第9話 馬鹿にしないでよ

「甘いわ。甘いわ茜ちゃん。あぁ~胸がキュンキュンしちゃう」

「そうだね。初々しい二人の告白を聞いて、あたしも胸がキュンキュンしちゃった」


 二人の恋バナを聞き終えた早苗と茜は、二人の甘さに悶えていた。

 告白したことも告白されたこともない早苗だが、告白し付き合った二人を見て、今幸せなことだけは十分に伝わってくる。


 二人の甘々な恋バナを聞いて興奮した早苗はさらに茜の腕を強く抱きしめる。


 二人が青春すぎて眩しい。


「……なんで二人がキュンキュンしてるのよ」

「……それは友達だからだよミチル。ミチルだって早苗と茜がお付き合いしてラブラブだったら嬉しいでしょ」

「……そうね。あたしが間違えていたわ。確かに二人が付き合ったらあたしも嬉しい」


 二人がミチルの恋バナを聞いて、キュンキュンしてる姿を見てミチルは不思議がる。


 その理由を渚が説明すると、ミチルも納得する。


 二人の甘々な恋バナを聞いて興奮していた早苗たちの耳には、ミチルたちの会話は聞こえていなかった。


「やっぱり告白は渚からだったんだね」

「最初に言おうとしてたのはあたしだし。馬鹿にしないでよ。緊張しちゃったんだからしょうがないじゃない。ホントは男のあたしから告白するべきだったと思うけど」


 茜にはミチルをいじったつもりはなかったのだがミチルは、いじられたと勘違いをし強い口調で言いわけを言う。


「別に茜はミチルをいじっても馬鹿にもしてないよ。ただ告白したのは渚からだったんだなと思っただけでしょ」

「うん。ごめんねミチル、なんか誤解させる言い方をしちゃって。ただ告白は渚からだったんだなと思っただけ」

「あたしこそごめん。告白したのが女の渚からだったから馬鹿にされたと感じちゃって。告白ってなんか男からのイメージがあったから」

「そんなことないよミチルちゃん。別に告白は男の娘からでも女の子からでも良いと思うよ。そこに性別なんて関係ないよ」

「早苗の言う通り。告白するのに性別は関係ないと思う」


 渚が茜の意図を代弁すると茜もミチルに上手く自分の意図が伝えきれていないことに気づき、反省する。


 そこでミチルも自分が勘違いしていたことに気づく。


 告白をするのに、男の娘も女の子も関係と早苗は思う。


 相手を好きになったから告白をする。そこに性別なんて関係ない。


 茜も早苗と同じ意見らしく、同調する。


「それにしても二人はもうカップルなんだよね~。カップルってどんな感じ? やっぱり今までと今は違う感じなの?」

「どんな感じと言われても、分からないというのが正直な感想ね。もちろん、渚とカップルになれたのは凄く嬉しいけどまだ実感がないというか、今はまだ友達の延長線って感じ」


 まだ誰とも付き合ったことがない早苗にとって、恋人という存在がいまいち分からない。


 それをミチルに聞いてみると、ミチルもまだ付き合ったばかりで実感がないのかミチルもいまいち分かっていなかった。


「でもこれからはミチルともっと関係性を深めいろいろなことをしていきたいとボクは思ってる。それは友達同士ではしないことも含めてね」

「渚もミチルにぞっこんなんだね」

「そうだよ。ボクはミチルにゾッコンだしメロメロだからね。いずれはエッチもしたいと思っている」


 彼氏の前で惚気る渚を見て、茜も頬が緩む。


 渚は本当にミチルのことを愛しているらしく、聞いている早苗の方が恥ずかしくなるようなことを言う。


 確かにエッチなことはいくら親しい友達同士でも普通はしない。


 早苗にも茜という家族のように親しい幼馴染がいるが、茜とエッチなことがしたいと考えたことは一度もなかった。


 つまり、渚にとってミチルは自分の全てをさらけ出せる特別な存在ということだ。


「馬鹿。そんなこと、面と向かって言われたら恥ずかしいじゃない」


 渚の惚気話を聞いたミチルは嬉しすぎて恥ずかしがる。


 そんなミチルを渚は愛おしそうに見つめていた。


 本当にお似合いなカップルである。


「早苗、ほっぺにクリーム付いてる」

「えっ、どこ? 茜ちゃん取って」

「全く、早苗ったら」


 その後も雑談しながらケーキを食べていると茜が早苗の頬にショートケーキの生クリームが付いていることに気づく。


 鏡がないのでどこに生クリームが付いているのか分からない早苗は茜に生クリームを取ってもらうことをお願いする。


茜はヤレヤレと言いながらも指で生クリームを掬い取るとそのまま口に含む。

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