第45話 プライベートの神崎さんも知りたいし
次の日。
早苗と茜は今日も二人で学校に向かう。
今日も相変わらず曇り空で、空気がジメジメして不快指数が高い。
第一ボタンを開けていてもむしむしする。
「おはよう神崎さん、武田さん。クッキーはどうだったかな? お口に合ったかな」
「おはようございます飯島先輩。はい、とてもおいしかったです」
「おはようございます飯島先輩。おいしくいただきました」
「それは良かった。二人の口に合って」
昇降口でミチルと渚に会う前に密樹と出会う。
密樹はいつものように笑顔で二人に話しかける。
茜も早苗も昨日のクッキーがおいしかったことを伝えると、さらに密樹は嬉しそうな表情を浮かべる。
「……早苗。今は大丈夫?」
「……うん。でもやっぱり少しモヤモヤする」
「どうしたんだい二人とも。なにかあったのかい」
昨日早苗は茜に密樹と茜が話しているとモヤモヤしたり息苦しいと相談していたので、茜は早苗のことを気遣って声をかけてくれる。
昨日よりは悪くないが、やはり密樹といるとやはりモヤモヤしたり息苦しさを感じる。
密樹も二人の様子がおかしいことに気づき、心配そうに声をかける。
「い、いえ、だ、大丈夫です。なんでもありません」
「それなら良いんだけど、もしなにか困ったことがあったら相談してくれ。これでも生徒会長だからな。話を聞くぐらいはできるし話すだけでも楽になるからな。もちろん相談された内容は誰にも話さないから安心してくれ」
さすがにこれは密樹には話せない内容だったので、早苗は言葉を詰まらせながら誤魔化す。
密樹の反応を見るに早苗の言っていることが嘘だと気づいているが、無理に聞き出すことはしなかった。
これも密樹の優しさなのだろう。
それが今の早苗には嬉しかった。
「せっかく今会ったから神崎さんに渡したいものがあったんだが良いかな」
「はい、なんですか」
「明日は土曜日だろ。せっかくだから二人で出かけないか。もし、明日予定があるなら全然断って良いんだ。だけど私は神崎さんとお出かけをしてみたい。プライベートの神崎さんも知りたいし」
話を変えるかのように密樹はカバンの中から二枚の紙切れを取り出す。
それは遊園地のチケットだった。
つまり、密樹は茜をデートに誘ったのだ。
表情はいつも通りクールな表情を浮かべているが、足や声の震えを聞くと緊張していることが伝わってくる。
「良いですね。あたしもプライベートな飯島先輩は知らないのでぜひ、行きましょう」
「そうか、それは良かった~。急に誘ったから断られるかと思ったが、断られなくて本当に良かった~」
茜も乗り気みたいで、二つ返事で承諾した。
断られるか不安だった密樹は、安堵の表情を浮かべている。
やっぱりだ。
やっぱり二人が仲良さそうに話しているとモヤモヤして、胸が苦して痛い。
もうこれ以上、二人を見ていることができない。
「茜ちゃん、先教室に行ってるね」
「えっ、早苗」
早苗はその場から逃げ出すかのように、その場から離れる。
茜は早苗を引き留めようとするものの、早苗は歩みを止めなかった。
「最近武田さんの様子がおかしいよね」
「はいそうなんですよ。昨日も聞いたんですけど原因が分からなくて」
「そうなんだ。それは心配だね」
「なにかできることがあれば良いんですけど。早苗は大切な幼馴染なので」
後ろの方で密樹と茜がなにか話しているが、モヤモヤしすぎているせいで早苗の耳に会話内容は入ってこなかった。
その後、二人の視線から離れるところまで離脱すると、壁に腕を押し当てそこに目を当てる。
「どうしてこんなに胸が苦しいの。今までこんな気持ちになったことないのに」
早苗のダムは決壊し、涙があふれ出す。
早苗の口からは慟哭だけが漏れ出ていた。
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