推し活では大事です

ぬまちゃん

指圧の心は母ごころ、

 シュッ、シュッ!


 使い慣れた中指を使って器用にスマホの画面をスクロールしてから、親指を使って引用ツイートを起動する。


 ポチポチ。

 プチプチ。


 引用ツイートにコメントを書き込んだら、ツイートするボタンに軽く触れる。


「ふぅー。よーし、コレで今日の分のリツィート目標数に達したかな」


 僕はスマホの画面から目を離し、スマホを充電器にセットする。


 それから眼精疲労でショボショボした眼球に栄養を与えるために、まぶたをギュッと閉じた状態で眼球を上下左右にグルグルと動かす。

 視神経は眼球の運動を視覚に変換してチカチカした星空の風景として脳細胞に送り続ける。そして最後に眼頭を親指で押しながらグリグリと思いっきり揉み干す。


 ネット小説の世界には、ダイヤのように磨けば光りそうな原石がゴロゴロしているのだ。

 今は無名でも、昨日の夜まで誰にも知られていなくても。明日には、来月には、次回のネット大賞の受賞後には、多くの読者がさも当然のように読んでいる、知っている作品が現れる。


 僕はそんな素晴らしい小説を発掘してネットの民に紹介するのを楽しみに、日々多くのネット小説を読んでSNSを使って発信している。

 それに作者自らがネット上で宣伝しているのを見つけたら、積極手に『いいね』したりコメント付きのリツイートを行い作品の拡大を陰から応援してもいるんだ。


 そして応援した作品が大きく取り上げられていくのをコッソリと喜ぶ。


 でもね、毎日毎日画面を見続けていると目がショボショボになるだけじゃなく、両肩と首筋もバキバキになってしまう。


 だから……ほら。

 ネットの作業が終わったら。

 推しの作品にいいねを押し終えたら。


 肩と首のツボに向かって指を当てて。

 ……推せば命の泉わく……


 (了)

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