第12話 でも確かに、抱き合ったり一緒にお風呂に入ったり一緒に寝たりとかは、他の異性とはしないよね

「茜ちゃんの髪って長いから結構重いよね」

「そうだね。長いと洗うの重くて大変だし、乾かすのも大変」

「私も結構長い方だから分かるよ。でも私はこのぐらいの長さの方が好きだから我慢して手入れするしかないよね~」

「お互い頑張ろう。私も今の髪型が好きだし。前に一度ショートにした時があったけど、なんか落ち着かなかったな。なんかスースーして」

「あの時は本当にビックリしたんだよ。いきなり四十センチ以上短くなっているし」

「あの時の早苗は本当にビックリしてテンパってたよね」


 髪を洗いながらお互い、髪が長いと髪を洗ったり乾かしたりするのが大変だと愚痴り合う。


 でも早苗はこのぐらいの長さの髪型が好きだったし、茜も同じく今の髪型が好きだった。


 だからそれぐらいは我慢するしかない。


 だけど一度だけ、茜がショートヘアになった時は幼馴染の早苗もビックリした。


 ショートヘアの茜を見るのはあれが初めてだったし、なにかあったのかなと当時は思ったが、ただたんに髪を洗ったり髪を乾かすのが面倒にだったかららしい。


 だが、ショートヘアは短すぎて落ち着かなかったらしくロングヘアが好きだったこともあり、その後は髪を伸ばし続け、今の髪の長さに落ち着いた。


「短い髪の茜ちゃんも好きだけど私は長い髪の茜ちゃんの方が好きかな」

「あたしも長い方が好き。洗ったり乾かすのは面倒だけど」


 ショートヘアの茜もロングヘアの茜もどっちも茜であることは変わらないのだが、やはり見慣れたロングヘアの茜の方が早苗は好きだ。

 それは茜も同じらしく、面倒だと愚痴るもこの長さを気に入っているようだ。


「でも髪が長いから、長い間早苗に髪を洗ってもらえるから幸せだよ」

「ん~、茜ちゃ~ん。可愛い~し嬉しい~」


 茜のクールで甘い言葉に早苗の胸を撃ち抜かれる。

 嬉しすぎて早苗は茜の背中に抱き着いてしまう。


 柔らかく丸みは帯びているものの、しっかりしている茜の背中。


 やっぱり茜の背中は最高に心地が良い。


 その後、茜の髪を洗い流し終えると、早苗が風呂椅子に座りその後ろで茜が膝立ちをする。


 今まで茜が座っていたので、まだ茜の体温が風呂椅子に残っている。

 早苗も茜同様、予洗いをしてから髪を洗い始める。


「ん~、茜ちゃんの洗い方って気持ち良いよね」

「ありがとう。凄く嬉しい」


 頭皮を茜に指圧されるたびに、気持ち良さが体全体に広がっていく。

 茜の指の柔らかさに加え、痛くないギリギリの力で頭皮を刺激してくれるのでまるでヘッドスパを受けているような気分だ。


「早苗もあたしほどじゃないけど、洗うのとか乾かすの大変よね」

「そうだね。でも私もこの髪が好きだから。洗ったり乾かすのは本当に面倒だけど」


 その後も茜と雑談しながら、早苗の髪は洗われていく。

 寝そうになるぐらい、茜の髪の洗い方は気持ちが良い。


「それじゃー流すよ」


 シャンプーを流すためにシャワーを取ろうとする茜。

 その時、茜の体勢が前かがみになったことにより、茜の胸が早苗の背中に押し付けられる。


 二つの柔らかい感触と二つのコリっとした硬い感触が早苗の背中に伝わってくる。


 男の娘とは違う女の子の柔らかい胸の感触に、脳が蕩けてしまうほど気持ちが良かった。


 その後、髪を洗い終えた二人は各自体を洗い、髪が湯船に浸からなうように結んでから湯船に浸かる。


「あたたか~い」


 湯船の温かさが冷えた体に染みわたる。

 早苗は思わず気持ち良さそうな声を出してしまう。

 それを早苗の対面に座っている茜は穏やかな表情で見ている。


「どうしたの茜ちゃん。そんなにニコニコして」

「だって気持ち良さそうにしている早苗が可愛かったからつい、頬が緩んじゃった」

「もう~、茜ちゃんたら~。そういう茜ちゃんも可愛いよ」


 なにか楽しいことがあったのか気になった早苗は茜に質問すると、茜は恥ずかしがる素振りを一切せず、素直に答える。


 茜の素直な気持ちを受け取った早苗は嬉しくて照れてしまう。


 本当に茜は可愛い女の子である。


 こんなに優しくて可愛い幼馴染が隣にいる人生を送れて、早苗は本当に幸せ者である。


「照れた早苗も可愛い」


 照れた早苗も茜からすれば可愛いらしく、さらに頬が緩む。


「まさか私たちがカップルに間違われてるとは思わなかったよね~」

「そうだね。しかもミチルや渚までも勘違いしてるとは思わなかった」


 今朝、ミチルと渚が付き合い始めたということもビッグニュースだったが、それと同じぐらい早苗と茜が付き合っていると勘違いされていたこともビッグニュースだった。


 それに加え、親友のミチルや渚までもが勘違いしていたことも驚きだった。

 早苗と茜は仲の良い幼馴染というだけであり、恋愛感情もなければ告白したことも付き合ったこともない。


「そんなに私って茜ちゃんとイチャイチャしてたかな」

「どうなんだろうね。あたしはしてないと思うけど。けど、他の人からするとイチャイチャしているように見えたんだろうね」


 早苗は別に茜とイチャイチャしている認識はなかった。


 ただ幼馴染として仲良くしているだけである。


 でも他の人からはイチャイチャしているように見えたらしい。


 不思議である。


「でも確かに、抱き合ったり一緒にお風呂に入ったり一緒に寝たりとかは、他の異性とはしないよね」

「……言われて見れば確かにそうだよね。私も茜ちゃん以外の異性には抱き着かないし一緒にお風呂に入ったり寝たりしないね。っていうかできないよ」

「あたしもそんなことはできないし、いきなり抱き着いたら相手に迷惑だもんね」


 だが、ミチルと渚に指摘されたおかげで気づけたこともある。


 それは、相手が異性にも関わらず抱き着いたらお風呂に入ったり寝たりできるのは、茜しかいないということだ。


 それは茜も同じらしく、異性とこんなことできるのは早苗だけらしい。

 そもそも早苗だってもう高校生なので、異性に勝手に抱き着くのはマナー違反だし、異性とお風呂に入ったり、一緒に寝たりするのはいけないことだと分かっている。

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