第34話 その言い方なんかエロいね麗奈
「それじゃー気を取り直して乾杯でもしますか。かんぱーい」
「「「かんぱーい」」」
清美の音頭に他の三人が合わせ、それぞれ乾杯し合う。
「鈴木先輩の飲み物ってメロンソーダですか」
「そうだよ。次はメロンソーダにするか」
「良いですね。次はメロンソーダでお願います」
「分かったよ」
「清美はなににしたんですか」
「コーラだよ。やっぱりコーラは定番だよね~」
「そうですね。コーラやメロンソーダやオレンジジュースは定番ですよね」
その後、フライドポテトが来るまで四人は適当に談笑をして盛り上がった。
「お待たせしました。山盛りフライドポテト二つです」
「ありがとうございます」
「ごゆっくりどうぞ」
店員がフライドポテトを持って来たので、紗那や清美がお礼を言いながら受け取る。
皿の上には揚げたてのフライドポテトが香ばしい匂いを出していた。
とてもおいしそうである。
「ここで一つ北野後輩に聞きたいことがあるのだが、良いかい?」
「はい?なんですか?」
「北野後輩はフライドポテトのケチャップやマヨネーズの二度付けは大丈夫なタイプか?それともダメなタイプか?」
いきなり紗那に真剣な表情で話しかけれたので何事かと思って身構えた真希だったが、真希からすれば深刻な話ではなかった。
確かに友達同士でもソースやケチャップの二度付けは嫌だと言う人もいるし、紗那たちが真希に気を使う気持ちも分かる。
そもそも真希はそこまで潔癖症でもないし、ソースの二度付けぐらいだったら全然許容範囲内だ。
むしろ、真希こそ三人の先輩に気を使って質問する。
「私は別に大丈夫ですが、先輩たちこそ大丈夫ですか。私、男なので、むしろ先輩たちの方が嫌じゃないですか」
「あたしは男、女関係なく友達なら問題ないよ」
「あたしもあたしも。仲良かったら男女関係なく大丈夫」
「私も北野さんとの二度付けは嫌じゃないですよ。お友達なので」
「その言い方なんかエロいね麗奈」
「エロいってなんですか。別にエロくないでしょ」
真希は男の娘で先輩たち三人は女の子だ。
むしろ先輩たちの方が嫌だと思い、気を使ったがそれは杞憂に終わった。
三人とも、特に真希との二度付けは気にしないらしい。
最後清美が麗奈をからかい、からかわれた麗奈は清美に噛みつく。
その後、フライドポテトを食べながら談笑し、フライドポテトが三分の二ぐらいなくなったところで紗那が本題に入る。
「北野後輩の話を聞かせてくれないか? あたしは北野後輩の味方だ」
「あたしも北野の味方だよ。一体なにがあったの?」
「私も北野さんの味方です。なにを言われても笑ったり茶化しません」
「ほら、もうすでに北野後輩には三人の味方がいる。大丈夫、君は一人じゃない」
友達なんていらないと思っていた。
でも、クラスメイトに目の敵にされ怒鳴り合い、誰にも相談できず一人ストレスが溜まっていった。なにか心当たりがあるならまだしも、なにも心当たりがないことが真希をさらに疲弊させた。
だが今は真希には三人の心強い味方がいる。
真希の右手から柔らかい感触と温かい温もりが伝わってくる。
右手を見ると紗那が真希の右手を包み込むように握り締めてくれていた。
その優しさが嬉しくて心強かった。
真希は今クラスで起こっていることを三人の先輩たちに話した。
三人の先輩たちは誰も笑ったり茶化したりすることなく、真剣に話を聞いてくれた。
「話してくれてありがとう。今までよく頑張ったな」
真希が話し終えると開口一番、紗那が真希に労いの言葉をかける。
「っていうかその桐島って感じ悪くなーい。別に北野なにも悪いことしてないじゃん」
真希の話を聞き終えた清美は自分のことのように怒ってくれた。
自分のことのように相手が悩んでくれたり怒ってくれるのは嬉しかった。
「確かにストレスが溜まりますね」
麗奈も険しい表情を浮かべながらも真希の心に寄り添う。
「とりあえずあたしが桐島という子を一発ぶん殴ってくれば良いわけ?」
「さすがにそれはやりすぎだよ清美。落ち着きなさい」
「暴力はダメですよ。それに一発桐島さんを殴っても問題は解決しません」
物騒なことを言う清美に、紗那と麗奈が冷静な声で清美を制止させる。
さすがに真希も愛理をぶん殴ってほしいとは思わないし、それで解決するとも思わない。
「良い案だと思ったのに~」
清美は名案を否定されて落ち込んでいる。
さすがに冗談だと信じたいが、結構ガチで落ち込んでいるところを見ると冗談に聞こえないのは真希だけだろうか。
「私のために色々と考えてくれてありがとうございます沢田先輩。それにみなさんに話しただけでも少し楽になれました」
先輩三人が自分のことのように色々と考えてくれることが嬉しかった。
だから真希は三人に感謝の気持ちを伝える。
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