一章 ③
「何だあの爺さんは……?」
流石に玄関の前には警備の男が二人、扉の両脇に立っていました。かなり鍛え上げられた屈強な身体つきです。両名とも守衛と同じ剣を腰に吊っています。
のそのそと足を引き摺る様にしてゆっくり歩いて来る明らかに不審過ぎるじじいに、警備の二人もやや困惑気味です。
「来客の予定はあったか?」
「いや。聞いてないな……待て! あの爺さんが持っている剣!」
「──っ! 止まれっ!」
じじいが持っている剣に気付いた警備の二人は即座に抜剣。強い口調でじじいにその場で静止するよう命令します。
「はあ? 何じゃって?」
「止まれと言っているっ!」
「最近どうも耳が遠くてのう。すまんがもっと近くで言うてくれんか?」
警備の制止を全く聞く様子もなく、じじいは無造作に二人に近付いて行きます。
「と! ま! れ!」
二人は剣をじじいに突き付けながら、
「ああ、はいはい。止まればよいのですな。何もそんな物騒な物を取り出さんでも、言うてくれれば分かるわい。全く近頃の若いモンは……」
クドクドとお説教を垂れ始めたじじいに、警備の二人は非常に困った表情を浮かべています。
じじいが持っている剣はどう見ても自分達、王の近衛隊だけに支給されている特注の剣です。その管理も徹底していて、近衛隊の家族ですらその剣に触れる事は許されません。
「申し訳ありませんがおじいさん。ここは王家の私有地です。許可なく入られては困ります。今直ぐ退去願います」
まずは冷静に、じじいに自主的な退去を促します。
場所が場所だけに即時に実力行使に出ても問題ないのですが、相手は只のボケただけのじじいという可能性も否定できない以上、いきなりの実力行使は王家のイメージにも関わって来ます。ましてや、うっかり大きな傷を負わせて後遺症や死に至りなどしたら目も当てられません。
警備の要請にじじいは
「あーはいはい。分かっておりますとも。これを息子に届けたら直ぐに帰りますじゃ。息子はどこに居りますかのう?」
二つの有り得ない事態に警備の二人の警戒度は最大に引き上げられます。
一人は剣を構えたままじじいを注視し警戒、もう一人がじじいの対応に当たります。
「おじいさん。名前は?」
「儂か? 儂は……じじいじゃが?」
「おじいさんなのは見れば分かります。そうではなく、おじいさんのお名前と息子さんのお名前を教えてください」
「ん? じゃから儂の名前じゃろ?」
「ええ。そうです」
「なら、じじいじゃ。じじい・G・ジジー。それがこの世界での儂の名じゃ。因みに息子はおらん!」
そう言い放ちながらじじいはするりと腕を、近付いて来た警備の男の首に絡めると、咄嗟に身を引こうとした男の力を利用し一息に圧し折ってしまいました。
「なっ!? 貴様っ!」
「遅い遅い!」
突き出された剣を僅かな動きで躱すと、伸びきった男の肘に手を添え曲げさせ剣の柄を手前側に引っ張ります。くるりと回った剣は男の魔力障壁を斬り裂くと、そのまま男の頭も真っ二つに割ってしまいました。
「儂が斬っても斬れなんだが、こ奴らが持っていると斬れるのじゃな。剣自体に何かあるわけではないという事の様じゃな」
なら用無しじゃと、剣は捨ててしまうかと思えばそうでないようで。
「まあ、何でも使い様じゃろう。斬って斬れぬという事もあるまい」
じじいは二つの死体には見向きもせず、堂々と玄関の扉を開けて中へと入って行きます。
中は吹き抜けの広い玄関ホール。上を見上げれば小さな太陽の様な物が、何にも支えられる事なく浮かんで周囲を明るく照らしています。そしてその更に手前、扉の内側直ぐの上空──じじいの真上──には照明よりは馴染みのある、こちらは若干機械じみた物が音もなく浮かびながら、レンズの様に見える物をじじいに向けていました。
監視カメラの様なものかのう。とじじいは推測します。
