第10話 それはボクも照れるかな

「茜のショートケーキって甘いね」

「でしょ~。凄く甘くておいしいの。もし良かったら茜ちゃんのチョコケーキも一口ちょうだい」

「いいよ。はい、あーん」

「あ~ん。おいしい。チョコケーキって甘さの中にほんのり苦みがあってそれがアクセントになっていておいしい」


 自分と同じものを茜と共有できた早苗は茜のものも茜と共有したくなったので、チョコケーキを一口、おねだりする。


 茜は嫌な顔一つせず、自分が使っていたフォークで早苗にチョコケーキを食べさせ、早苗はニコニコ顔になる。


 そんな早苗の笑顔を見た茜もまた笑顔になる。


「ミチルもしてみる?」

「はっ、べ、別にしたいとは言ってないわよ」

「ボクはミチルとしたいかな。ミチルの彼女だもん。ミチルはしたくないの」

「……したい」


 二人のあーんを見て、ミチルは物凄くやりたさそうな表情を浮かべる。

 それに気づいた渚が提案すると一度は照れ隠しで断るものの、渚の甘い追撃にミチルは陥落する。


「それじゃーミチル。あ~ん」

「あ~ん。おいしい。……ってなにジロジロ見てるのよ。恥ずかしいじゃない」

「だってミチルちゃんたちも見てたじゃん。それに甘々な二人を見てるとキュンキュンしちゃう」

「あたしたちのも見てたんだからお相子でしょ。照れてるミチルは可愛かったよ」


 渚にあ~んしてもらったミチルはとても幸せそうな表情を浮かべていたが、それを早苗たちに見られていたのが恥ずかしかったらしく、文句を言う。


 文句を言われた二人は全く気にすることなく、幸せそうな二人を見て二人も幸せになっていた。


「それじゃー次はボクにしてほしいな」

「もちろんよ。それじゃー行くよ」

「うん。あ~ん……ってあれ、どうしたのミチル」

「いや……口を開けてあ~んしてる渚が可愛かったからつい、見とれちゃった」


 攻守交替? して次はミチルが渚に食べさせる。


 渚は口を開けてミチルが食べさせてくれるのを待っていたが、なかなかミチルが食べさせてこない。


 不思議に思い渚がミチルにそれを尋ねると、口を開けてケーキを待っている渚に見とれていたらしい。


「それはボクも照れるかな」


 これには滅多に照れない渚も照れてしまう。


「これは良いものを見たね早苗」

「うん。渚ちゃんが照れるのって初めてじゃない。凄く新鮮だった」


 滅多に照れない渚の照れ顔を見た茜と早苗は不覚にもギャップ萌えをしてしまった。


「次はちゃんとお願いね」

「分かってるわよ。あ~ん」

「あ~ん。ミチルのレアチーズケーキもおいしいね。いや、ミチルに食べさせてもらったからおいしいのかな」

「……馬鹿。……けど嬉しい」


 今度こそミチルにあーんをしてもらった渚はおいしそうにレアチーズケーキを食べる。


 その時に素でイケメンなことを渚に言われたミチルは思わず照れ隠しで暴言を吐く。


 そんなミチルも可愛いと早苗は思った。


 楽しい時間はあっという間で気づいたら午後七時を超えていた。

 今日はこれでお開きということになり、四人は帰路につく。

 ミチルと渚の初々しくもラブラブな姿を見れた早苗は大満足だった。

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