第25話 初めてのカップルと慣れた二人

   ◆和樹said◆



 祈織が行ってしまった。

 どどど、どうしよう。このまま一人で中に入るの? ちょ、待って祈織、一緒にいて! なんなら見守ってて!

 ちゃんと水を飲んだのに、緊張で口がパサパサする。俺、こんなにチキンだったか……?

 呼吸が浅く、早くなる。

 お、落ち着け。大丈夫。童帝の妄想力を侮るなよ。俺だって、やる時はやる……!

 扉に手を掛け、気合いを入れるように息を吐き……開いた。

 部屋の中から香る、独特のお香の香り。多分、仲居さんが気を利かせて焚いてくれたんだろう。

 そして、一枚の布団に二つの枕。

 その上に正座し、緊張した様子の明日香がいた。



「お、お待たせ……」

「う、ううん。大丈夫……です……」



 なんとなく無言が気まずく、思わず顔を背けてしまう。それは明日香もだろう。手をもじもじさせ、下を見ている。

 どうすればいいかわからず立ち尽くしていると、明日香が口を開いた。



「は、早く、こっち来なさいよ。……レディを辱めるのが好きなの?」

「わ、悪いっ。い、今行く。行きます……!」



 ガチガチの緊張状態。まるで、自分の体じゃないんじゃないかってくらい、思うように動かない。

 明日香の前に正座し、お互い向かい合う。

 湯上り明日香……色っぽすぎる。

 それに、浴衣の上からでも分かるくらい乳もでかいし、帯紐で腰のクビレもよく分かる。

 こうしてみると、浴衣って体のラインが凄く出やすいよな。ごくり。



「……今日、するんだよ……ね?」

「あ、ああ。おおお、俺に任せとけっ。ちゃ、ちゃんとやるから……!」

「……あー、なるほど。本当に言ったわ」

「……え?」



 え、何? どゆこと?

 明日香はやれやれと首を振ると、仕方ないなぁとでも言うように困ったような笑みを零した。



「雫からね、聞いたのよ。お互い初めて同士だと、男の子の方がリードしたがります。ちゃんとやらないと後々に響くから、ってね。カズくん、そう思ってたでしょ」

「うぐっ」



 さ、流石雪守さん。鋭い……。

 その通り。エッチは男が誘導して、先導して、リードして……そんなことばかり考えていた。

 お互い、童貞と処女だぞ。なら男が覚悟を決めてやるべきなんじゃないか?



「雫が言っていたわ。エッチは、男と女の共同作業だって。どっちかに任せっぱなしにしてもダメ。協力して、お互いが気持ちよくなるよう全力を尽くすって」



 明日香は立ち上がると、帯紐を緩め──その艶かしい肢体を露出した。

 純白の肌に、黒い下着姿。しかもこの下着、かなり薄い。薄すぎて全部丸見えだ。



「ちゃんとやるからって思わないで。私を気持ちよくさせようって思わないで。……一緒に、気持ちよくなるの」

「……ごめん、明日香……俺、間違ってた」

「ん、よろしい」



 浴衣を脱ぎ、明日香は微笑みを絶やさず俺の傍による。

 俺も浴衣を脱ぎ、パンツ一丁になって立ち上がった。

 さっきまで友達四人でいた場所に、今は男と女として二人きり。しかも半裸で向かい合う。

 生唾を飲み込み、手を伸ばしていいかどうか迷っていると、明日香が近付いて俺の体に抱きついてきた。



「抱き締めて」

「ぅ……こ、こう、か……?」



 明日香の体に腕を回す。

 そうして抱き締めると……本当に線が細い。遺伝子構造が本当に俺と同じなのか怪しいくらい。

 その割には俺の胸板で歪むでかでか乳が柔らかすぎるし……すごく、興奮する。



「カズくん……一緒に気持ちよく、なろ」

「……ああ。明日香、一緒に──」



   ◆祈織side◆



「向こうは、そろそろ終わった頃ですかね」

「さあ、どうだろうな」



 ゴムを全部使い切り、一旦休憩の為に二人で寄り添って横になっていた。

 回数の視覚化……雪守の目論み通り、いつも以上に興奮した感は否めない。雪守もノリノリだったし。

 が、凄くもどかしいというか、ストレスが溜まるというか……今一歩快楽の頂点に達しない。そんな感じだった。



「明日の朝、二人の顔を見るのが楽しみですねぇ」

「そうか? 友達がヤったと知った後に顔合わせるの、気まずくない?」

「何をおっしゃいます。ここまでお膳立てしたんですよ。むしろ鑑賞くらいさせて欲しい気分です」

「いやそれはどうかと思う」



 友達カップルがヤってるところを鑑賞って、どんな地獄だ。多分死にたくなるぞ、俺。



「さあ、続きしましょうか」

「ゴムないけど」

「さっきまでのが前菜。ここからがメインディッシュですよ。足りないでしょ、初瀬くん」

「雪守には隠せないか。でもそれ、お前もだろ」

「えへへ。ちょっと物足りないですね、やっぱり」



 思った通り、雪守もちょっとストレスを感じてたみたいだ。

 でも、ある意味で究極の焦らしみたいな感じになっている。お互い我慢が効かない状態だ。

 俺は雪守にキスをすると、雪守も応えるようにキスを返してきた。




 朝方でやったせいで、そこから爆睡して四時間。十時に起きた。



「結局、いつも通りの時間だなぁ」

「予定が狂ってしまいましたね」

「誰のせいだと?」

「…………」



 顔背けんなコラ。

 地下部屋を出て、和樹と東堂のいる最初の部屋に向かう。

 外から何回かノックをして反応を待つが……あれ、何も返ってこないな。



「おーい、和樹ー?」

「明日香ちゃん、起きてますかー?」



 …………。

 返事がない。寝てんのか?



「仕方ない。風呂行ってるかもしれないし、そっちに──」

「お邪魔しまーす」

「おいコラ勝手に入んな……!」



 普通そっとしておくだろ! ちょ、本当に入ってった!?

 流石にまずいと思って雪守の腕を掴むが、時すでに遅し。

 部屋の中で、抱き合って寝ている二人を見てしまった。──全裸で。



「幸せそうですねぇ」

「いや気まずい。すげー気まずい」



 和樹の全裸なんて見飽きてるが、東堂の全裸はやばい。雪守もそうだが、本当に高校生ですか?



「い、いいから行くぞっ。風呂入ってスッキリしようぜ」

「え? 風呂、で、スッキリ?」

「風呂、に、入って、スッキリだばかたれ」

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