そしてそのじじいの推測は当たっていました。
侵入者を発見した偵察精霊ビットくん(商品名)王室特別仕様はけたたましいサイレンを鳴らしたりはしません。ただ静かに侵入者をその視界に収め続けています。その裏でリアルタイムの位置情報、映像、侵入者の各種データを採取し、敷地内の全近衛隊員及び警察機構本部、並びに王国軍の本部に緊急通報が送られていました。
じじいはビットくんに笑顔で手を振ると、ビットくんを従える様にしてそのまま屋敷内をズンズンと進んで行きます。当てなどありませんが、じじいは気配で目星を付けていました。
とりあえず一番強い奴が居そうな気配がする所に一直線でじじいは向かって行きます。じじいの読みは的確で、正にじじいが向かう先に王が執務を行っている部屋がありました。
目指す部屋は屋敷の一階最奥。馬鹿みたいに広い屋敷で、優に百メートル程はありそうです。まるで我が家の様に堂々と歩いているじじいの前後に、報せを受けた近衛隊員達が駆け付けて来ました。
全員既に臨戦態勢。じじいを見付けるや問答無用で襲い掛かって来ます。
屋敷の廊下は広く、大の大人が五人横並びになっても余裕で武器を振り回せる程。しかし相手をじじいと見て侮ったのでしょう。勇敢な三人の近衛隊員が無謀にもじじいに真っ向から向かって行ってしまいました。
じじいの剣の一薙ぎ、拳の一突き、脚の一振りで、あっさりと三人が床に沈み、内一人は帰らぬ人となりました。
全て魔力の篭らぬ只の物理的な攻撃に過ぎません。魔力が篭っていない事は、近衛隊員達には手に取る様に分かります。ならば魔力障壁が絶対防御として機能するはず。その思いが近衛隊員達の思考を混乱させていました。
しかしながら現実はどうでしょう。思考が停止し身体が鈍重になった近衛隊員達を、じじいは赤子の手を捻るが如く、次々と打ち倒して行きます。
「何が……。一体何が起こっているというのだ……ッ!?」
一人の近衛隊員が絶望の叫びと共に床に沈み、指揮官と思しき隊員が他の隊員とは違い杖を持った隊員に声を掛けています。
「奴のギフトは分からんか? あの強さ、相当なギフトのはず!」
杖を持った隊員は、杖をじじいに向けて構え何かを読み取っています。
「分かりません! 少なくとも攻撃系のギフトではない事は確実です。肉体強化の兆候も見受けられません!」
「馬鹿な! そんなハズがあるかっ! 例え奴が『成り上がり』だったとしても、ギフトなしで我等『地人』と戦える道理がない!」
「分かりません! 本当に分からないのです! あのじいさんは何のギフトも使っていません! 最も特殊な時空系のギフトの行使の痕もありません……っ! あのじいさんのギフトは恐らく自動永続系のゴミスキルです!」
杖を持った分析官の声は既に涙声になっていました。
目の前で次々と、碌な抵抗も出来ずに、軍の精鋭たる近衛隊の面々が討取られていっているのです。それも戦闘用のギフトも持たない雑魚魔人のじじい、唯一人によって。
敷地内を警備する近衛隊の数はおよそ百人。その内の半数が現場に駆けつけて来ましたが、気付けば残っているのはもう指揮官の周囲の十人ほど。他の警備を疎かにしてでもこのじじいを止めなければならないとの判断から、指揮官は残りの半数にも王の警護に駆け付ける様に指示を出します。
しかし流石のじじいもおかわりが来るまでのんびり待っていてあげる訳もありません。
「貴様ぁ! 貴様は一体何者だ! 何が目的で陛下を狙う!」
「カッカッ! 面白い事を聞くのう! 王を狙う目的など、王の命以外何がある!」
「陛下を殺して貴様に何のメリットがあるのかと聞いているッ!」
「ここの王とやらは強いのじゃろ! 死合うには丁度良い相手かと思うたまでよ!」
「なっ!? (何を言っているんだあのじじいは!)」
