ー珈琲たいむー お仕事熱心なミラ


今日は休日、日曜日だ。特に用事もなく久しぶりに街へ散歩に出た小春。


「この辺も様変わりしたなぁ~、私がこっちに来た頃と全然ちがくなってる。」


小春は噴水広場のベンチに腰掛けて市場で買ってきたリモネを絞ったアプレジュースを飲んでいた。



「あれ? ミラちゃんじゃないかな?」


噴水亭の店先をほうきで掃いていいる。


「噴水亭も今日って定休日のはずじゃ」


「いらしゃいませ~♪」


「看板下ろしてるし、ドアも閉まってるからお休みだよね」


「いらしゃいませ~♪」


ミラが誰かに声をかけてる。

ミラが箒を持ったまま歩き出した。


「いらっしゃませ~♪」


「誰に挨拶してるんだろう」


「あ!そっちに行っちゃだめですよ、お客様」


どう見てもおかしい。

小春は後をつけた。


「お客様~、お会計がまだです~♪」


「誰に言ってるんだろ」


「あ!」


ミラが何かに気がついた様子。


「おまたせしました、今日のランチのスタミナチャーハンです。」


「え? エア接客?」


「お味は如何いかがですか?」


《超、気になるんですけど》



小春はミラに近づいた。


「ミラちゃん?」


「小春お姉ちゃん♪ いらっしゃませ~♪」


「どうしたの? 誰かと話してたみたいだけど」


「ミラね、接客の練習してるの。小春お姉ちゃんみたいにカッコいい接客がしたいの~♪」


《ヤバイ♡ カワイイ!》



「へぇ~、そうなんだぁ~」


「うん、小春お姉ちゃんはお休み?」


「そうだよ、散歩してたらミラちゃんを見つけたから声かけたの」


「ありがとう、でも、ミラお客様またせてるからゴメンネ」


「お、おぅ」


「じゃ、またね~、小春お姉ちゃん♪」


「頑張ってねぇ~」


ミラは小走りで去っていった。


「ミラちゃんって、どうしてあんなに可愛いんだろ? きっとダンさん夫婦がいい人だからだよね」



ミラがあちこちでペコペコ頭を下げている。


「おもしろそうだから、尾行してみよ♪」




ミラは職人街の入り口にいた。


「おまたせしました~ 今日のランチです♪」


ミラはペコリと頭を下げて野良猫にパンくずをあげている。


「ごゆっくりどうぞ~♡」


「ミャァ~」


そう言って立ち去った。




「ん? 今度はお花屋さん?」


小春は楽しそう。



「いらっしゃませ~、3名さまですか?」


3本のひまわりに話しかけている。


「今日は暑いですねぇ、お冷どうぞ~」


そう言って、ひまわりに水をあげた。


「ご注文決まりましたお呼びくださ~い♪」


ミラはヒマワリさんにペコリと頭を下げた。



「あ!お客様~! お待ち下さ~い!」


ミラが走り出した。


《ミラちゃん、転ばないでよ~》



酒屋の前でミラがピタッと止まる。


「食い逃げはダメですよ! 衛兵さんに言いつけますからね!」


よく見るとヒマワリから飛んだテントウムシに言っているようだ。


「今回だけは、多めに見てあげますけど、次は衛兵さんに言いつけますからね」


ミラは腰に手を当ててテントウムシを叱っている。



「大変お騒がせしました~」


そう言ってミラはテントウムシが止まっていた、酒樽にペコペコと頭を下げた。


《ちょっと~♡、わたし溶けそうだよ~ ミラちゃんが欲しいわ♡》



「よおぉ、ミラちゃん今日も練習かい?」


酒屋の店主がミラをみつけて出てきた。


「おじさん、こんにちは」


「今日のランチは何だい?」


店主が微笑んでミラに言った。


「今日のランチはスタミナチャーハンです、フォカッチャと麦ごはん、どちらにしますか?」


「そうだなぁ~、今日は麦飯にしようかな」


「あ! いっけな~い! チャーハンの時は麦ごはん無いの、忘れてたぁ」


「そうかい、残念だなぁ」


店主はポケットからキャンディー取り出して


「ミラちゃんお会計、ほら代金だ」


「有難うございま~す」


そう言ってお辞儀した。



ミラはトコトコと市場へ向かい、ベンチに腰掛けた。


「ふぅ、ランチタイムも終わったから、そろそろ賄いを食べましょうか」


ミラはポケットからキャンディーを取り出した。


「今日の賄いは、特別にキャンディーですよ~」


包み紙からキャンディーを取り出し、ポイッと口に入れた。


「ん~~、美味しい~♡」


ベンチに座った足をブラブラさせて市場を見回している。



ジューススタンドの子を見つけ手をふるミラ。

スタンドの男の子も手を振っている。


「ミラちゃんどうしたの?」


「接客の練習してるの」


「へぇ~」


「あ! これあげる。」


ミラはポケットからキャンディーを2つ取り出して男の子にあげた。


「ありがとぉ、じゃ俺もこれあげる」


男の子がミラにジュースを渡した。


「ありがと~」


とミラが礼を言う。


二人は向き合って


「ありがとうございましたぁ~ またお待ちしてま~す♪」


と言って、ペコリとお辞儀した。


《子供たちって、どうしてあんなに可愛いの? 私の小さい時ってどうだったんだろ?》



ミラはジュースをチューチュー飲みながらトコトコ走り出した。


帰り道に酒樽とヒマワリと野良猫に


「有難うございました~、お気をつけてお帰り下さ~い♪」


と言ってお辞儀した。



噴水亭が見えてくると店先にいたダンに気づいてミラが駆け出した。


「お父さ~ん!」


ドテッ!


ミラが転んでしまって、ジュースが全部こぼれてしまった。

ミラはすぐに立ち上がって、持っていた箒で掃除した。


「大変申し訳ありません、服は汚れませんでしたか?」


そう言って地面に何度も謝った。


ダンがミラに気づいてやってきた。


「怪我しなかったかぃ? ミラ」


「うん、大丈夫だよ、でもね、お客様にジュースこぼしちゃったの」


「ハッハッハッ、そうか、父さんも一緒に謝ってあげよう」


二人は地面にペコリペコリと頭を下げた。



「家族って良いなあぁ、誰か私を貰ってくれないかなぁ、子どもが欲しくなっちゃたよ」


小春はそう言いながら家に向かった。途中ミラがこぼしたジュースを見て小春もペコリと頭を下げた。



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