第46話 ……私はなにを馬鹿なことを考えているんだ
「鈴木先輩の家ってここから近いですか」
「いや、急いでも十分はかかる」
「そうですか。でしたら私の家に寄ってください。あと二分で着きます」
「さすがにそれは北野後輩に悪くないか」
「別に大丈夫ですよ。それにこのままずぶ濡れですと風邪を引いちゃいますよ」
「……分かった。今回は北野後輩のお言葉に甘えさせてもらうことにするよ」
今、真希たちは全速力で走って家を目指しているがしばらく雨は止まないだろう。
幸いにも真希の家なら走って二分もあれば着く距離にある。
ここから急いでも十分かかるということは、ここからまだ距離があるということだ。
さすがに紗那にびしょ濡れのまま帰らせるのはしのびない。
真希が紗那のことを思い一時避難を提案すると、紗那は少し申し訳なさそうな表情を浮かべたが真希の好意を無下にするのは悪いと考えたようで、言葉に甘えた。
その後真希が住むマンションに辿り着いた真希たちは急いで家の中に入る。
「鈴木先輩はすぐにお風呂に入ってください。着替えとか私が用意しておきます」
「さすがにそれは悪い。家主の北野後輩を差し置いて入るのはできない」
玄関で真希が先にお風呂に入るようにと紗那を催促するとそれはできないと断られる。
真希的には自由に家の中を移動できる自分の方が後に入る方が色々と融通が聞くし、それに目のやり場も困る。
「ここは私の家なので鈴木先輩がお風呂入っている間に着替えとか用意できますし、家主の私なら勝手に家の物を使えるので、リビングで暖房をつけてバスタオルにくるまって暖をとることもできるので後からでも大丈夫です」
「そんなことしなくても北野後輩が上がるまでここで待ってるさ。あたしは体が強いからなにも問題がない」
「ホント鈴木先輩は馬鹿ですね。そのまま塗れた服を着ていたら風邪引きますよ。あぁー、もうーなんで鈴木先輩はデリカシーがないんですかね。私が言わないと分からないんですか。服が濡れてブラジャーが透けてるんですよ。だから気を使ったのに。凄く目のやり場が困るんです。……それに私は男の娘なんですからもう少し気を使ってください」
「気を使わせてすまない。ではあたしが最初に入らせてもらうよ。すぐに上がるからリビングで待っていてくれ」
玄関に入って紗那の方を見た時、真希はとっくに紗那の服が透けて青色の大人なブラジャーが透けていることに気づいていた。
それにここは真希の家なので自由に動けるし、家電も自由に使える。
だから先にお風呂に入るように促したのに、察しの悪い紗那はその真希の気遣いに気づいてくれなかった。
紗那も言われて気づいたのか、申し訳なさそうに謝罪する。
紗那が腕で透けた胸を隠そうとするものの、紗那の腕では隠しきれないほど紗那の胸は大きかった。
その後、紗那を脱衣所に案内をし、真希はまず着替えとバスタオルを用意し紗那が浴室に入ったことを確認し、着替えを洗濯機の上に置く。
もちろん、下着は新品である。
さすがに洗ったとはいえ、真希が履いた下着を紗那に履かせるのは紗那に失礼だ。
「着替えは洗濯機の上に置いときますので上がったらリビングに声をかけてください」
「分かった。なにからなにまですまないな」
「いえ。その代わりリビングは絶対開けないでくださいね。開けたらもう二度と口を利きませんから」
「……分かった」
「それと脱衣所の反対側が私の部屋なので、お風呂上がったらそこで待っていてください」
「分かった」
浴室にいる紗那にあれこれ指示を出してから、真希はリビングに向かう。
リビングに入るとまずは濡れた制服を脱ぎ、バスタオルで体を拭く。
その後、体が冷えないようにバスタオルを体に巻き暖房をつける。
服はもう着ないので紗那が上がったら洗濯機の中に入れる予定だ。
暖房をつけたらバスタオル一枚でもそれなりに温かい。
紗那の服を乾かすことも考慮すると、扇風機も紗那が服を干すところに当てておく。
「シャワーと着替ありがとう。次、シャワーどうぞ」
「分かりました。私がお風呂に入ったらリビングで服を乾かしておいてください。暖房と扇風機をつけているのですぐに乾くと思います。ハンガーは自由に使って大丈夫です」
「ありがとう。なにからなにまですまないね」
「いえ」
ちゃんと約束は覚えていたらしく、ドアを開けずに声をかける紗那。
その後、紗那が自分の部屋に行ったことを音で確認しながら真希もシャワーを浴びる。
濡れた床とまだ残る湯気と紗那の残り香。
ついさっきまでここで紗那が裸でシャワーを浴びていたことを想像すると、変な感じがする。
「……私はなにを馬鹿なことを考えているんだ」
真希は煩悩を振り払うように頭を横に振る。
その後、シャワーを浴び終えた真希は上下グレーのスウェットを着て自分の部屋に入る。
真希の部屋は荷物が少なくベッドと勉強机と椅子、それに部屋の中央にローテーブルと座布団クッションが置いてあるだけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます