15
「じゃ、あたしは子どもたちを警察に引き渡して、迎えが来るまで一緒にいるから」
リンは2台目の
「お前、ドンパチしたんだろ? 救急車で診てもらえ」
ケンのどすの利いた声が響く。リンも聞こえてたらしく、振り返ることなく手を振って答えた。
「ケンさんと隊長って仲がいいっすね」
「ああ、戦友だったからな」
「あの戦争の?」
「ああ」
「ふうむ、陸自が戦ったとなると、
しかしケンは返事の代わりに死体袋をジュンに押し付けた。
「さてな。公式発表にはそういうのはなかったはずだが」
「あれれ、でも俺、聞きましたよ。5年前、俺、大田区の避難所警備をやってたときに」
「現場の写真を撮って、さっさと死体を持って帰るぞ。本社から催促が来てるんだと。本社の保安部連中、耳の速さだけは天下一品だな」
ケンは意に介さず/ジュンのとりとめもない噂話の対応=いつもどおり。
「ホントっすね。仕事熱心と言うか。あっ、天下一品といえば、あとで食べに行きましょうよ」
「あぁん? 24時間やってんのは無人店舗のほうだろう。あそこぁ、まずいからなぁ」
ケンは記録用のタブレットを両手に持つ。
「チェーン店なんて、無人だろうが有人だろうが味は変わんないっすよ」
「ばかいえ、ロボットが作ったラーメンなんてカップ麺と変わんねぇだろうが。これだから現代っ子は」
「うへぇ、ラーメンへの熱意、感服っす」
ジュン=慇懃に。
ケンが先に死体の回りをぐるりと回り、デジカメで死体を写真に収めていく。
「うわぁ、顔、ほとんど残ってないじゃないっすか」
「銃創ってのはだいたいこんなもんだ」
「胸に、1,2,3発。頭は、うーん、原型がないからわからないっす」
「3発。あと側頭部に1発だな。出血量から致命弾はこっちだな、さっきリンが言ってた。確実に相手を殺す場合、胸と頭に3発ずつ打ち込むんだ。さすがの魔法使いでもここまで弾丸を食らえば、ひとたまりもないだろうな」
ケンは講釈を述べると、デジカメの画像を確認した。高彩度+高画質で細部まで肉片がきっちり残っている。その他、所見をタブレットへ書き込む。
「やっぱ、俺たちも、人、殺すんっすかね」
「ああ。保安部のお偉方も、これからは怪異より能力を悪用する魔法使い対策に重きを置いているようだからな」
「うえ、やっぱり」
「んあ? 撃ちたくないのか」
「やるときはやるっす。こうみえて元SATなので。でも初めてのときはどうなのかな、って思って。ケンさんは、撃ったことあるんすよね」
「ああ、まあ。俺“は”少しだけだがな」
「ふーん」
「だべってないで人払いしろよ。ほらあそこ、野次馬がいるだろ」
「はーい、了解っす」
ジュンは死体袋を脇に置くと、
「あー、えっと、すんません。常磐のものですー。今、事件の捜査とかいろいろやってるんで、下がってもらっていいっすか」
しどろもどろ/慣れない口調。強く言うべきかどうか迷って言葉がまとまってない。
しかし、その野次馬は動こうとしない。
「あのー。いちおー法律でもこういう場合は警察と同じ扱いなんで。動いてもらわないと強制執行もありうるんすけど」
「──どこ」
「へ?」
「私の、首、どこ?」
その人影/女/肩から上が何もなかった。
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