第13話 でも茜ちゃん相手だと全く抵抗感がないんだよね

「でも茜ちゃん相手だと全く抵抗感がないんだよね」

「あたしも。他の異性はちょっと嫌だけど早苗は平気。早苗に裸を見られても恥ずかしくないし」

「私も茜ちゃん以外の異性に裸見られるのは抵抗感はあるな。でもなんで茜ちゃんだけは平気なんだろう」


 高校生になった今でも女の子の、異性の茜とお風呂に入ることに抵抗感がない早苗。


 それは茜も同じらしい。


 だが、早苗も茜もお互いだけが特別なだけであり、他の異性と一緒にお風呂に入って裸を見られるのは抵抗感があるし、それが倫理的にもしてはいけないことは二人とも分かっている。


「やっぱりそれはあたしたちが幼馴染だからだと思う。早苗が産まれた時からずっと一緒で、一緒に遊んだり一緒にお風呂に入ったり一緒に寝たりしてたから高校生になった今も、一緒にお風呂に入ったり一緒に寝たりするのに抵抗感がないんだとあたしは思う」

「なるほど。言われてみればそうかもね。なんかずっと二人でいるのが当たり前だったし」


 茜の説明はどれも納得できるものだった。

 産まれた時かたずっと二人一緒で、昔からよく一緒に遊んだりお風呂に入ったり寝たりしていた。


 そのせいか、高校生になった今も出早苗は茜にベタベタ甘えているし、一緒にお風呂に入ったり寝たりしている。


 それが早苗と茜にとっての当たり前のことだったからだ。


「でもミチルちゃんや渚ちゃんに私たちが付き合っていなかったことを驚かれて、私も茜ちゃんも他の異性とは抱き着いたり、一緒にお風呂に入ったり寝たりしないなら私たちの関係って一体なんなんだろう。これって幼馴染として普通なのかな」

「普通って人によって違うんだし、これがあたしたちの普通ならあたしはそれで良いと思う。早苗はあたしと一緒にお風呂に入ったり寝たり、甘えたりするのは嫌なの」

「嫌じゃない。好き」

「ならそれで良いじゃん。あたしも嫌いじゃないし、むしろ好きだよ」


 だが、その当たり前が早苗の中で崩れ落ちそうになる。


 改めて考えるとこれは茜だからできることであって、他の異性に抱き着いたり一緒にお風呂に入ったり一緒に寝たりすることなんてできない。


 そんなことをしたら、普通に怒られる。


 だから異性とこんなことをしたらダメだとは早苗も分かっている。それと同時に、異性の茜にはその抵抗感がない。


 ここで初めて他の異性と茜は違う存在だと自覚する。


 今まで普通だと思っていた茜との関係性が怖くなった早苗は茜に恐る恐る自分の気持ちを吐露すると、茜は優しい表情で二人の関係を肯定する。


 そのおかげで早苗の気持ちも楽になる。


「全く、早苗はすぐに不安になるんだから」

「だって~。しょうがないじゃん。そういう性格なんだから」

「大丈夫だよ。あたしはずっと早苗の隣にいるから。そんな不安にならないで」


 すぐに不安になる早苗に茜は姉のような優しい眼差しを向ける。


 早苗がすぐに不安になる言いわけをすると、茜が早苗に近づき早苗の膝の上に乗りながら早苗を抱きしめる。


 その優しくも逞しい声に、早苗の脳が蕩けそうになる。


 早苗の胸板に茜の乳房が押し付けられる。


 男の娘とは違う柔らかい感触に、早苗は安心感を覚える。


「ありがとう茜ちゃん。私もずっと茜ちゃんと一緒にいたいな」


 茜に抱きしめられた早苗も茜を抱きしめる。

 いつも早苗の隣にはずっと茜がいてくれた。


 これから先もそれがずっと続いていくものとばかり思っていた。


 それが早苗にとっての普通だから。


「そろそろ上がろうか早苗」

「そうだね。茜ちゃん、大好き」

「もう何回言うのよ。分かってるよ。あたしも好きだよ」


 湯船から上がるために立ち上がった茜に早苗は素直な自分の気持ちを伝える。

 何度も早苗に好きと言われて呆れているのと同時に照れている茜も素直に自分の気持ちを伝える。


 やっぱり茜の隣が一番心地良かった。

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