第14話 全く、新聞部もよっぽど暇なようね
次の日。
早苗と茜はいつも通り手を繋いで登校する。
「なんだろうあれ」
「さぁ? 見に行こうか」
昇降口で上履きに履き替え廊下を歩いていると、掲示板前にたくさんの生徒が群がっていた。
掲示板になにが書かれていたのか分からないが、群がっている生徒はみな驚いた表情を浮かべていた。
こんなにも多くの生徒が群がり驚いているのだからただ事ではないだろう。
生徒たちがなにに驚いているのか気になった二人は手を離さずにその生徒の集団の中に突入する。
「「えっ……」」
集団の一番前に辿り着いた二人は生徒たちが見ていたものを見て絶句した。
それはいわゆる新聞部が出している校内新聞なのだが、その新聞の内容が酷かった。
「あれって武田さんと神崎さんだよね」
「ホントだー。今日も手を繋いでいるわよ」
「でも付き合っていないんでしょ。本人見ても信じられなーい」
早苗と茜に気づいた生徒たちはキャーキャー騒ぎ出す。
「全く、新聞部もよっぽど暇なようね」
「まさか私たちが付き合っていないだけで校内新聞に取り上げられるなんてなんかビックリ」
簡単に説明すると、その校内新聞は早苗と茜は実は付き合っていなかったという内容だった。
ちなみにタイトルは『学校一のお似合いカップルは実はただの幼馴染? 二人はカレカノじゃなかった!』だった。
茜は頭を抱えていて、なんだか怒っているようだた。
逆に早苗は自分たちのこと校内新聞に乗って、テンションが上がっていた。
「なんなの、この人混みは。全然掲示板が見えないじゃない」
「それじゃーボクが見るよ。なになにどうやら早苗と茜のことが校新聞に載っているようだね。新聞部が校内新聞を号外で出すぐらい、二人が付き合っていなかった事実は衝撃的だったようだね。実際、友達のボクたちですら驚いたしね」
ここで学校に登校して来たミチルと渚も合流する。
ミチルは身長が低すぎるため、掲示板が見えなくて怒っている。
それを見た渚がミチルのために、掲示板に書いてある内容を読み上げる。
「武田さんと神崎さって本当に付き合ってないの」
「うん。私と茜ちゃんは付き合ってないよ。ただの幼馴染だよ」
「うっそー。今二人に確認したらやっぱり付き合ってないってー」
隣にいた女子生徒に二人の関係を聞かれた早苗は、素直に事実を答える。
それを聞いた女子生徒は、やっと二人が付き合っていないことを信じられたらしく、大声でみんなに伝える。
大声でそんなことを叫ばれると早苗だって少しは恥ずかしい。
「もうなにが書いてあるのか分かったことだし、行くよ早苗……あたしたちは見世物じゃない」
「う、うん」
いつも通りクールな茜だったが、声がいつもより鋭かったので幼馴染の早苗だけは茜が怒っていたことに気づいた。
早苗も茜の気持ちを尊重し、茜と一緒に手を繋ぎながらその場から離脱した。
早苗の手を引っ張る茜は怖い表情をしていて、引っ張られた手は少し痛かった。
「どうしたの茜ちゃん。そんなに怖い顔して。もしかしてあの新聞嫌だった」
「うん。結構嫌だった。なんか見世物にされた気分だったから」
人気がいなくなったところで、早苗は茜が不機嫌な理由を聞く。
早苗の想像通り、あの新聞が不快だったから機嫌が悪くなったらしい。
茜は不機嫌さを隠さずに、早苗にぶつける。
それぐらい、茜は早苗を信頼している証でもあった。
「そうなんだね。でも別に私たちは私たちなんだし、校内新聞が嫌だったら無視するのが一番だよ。それに茜ちゃんの隣にはいつも私がいるから。なにか嫌なことがあったら私になんでも相談してね。幼馴染だから」
「ありがとう早苗。早苗もずいぶん大きくなったね」
幼馴染として早苗が茜を慰めると、茜は早苗を正面から抱きしめながら早苗の成長に感動していた。
「もうー、茜ちゃんはすぐ私を子供扱いするんだから。同い年なのに」
「同い年でもあたしは四月生まれで早苗は三月生まれだからついくせで。それに早苗は甘えん坊だし、そんな早苗も可愛いよ」
「もう茜ちゃんったら。……それはずるいよ……」
子供扱いされた早苗は茜に抗議するものの、その理由を聞いて納得した早苗は思わず照れてしまう。
今日も二人はラブラブだった。
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