第3話 紗那の襲来
その後電車内は紗那が一方的に話してうるさかったのだが、最寄り駅に下りると紗那の友達っぽい人がやって来て紗那と話し始める。
これでやっと解放されると安堵した真希は、紗那にバレないようにその場から離脱した。
「あれ、後輩がいない」
「紗那に後輩ってマジ受けるー」
「紗那にも後輩ができたんですね。その後輩さんとても可愛そうですね。こんなウザくて面倒くさい紗那に目を付けられてしまうなんて」
「っていうかこんな紗那に後輩なんてできるわけないじゃん。今日はエイプリルフールじゃないよ~」
「ホントに失礼だな清美は。本当に後輩ができたんだ。さっきまで一緒にいたのに」
ギャルみたいな子、清美が紗那をからかい、見た目が委員長みたいに真面目そうな子が真希に同情している。
清美にからかわれた紗那は必死に弁明しているが、二人は紗那の言うことを信じていなさそうだった。
紗那はからかわれているものの、三人でいる紗那はとても楽しそうで、ただ友達同士とじゃれ合っているだけなのだろう。
遠くから見ても分かるぐらい三人はとても仲の良い友達だった。
そんな三人をしり目に真希は一人で学校に向かった。
もちろん、新入生ということもあり学校に友達なんていない。
そのため、学校に着くまで真希に話しかけてくる人は誰もいなかった。
むしろ、一人が好きな真希にとってそっちの方が居心地が良かった。
その後、自分の教室に行き、適当に入学式まで時間を潰し、そつなく入学式をこなした。
その間クラスメイトたちはボッチにならないために、友達作りに勤しんでいたがそもそも友達とか興味なかった真希からすればその姿は哀れだった。
別に人間は友達がいなくても生きていける。
それなのにどうして人間はそんなに躍起になって友達を作ろうとするのだろうか。
真希には理解できなかった。
その後、最初のホームルームも終わり真希は帰る準備を終わらせて教室から出ようとする。
「あ、あの~北野さん。帰り、一緒に帰らない?」
ずっと一人でいる真希に気を使ったのか、それとも友達になりたかったのか分からないがクラスメイトの男の娘が真希に話しかける。
「ごめん、用事あるからもう帰る」
「あっ……うん。分かった。またね」
そもそも誰かとなれ合う気がなかった真希は冷たくその男の娘に返事を返す。
いくら興味がないとはいえ、無視するのは人として最低なことなので初対面の人に無視だけはしない。
断られた男の娘は物凄く残念そうな表情を浮かべながらも、まだ真希と仲良くする気を諦めていないように見えた。
「牧野さん。あんな人誘わなくても良いよ」
「ずっと不愛想だし、なに考えてるか分からないし」
「陽子を邪険するなんてあいつ何様っ。ホントムカつくんだけど」
「まぁーまぁー愛理ちゃん。私は別に気にしてないから大丈夫だよ。ありがとう愛理ちゃん」
「……まっ、陽子が気にしてないなら別に良いんだけど」
真希のそっけない態度が気に食わなかったのか陽子の取り巻き二人組が真希の文句を言う。
陽子とそれなり親しい関係の愛理が、冷たく陽子に当たった真希に対してまるで親の仇を見るかのように睨みつける。
そんな愛理を陽子は宥め、愛理も納得はしていない表情は浮かべていたものの怒りを収める。
そもそもクラスメイトだってたまたま同じ学校に入学し、たまたま同じクラスになっただけの他人である。
最初から仲良くする気などない。
「……早く家に帰ろう。今日は疲れた」
朝からウザい先輩に絡まれて、それだけで真希の疲労はピークに達している。
あんな奴といたらいくら元気があってもやっていけない。
唯一の救いがクラスメイトではないということだ。
同じクラスにいたらもっと、面倒くさかっただろう。
真希は紗那に出会わないように急いで昇降口に向かう。
「ここにいたのか北野後輩。探したぞ」
「げっ」
なんという執念だろうか。
クラスも分からないのにしらみつぶしで探して見つけたものである。
正直言って、怖いしキモい。
さすがの真希も嫌そうな顔を隠すことはできなかった。
「どれどれ、後輩の北野って」
「あの黒髪のボブカッとで眼鏡をかけている男の娘だ」
「あれねー。へぇー……なんか生意気そうな感じがするんだけど」
「それがまた可愛いんじゃないか清美」
「っていうか今、嫌な顔をされたように見えたんだけど本当に仲良くなったの」
「北野後輩からは『ウザい』と言われたがあたしに話しかけてくれるから仲良しだろう」
しかも今回は友達を一緒らしく、今朝見かけた巨乳ギャルと一緒だ。
二人は親し気に話しながら真希に近づいてくる。
こっちは結構本気で嫌がっているのに、相手にされているから『仲は良い』と紗那は暴論を言って来た。
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