第42話 ……花火とかもあるし、きっと四人で行ったら楽しいだろうな
「鈴木先輩はそういうの気にするんですか」
「いや、あたしは気にしないぞ」
「ならなんで私に聞いたんですか?」
「ちょっと意外だったからつい口から出てしまった」
もしかして紗那は友達が働いている店に行くのが苦手なのかなと思い確認するが違うらしい。
なんとも紛らわしい言い方である。
なんでそんなことを言ったのか理由を問いただすと、思わず口から出てしまったらしい。
二人で雑談していると駅に電車が入ってくるアナウンスが流れえる。
「そろそろ電車が来るようですね。すぐにプラットホームに向かいましょう」
「そうだな」
二人は少し駆け足でプラットホームに向かい、電車に乗り込み。
その後は二人で電車に揺られ、最寄り駅で降りる。
「そう言えば今日の北野後輩はスカートか。今までパンツ姿しか見たことなかったからなんか新鮮だな」
「そうですね。制服はスラックスですもんね」
「北野後輩はスカート派なのか?」
「別にスカート派、パンツ派はないですね。その時の気分でどっちを履くか決めています」
初めて見る真希のスカートに新鮮味を感じている紗那。
いつも制服姿の真希しか知らない紗那にとっては確かにスカート姿の真希は新鮮に映るだろう。
別にスカートが好きなわけではなく、その時の気分でスカートにしたりパンツにしたりしている。
「そういう鈴木先輩こそパンツ姿はなんだか新鮮ですね」
「パンツの方が動きやすいからな。基本休日はパンツの方が多いかな」
紗那がスカート姿の真希に新鮮味を感じているように、真希も紗那のパンツ姿に新鮮味を感じていた。
いつもスカート姿しか見たことがない人のパンツ姿を見ると、そのギャップに驚く。
紗那はパンツ派らしく、基本休日はパンツで過ごしているらしい。
真希は今まで知らなかった紗那の一面を知った。
「そう言えば来週の土曜日に近くで春祭りがあるが、北野後輩は行くのかい?」
「行きませんよ。行きたいと思っていないので。それに人混みはあまり好きじゃないので」
「そう言うと思ったよ。せっかくだから四人で行こうと思っていたのだが、どうしても嫌なのか?」
「……その日は予定があるので無理です」
話は来週に行われる春祭りの話になり、案の定紗那が真希を祭りに誘う。
もちろん、春祭りに行く気がない真希はその誘いを断る。
そもそも真希は人混みが苦手である。
すき好んであんな人混みの中に行きたいとは思わないし、そもそも祭りのなにが楽しいのか分からない。
屋台で食べ物を買って、金魚すくいや射的をしたりして遊ぶなら一人、家で過ごしていた方が真希的には楽しい。
紗那はどうして真希と行きたいらしく食い下がるが、人混みが苦手で行くのも面倒だった真希は予定があると嘘をついて断った。
「そうか……それはしょうがないな」
紗那も真希に予定があると言われればそれ以上、言うことができない。
「……花火とかもあるし、きっと四人で行ったら楽しいだろうな」
紗那がなにかブツブツ呟いているが、声が小さすぎて聞き取ることができなかった。
それに真希だって仲良し三人組に混ざって春祭りに行くのが気まずいという思いもあった。
確かに朝や昼休みに紗那たち三人と話しているが、どちらかというと先輩たちから話しかけてくるのであって、自分から話しかけることはない。
そもそも真希が話下手というのもあるが、やはり年上、しかも二個上の先輩と話すのは緊張するし気を使う。
まだ朝の時間や昼休みの短時間ならまだしも、春祭りは完全にプライベートで長時間三人といることになる。
三人のプライベートな関係に割り込めるほど真希は厚かましくはない。
それに紗那たちにとっては高校生最後の春祭りだ。
もし、自分が参加して最高の春祭りに泥を塗ることはしたくない。
真希も真希なりに紗那たちに気を使ったのだが、紗那の思いとは見事にすれ違い、そのすれ違いに真希は気づくことができなかった。
その後、清美が働いているというファミレスに到着し中に入る。
「いらっしゃいませ……北野と紗那じゃなん。珍しいね、二人がプライベートでも一緒なんて」
店に入ると店員として働いている清美がお客様を案内するためにやって来た。
清美は二人一緒に客としてファミレスに来たことに驚いている。
「たまたま駅で一緒になったので、成り行きで一緒に昼食を食べようとなったんです」
「そうそう。駅で北野後輩に会って一緒にご飯を食べに行くことになった時はあたしも驚いた」
「そうなんだ~へぇ~」
真希と紗那はたまたま一緒になったということを伝えると、なぜか清美はニヤニヤしている。
あの顔は全く信じていない顔である。
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