まるで理解出来ない行動原理に、隊長は絶句します。
「儂にとってはそれが一番重要じゃ!」
じじいが床を蹴って残る近衛隊員達に襲い掛かります。
迎え撃つ近衛隊の攻撃は全て躱され、いなされ、あるいはその力を利用され、瞬く間に薙倒されて行きます。集団による息の合った連携攻撃でさえ、じじいにとっては恰好のエサでした。
「ふう。まあ馴らしはこんなモンで良かろう。やはり調子が良いのう」
じじいは倒れ伏した五十人ばかりの近衛隊を尻目に、意気揚々と歩き出しました。
「静かになったな……。全く、賊など最初から私の所へ通せば良いものを」
近衛隊の働きに呆れと歓び、三対七くらいで気持ちが篭った呟きが零れます。
「待たせたかのう?」
「いいや。丁度午前の執務が終わった所だ」
堂々と執務室の扉から入って来た男に、この屋敷の主、グラディアス・ピースメイカーはそう答えるとペンを置き、書類をサイドテーブルに仕舞ってから悠々と顔を上げ男を視界に収めます。
「どんな猛者が現れたのかと思えば……。じじいではないか。近衛の質が問われてしまうな」
そう言うグラディアスも年の頃は四十手前。決して若くはありません。昔から続く貴族階級に良く見られるその例に漏れず、グラディアスもまた金の髪に碧の瞳を有しています。
グラディアスは口では侮る様な発言をしながらも、その目には一欠片の油断もありません。近衛隊を突破して来たであろうはずのじじいは傷一つなく、息一つ切らしていない。その事実を軽く見てはいませんでした。
「中々良く鍛えられた者達じゃったぞ。ちとあの魔力障壁とやらに頼り過ぎているきらいがあるのがいかんが、良き戦士達であった」
「御忠告痛み入る。今後の参考にさせていただくとしよう」
スッと椅子から立ち上がったグラディアスの手には、全体に
儀礼用にも見えるその大剣は、一人の勇者から奪った聖剣と呼ばれている物でした。
机を挟み対峙する王とじじい。
執務室の広さは
両者の間に張り詰めた空気が漂います。睨み合いが暫く続くかと思われましたが、「ふっ」とじじいが短く呼気を吐き出すと、机の死角に潜り込む様に移動します。
すかさず振り下ろされた聖剣が執務机を真っ二つに叩き斬りますが、じじいの姿はそこにはありません。
右か? 左か?
グラディアスは聖剣を握る右手側に聖剣を振り抜きました。
「ほっ! やりおるな!」
一人で正面から堂々と乗り込んで来る様な頭のおかしいじじいの事なので、利のある左手側ではなく、敢えて武器を持った右手側から来るだろうと読んだのは正解でした。
じじいを間合いに捉えたグラディアスは一気呵成に斬り掛ります。
グラディアスの剛腕から繰り出される斬撃の嵐は、その一撃一撃に必殺の威力が篭められています。真面に受ければじじいの持つ細剣は叩き折れ、よしんば持ち堪えたとしてもじじいの細腕では支えきれず、諸共に斬り裂かれる事は必定です。
その致命の嵐をじじいは実に楽し気に笑いながら、一つ一つ寸分の狂いなく捌いていきます。そこには全く無駄な力が入っていません。必要な箇所に、必要最低限の力で受け流して見せるその剣技の巧みさに、グラディアスは敵と知りながらも感嘆の念を禁じ得ませんでした。
「これ程の腕……どこで身に付けた?」
「必要に迫られて……かのう。流石の儂も寄る年波には勝てんでな」
元々じじいは小手先の技術よりも圧倒的力と速さで敵を圧倒する戦い方を好んでいました。しかしどうした所で歳と共に筋力は衰えを見せます。しかし敵はここぞとばかりに襲って来ます。それを迎え撃つには技術が必要となったのです。そうして磨いて来た技が今のじじいの強さでした。
「惜しい……。実に惜しいな。違う形で出会っていれば互いに剣を高め合えたかも知れんと思うとな。なに。今からでも遅くはないぞ? 私の近衛の師範として仕える気はないか? 報酬は言い値で構わんぞ」
