第44話 また抱きしめてあげるから
「……分からない。でも最近ずっとモヤモヤするの」
「モヤモヤ?」
早苗は我慢できずに悩みを吐露する。
抽象的すぎる悩みのせいで、幼馴染の茜も首を傾げる。
「どんな風にモヤモヤするの」
「なんか息苦しいというか、茜ちゃんと飯島先輩が仲良く話しているとなぜかモヤモヤするの。二人が仲良くなる度に、胸が苦しくなる」
「胸が苦しくなる? どうしてだろう。今も苦しい?」
「うん、少し苦しい」
今度は具体的にどんな風にモヤモヤするのか説明する早苗。
なぜか分からないが密樹と茜が話しているのを見ると胸がモヤモヤして苦しくなる。
茜に相談するものの、なぜモヤモヤしたり胸が苦しくなるのか分からず首を傾げる。
「それならこれで少しは楽になるかな」
そう言って茜は真正面から早苗のことを抱きしめる。
茜の二つの膨らみが服越しに伝わってくる。
男の娘とは違う、柔らかくて温かい茜の体。
不思議なことに、どんなに嫌なことがあっても辛いことがあっても茜に抱きしめられると体の内側から浄化される。
「うん。楽になった」
「それは良かった。もしまたモヤモヤしたり胸が苦しくなったら言って。また抱きしめてあげるから」
「ありがとう、茜ちゃん」
早苗が楽になると、安堵したのか茜も嬉しそうな表情を浮かべる。
「でも原因が分からないと大変だよね」
「そうだね。茜ちゃんと飯島先輩が話しているとモヤモヤしたり胸が苦しくなるのは分かるんだけど、なんでそうなるのと言われると分からない」
「う~ん、難しいね」
茜の言う通り、今は茜が抱きしめてくれたから症状は収まっているが、原因が分からないことには根本的な解決にはならない。
早苗もモヤモヤしたり胸が苦しくなるタイミングは分かるのだが、その原因までは分かっていなかった。
この時、早苗も茜も自分たちが鈍感なことに気づいていない。
「もしかしたらミチルや渚に相談すれば、なにか分かるかもしれない」
「そうだね。ミチルちゃんや渚ちゃんにも相談してみるよ」
二人で早苗がモヤモヤする理由を考えたのだが、結局なにが原因なのか分からなかった。
だから明日、二人はミチルたちに相談することにした。
その後は別々にお風呂に入り、同じ部屋で寝た。
こんなにも近くに茜がいるのに、最近遠くに感じるのはなぜだろうか。
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