第44話 別にエロくありません

「服装が違うだけでこんなにも変わって見えるんですね」

「そうだな。制服か私服か違うだけでもその人の印象はかなり違って見える。例えば制服を着ていればあたしも女子高生だということが分かるが私服だと女子大生とかに間違われることもある。それに私服だと性別も分からんしな」


 確かに紗那の言う通り制服を着ていれば、コスプレをしていない限りその人は高校生だし基本スラックスを履いていたら男の娘、スカートを履いていたら女の子だと分かる。一部の高校生カップルがお互いの制服を着るのが流行っているらしいから例外もあるが。


 私服姿の紗那は確かに高校生というよりかは女子大生に見える。


 身長もかなり長身だし、立ち振る舞いも堂々としているし、胸も大きく色気が凄い。


 真希も紗那と知り合う前に私服姿の紗那に出会っていたら確かに女子大生に間違えるかもしれない。


「だから私服だと印象が変わるのは分かる」


 紗那はウンウン頷きながら真希に同調する。


 その後、メニュー表を開き真希はクーポン券が使えるハンバーグとライスのセットとドリンクバーを、紗那はサーロインステーキとライスのセットとドリンクバーを注文した。


 ちなみに注文を受けに来たのは清美とは違う店員だった。


「それじゃードリンク持ってきますので、なににしますか」

「そうだな。メロンソーダをお願いするよ」

「分かりました」


 前回紗那にドリンクを持ってきてもらったので今回は真希が先に声をかけ、ドリンクを持ってくることにした。


 紗那は真希の意図に気づいたのか少しニヤニヤしながら真希にお願いをする。


 真希は氷を入れてから紗那のコップにはメロンソーダ、自分の分にはオレンジを入れて席に戻る。


 もちろん、ストローを持ってくるのも忘れない。


「ありがとう北野後輩」


 紗那は礼儀正しくお礼を言いながら真希からドリンクを受け取る。


 その後、ドリンクにストローを差し、ドリンクを一口飲む。


 甘さが強く、氷を入れているおかげで冷えているのでおいしい。


「高校生になったら普通、バイトするんですかね」

「それは分からないな。清美はしているがあたしと麗奈はしてないしな」

「鈴木先輩はしてないんですね」

「そうだな。バイトしているよりも今は高校生を満喫したいからな。北野後輩はバイトに興味があるのか?」


 清美がバイトをしている姿を見て高校生になったらバイトをしている人が多いと真希は思ったが、そうでもないらしい。

 先輩たち三人の中でバイトをしている人は清美だけで、紗那と麗奈はしていないらしい。


 見た目的に紗那はしているイメージがあったので、紗那がバイトをしていなくて真希は心の中で驚いた。


 紗那のバイトしていない理由にも驚いたが、バイトをしていない理由を話していた時、なぜか物悲しそうな表情をしていた。


「半々と言ったところです。高校生としてのんびり過ごしたいという気持ちもありますし、それに先月まで中学生だったんですから自分がバイトしている姿が想像できないというか……接客業とかできそうにもありません。あんな営業スマイルできません」


 バイトしてみたいという気持ちも少なからず真希の中にはあるが、高校生になったのだから一人の時間を満喫したいという自分もいる。


 それに真希はまだ高校生になって一ヵ月も経っていない。


 まだどこか中学生気分が抜けないところがある。


 それに高校のバイトと言えば接客業が主流だろう。


 笑顔が苦手な真希にはハードルが高い。


「確かに北野後輩に接客業はなかなかハードルが高いな。それにしても先月はまだ中学生だったのか。それにしては大人に見えるよ。服装もエロっぽいし」

「なぁ……、どこがエロいんですかっ。普通ですよ、普通」

「そのシースルーとかエロくないか。しかも黒って」


 先月まで中学生だった真希に驚きつつも、今の真希はエロいと言ってくる紗那。


 なぜエロいのか意味が分からず真希は一瞬呆然し、どこがエロいのか問いただす。

 紗那が言うには羽織っているシースルーが真希のエロさを引き立たせているらしい。


 意味が分からない。


「別にエロくありません」

「すまない。少し言い方が悪かったようだ。先月まで中学生だったとは思えないほど大人の魅力を感じるよ」

「……そうですか。って最初からそう言えば良いんですよ」


 紗那もさすがに言い方が良くなかったということに気づき、表現の仕方を変えて真希に伝える。


 意味は変わっていないのに、言い方を変えるだけでこんなにも感じ方が違うなんて不思議だ。


 紗那に大人の魅力を感じると言われて喜んでいる自分がいる。


 その後、真希たちが注文した料理が届く。

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