「カッカッ! 笑わせおる! もう勝った気でおるか! 面白くなるのはこれからじゃぞ!」
「ふ……。残念だ」
両者共に身体を上気させてはいますが息はまだ乱れていません。剣の腕は互角に見えましたが、互いが持つ剣は互角ではありません。その切味、強度において聖剣は圧倒的優位に立っています。じじいの持つ細剣は所々が欠け始めており、剣を振るっているのがじじいでなければとっくに折れていた事でしょう。
とは言え流石にそろそろそれも限界に近い事を伺わせます。
仮にこのまま剣が砕けなかったとしても、持久力ではグラディアスに劣り、じきに残りの近衛達も駆け付けて来る事でしょう。時間はグラディアスの味方でした。
グラディアスは油断なくじじいの挙動を注視していましたが、内心ではやはり勝利を確信していました。
「ふぅ~……。どっこいしょ……。ん~~~~~っ!」
じじいは細剣を杖代わりにぐっと背中を後ろに反らして伸びをします。
突然のあまりの隙だらけの行動に、グラディアスは咄嗟に反応が出来ませんでした。いえ、隙だらけ過ぎた事で逆に動けなかったのかもしれません。
「ん? なんじゃ。掛かって来んのか? 隙だらけだったじゃろうに」
「ふん。そんな見え透いた罠に掛かる奴がどこにいる」
「いや。別に罠とかではなかったのじゃが……」
じじいは単に気合を入れる為に伸びをしていただけで、本当に隙だらけなだけでした。勿論グラディアスが斬り掛って来ても対処できるという自信の現れでもありましたが。
「まあ、良い。では
じじいの宣言にグラディアスは剣を握る手にギュッと力を篭めます。
そしてグラディアスの視界の中で、じじいの姿が揺らいだかと思うとその姿が消え失せます。
(消えた!? いや、莫迦なっ!? 私の前でそんな事は不可能だ!)
グラディアスが動揺も露わに周囲の気配を探り後ろを振り返ったその時──。
グラディアスの目の前で姿を消して見せたじじいは、既にグラディアスの足元へと踏み込み、剣を斬り上げ今にもその首を斬り落とそうとしていました。しかしその事に、グラディアスは全く気付けていません。
(そこそこ愉しめたが、まだまだじゃの。これで終いじゃ)
その時──、じじいの直感が今まで感じた事のない異様な気配を察知します。
その気配は部屋の中心に突如現れ、膨れ上がっています。
(この気配……。爆撃機に空爆された時の感じに似ておる!)
じじいはグラディアスを斬るのを中断し、素早く机の残骸の影に身を隠しつつ床にピタリ伏せました。因みにじじいと戦った爆撃機は、じじいに高射砲で撃墜されました。
じじいが身を隠すとほぼ同時、じじいの感じた嫌な気配はある一点を越えた瞬間、チカッと一瞬光ったかと思うと──
ズッガ────────ッン!!
と大爆発を起こし、執務室を文字通り吹き飛ばしていました。
「ぬううううっ!」
室内を吹き荒れる爆風に吹き飛ばされそうになる身体を、じじいは渾身の力で保持します。爆発の威力からするとこの程度の爆風のハズはないのじゃがと視線を上に向けると、もうもうと立ち込める砂煙の隙間から綺麗な青空が覗いていました。
なんと、周囲数十メートルにもわたって屋敷の上半分だけが綺麗に消し飛んでいました。
爆発の威力が上方向に見事に制御されていた事が窺えました。
床に伏せていたじじいは僅かな余波に耐えるだけで済みましたが、直立していたグラディアスはひとたまりもない──。流石のじじいもそう思っていました。
しかし砂煙の向こうには、爆発などなかったかの様に平然と立っているグラディアスの姿がありました。鬱陶しそうに砂埃を払う仕草には、一切のダメージを感じさせません。
(何と!? あの爆発の直撃を喰らって無傷とは。異世界人恐るべしという所かの……?)
