映されるようになるのかもしれな

い。



最初のときは恵一も驚いて悲鳴をあげてしまいそうになったから、牽制の意味があったのかも。



そう考えることにした。



なにせこの仮面は人間の想像を超えたものだ。



そのくらいのことができても、もう不思議だとは思わなかった。



そうこうしているうちに気がつけば女子更衣室の裏へ到着していた。



小さな窓の向こうからは女子生徒たちの明るい話声が聞こえてくる。



この窓も換気のために少しだけ開けられていたが、天井付近なのでとても手は届かない。



すると恵一の足は更衣室を隠すように植えるられている生垣へと向かった。



生垣の中に両手を突っ込み、なにかを探している。



指先に触れたそれを両手で引っ張り出してみると、赤色のブロックだった。



生垣の奥には花壇が作られていて、それに使われているものと同じだとすぐにわかった。



きっと余分に持ってきてしまったものをここに放置したのだろう。



けれどそんなこと恵一は知らなかった。



この仮面は恵一よりももっとこの学校について詳しいようだ。



ともあれ、このブロックに乗って手を伸ばせば窓の中を撮影することができそうだ。



恵一はブロックを縦に置き、その上に足を乗せた。



バランスをとりながらブロックの上で背伸びをし、手を伸ばす。



カメラを少し斜め下に向けてシャッターを切る。



更衣室にいる女子たちは外で起きている異変に気がつくことなく、いつまでも明るい声を響かせていたのだった。


☆☆☆


外のトイレに身を潜めた恵一は再びデジタルカメラの写真を確認した。



そこにはついさっき撮影したばかりの女子更衣室の様子が写っていた。



ロッカーに向かって立つ女子生徒たち。



その大半が下着姿だった。



恵一は生唾を飲み込んで次々と写真を確認する。



いた、リナだ!



リナは更衣室の真ん中のロッカーの前に立っていて、カメラには背中を向けた状態でブラウスを脱いでいるところだった。



ブラウスが肩から外され、白いキャミソールが見えている。



また唾を飲み込んで、写真を送る。



次に写っていたのはブラウスを脱ぎ、スカートを半分ほど脱いでいるリナの写真だった。



白いフリルのついたショーツに体が熱くなっていくのを感じる。



他の女子生徒たちの下着姿も一緒に移っていたが、恵一にはリナの姿しか見えていなかった。



形のいいヒップがこちらへ向いていて、手を伸ばして触れたくなってしまう。

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