第39話 経理

グラン・プリマをオープンしてから、経理にメリアが来てくれている。非常に聡明でミスすることは殆ど無く、経理以外にも色々と手伝ってくれている。事務所はグラン・プリマの寮の一室を改造してそこを使っている。



「小春、ちょっと良いかしら」


「どうしたの? メリア」


「現時点の資金状況の報告をしたいんだけど」


「わかった、ちょっと待ってて」


小春はメモ帳を持ってきた。


「はい、どうぞ」


「まずは、先月の各店舗の売上からね。

1号店が、曜日にも寄りますが1日の平均で、大金貨2枚と小金貨5枚ですので、

ひと月の売上が、大金貨で62枚と小金貨5枚です、(620万5千円)」


「これは、予想通りだね」


仕事の時はメリアは小春に対して敬語を話すのだ。

なんでもケジメだそうだ。


「続いて2号店ですが。

一日平均が大金貨3枚と小金貨6枚くらいです。

ひと月あたり、大金貨90枚です。(900万円)

2号店の売上が多いのは職人街に近いこともあり回転が早いのが原因だと思われます。」


「なるほど、すぐ出来るメニューを少し増やしたほうがいいかもね」


「次にグラン・プリマですが、こちらがちょっと……」


メリアは額に手を当てた。


「だよね~ どんな事になってるの?」


「はい、平日の売上ですが大金貨25枚~40枚とバラツキがありますが平均すると、だいたい大金貨35枚程度です。これをひと月に換算すると大金貨875枚になります。(8千750万円)」


「おうふっ、凄いことになってるのね」


「はい、3店舗あわせて月商が大金貨1027枚と小金貨5枚です(1億250万5千円)。3店舗合計の人件費、大金貨200枚を差し引いて大金貨827枚と小金貨5枚(8千275万円)」


「凄まじいわね、一ヶ月だよね」


「はい、では続きを、プリマの材料原価だ約30%ほどですが、グラン・プリマの原価率が3~5%ほどです」


「超ボッタクリ!飴ちゃん1粒5000円で売ってるようなもんじゃん」


「あめちゃ?」


「あ、気にしないでw」


「ですので、プリマ2店舗の材料原価が大金貨45枚と小金貨6枚です(456万円)、グランプリマの材料原価が大金貨24枚程度です。(240万円)」


「え? プリマ2店舗合計よりグラン・プリマの材料費が安いの?」


「はい、粗利ですが、売上合計の大金貨1027枚から人件費の200枚、材料費大金貨69枚を引くと粗利は大金貨785枚と小金貨一枚になります(7千850万円)」


売上月額

プリマ2店舗合計   大金貨187枚(1870万円)

グラン・プリマ    大金貨875枚(8750万円)

-----

計          大金貨1062(1億620万円)

人件費合計     △大金貨200枚(2000万円)

材料費       △大金貨69枚(690万円)

賃料        △大金貨4枚(40万円)

-----

純利益        大金貨789枚(7890万円)


年商         大金貨9468枚(9億4千680万円)




「言葉が出ないわ」


「はい、3店舗でコレですからこれから展開していくと大変なことになりそうですね」


「で、現在の金庫にはどれくらいあるの?」


「先月数えたときで、大金貨1万5千枚くらいでしたね」


《ちょ、15億円じゃん!》


「何か不測の事態が起きて営業出来ないときのために大金貨2千枚(2億円)は確保しておきたいわね」


「そうですね、それが良いと思います」


「今回、学校と寮を作るでしょ? 結構、お金かかりそうだけど大丈夫?」


「どれくらい見積もってますか?」


「最大で大金貨5~6千枚くらい、それ以上は陛下にお願いするわ」


「問題ありません、おそらく蒸気機関の権利代金も入ってくるかと」


「あぁ~、あれかぁ、要らないんだけどね」


「なんと! お父様が聞いたら卒倒しますわよ、フフフッ」


「ハハハッ」


メリアと小春は引き攣った笑い声。




それから二ヶ月が経った。


―――― 建設現場にて ――――



「どうだい? 小春ちゃん、一階部分はだいたい出来たぜ」


「うん、イイ感じだね」


校舎を視察に来ていた。


「校舎は良いと思うけど、寮のほうはどう?」


「あっちはヒルダが現場監督をやってるよ、声かけてやんな」


「うん、そうする」



「ヒルダさ~ん!」


「小春ちゃん、ちょっと降りてくから待ってな」


ヒルダが3階の足場からリスのようにクルクルと降りてきた。


「ふぅ、ようやく形になってきたよ」


「うんうん、すごいね!」


「だろ? タタキのオヤジんとこの若いのが気合入ってるからな、予想より早く仕上がりそうだよ」


「事故とか気をつけてね」


「ああ」


「中って見れる?」


「ああ、問題ないよ、見てきな」


そう言って小春とヒルダは中に入っていった。


「トイレはこんな感じで良いかい? コレに便器と手洗場を設置するんだ」


「うん、思ってたよりいい出来だね」


「そうだろ?」


「で、8階建ては行けそう?」


「あぁ、問題ないよ、鉄骨の仕上がりが良いからね、10階建ても問題ないだろうね」


「さすがアガシさん、今じゃ王宮お抱えの鍛冶師みたいになってるもんね『錆び知らずのアガシ』だっけ? 二つ名」


「ハッハッハッ、アガシのオヤジも小春に感謝してたよ、『小春のお陰で夢みたいな仕事が出来てる』ってな、私もタタキのオヤジも感謝してるよ」


「私こそ皆んなには感謝してもしきれないよ~、そうだ、皆んなお昼ごはんはどうしてるの?」


「あぁ、各々持参してるみたいだよ」


「グラン・プリマは昼営業してないから、よかったらお弁当作ろうか?」


「お弁当ったって、常時50人はいるぞ」


「50人くらい問題ないよ、見習いさんに作ってもらうから、勉強にもなって丁度いいわ、あ、勿論、お弁当代はタダでいいからね」


「ほんとかい? グラン・プリマの料理が無料かい?」


「グラン・プリマの料理と言うか、高級でもない普通のお弁当だよ、むかし屋台でお弁当売ってたでしょ、あんな感じのお弁当」


「それでも有り難いよ~ みんな喜ぶだろうよ」


「じゃぁ、明後日からお弁当つくるね」


「ありがとうな、感謝してるよ」


「うん、じゃ、そう言うことで」


小春はヴィヴァルディの春を鼻歌で歌いながらスキップで現場を離れた。




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