未知の脅威の出現に、じじいは即座に撤退を決め込みます。
グラディアスを相手にしながら、この謎の力を相手にするのは流石に分が悪い。何しろこの爆発を起こした主が何処に居るのかさえじじいには掴めていません。
そうと決まればじじいの行動は早いもので、グラディアスから隠れたまま未だ舞い続ける砂煙に紛れてその場から離れて行きます。都合の良い事に先程の爆発で敷地の壁も一部が崩れており、簡単に外へと脱出する事が出来ました。
そのままピースメイカー家の屋敷から距離を取り、追跡者の気配がない事を確かめると一度屋敷の方を振り返り、立ち昇る砂煙を眺めながら、
「良い良い。やはり異世界は良い。こうでなくてはのう! さあて、何か手立てを考えんといかんのう!」
じじいは実に楽しそうに、年甲斐もなく胸を弾ませながら街の中へと消えて行きました。
「御無事ですかっ!? 父上っ!」
「アメリちゃ~ん! パパを助けに来てくれたんだね! ん~……愛してるっ!」
「キモッ! 離れて下さい!」
態度を豹変させたグラディアスが、駆け付けたアメリに熱烈なハグとキスを振り撒きます。毎度の事とは言え、実の父親がこれでは年頃の娘が嫌がるのも無理はないでしょう。
部屋というか屋敷を吹き飛ばした犯人は、このグラディアスの娘でアメリと呼ばれる少女でした。父親であるグラディアスとは違い、小柄で細身な体型をしています。淡いブロンドの髪に碧の瞳は父親譲りでしょう。絶世の美少女という訳ではありませんが、誰からも愛される可憐さと愛嬌があります。
「ところで賊はどうなりましたかっ! 派手にブッ飛ばしてやったと思うのですがっ!」
「ん~? 賊とかよりもう一回ギュってしていい? もう逃げちゃったみたいだし」
「却下です! しかし、あの爆発から逃れられましたか……。残念です」
それほど残念そうにも見えませんが、不満そうな顔も可愛らしいです。
「ならば! 街まで追っかけて私の魔法で成敗してやりましょう! では父上、そうと決まれば行って参ります! とうっ!」
「あっ! コラ! アメリちゃん! 待ちなさーい!」
グラディアスがしゅんとしている隙にアメリは飛行魔法で浮かび上がると、制止するグラディアスの言葉など聞こえぬとばかりに、ビューンと飛んで行ってしまいました。
「あーっはっはっはっはっはー! 正義を執行するっ!」
声高らかに叫ぶアメリの声だけを残して。
遠ざかって行くアメリの気配を感じながらグラディアスは深いため息を零しました。
「全く……。誰に似たのやら……」
「今のは……? アメリ様ですか?」
この頃になってようやく、応援に呼ばれた近衛の代理指揮官がグラディアスの許へ駆け付けて来ました。
先の爆発魔法がアメリの仕業だろう事は、近衛であれば直ぐにピンと来ていました。
「ああ」
「直ぐに追いかけさせましょう」
「いや、構わん。好きにさせておけ。腹が減れば帰って来る。それよりも……コレをどうにかせんとな」
顔も名前も知らないたった一人の襲撃者を、この数百万の人口を擁する王都から見つけ出すなどという繊細な事が、あの娘に出来るなどとはグラディアスは全く考えていませんでした。
なので喫緊の問題たる、ほぼ瓦礫と化した屋敷の惨状に目を遣ります。
「はは。そうですね。アメリ様がお戻りになられるまでには片付けておきたい所ですね」
「私としては罰としてアメリにやらせたいのだがな」
アメリが居る時と居ない時のギャップが激しすぎないでしょうか、この王様。
「ああ。それが嫌で逃げられたのかも知れませんね」
「全く。本当に、誰に似たのか……」
倒れた近衛達の治療、遺体の処理と屋敷の修復作業は、専門の魔術士、魔導士が多数動員され何とか日が暮れる頃までには完了したのでした。
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