第30話 自警団
コンコン、コンコン
《だれだろう、こんな夜中に》
コンコン、コンコン
《盗賊?》
「ゾーイ、起きてる?」
「シルフィ、起きてる?」
小さい声でゾーイとシルフィを呼んだ。
「はい、居ます」
「誰か下に居るんだけど、怖いから一緒に来てくれない?」
「分かりました、武器とってきます」
そう言ってゾーイは短剣をシルフィは鉄のグローブのようなものを持ってきた
「コン…ワ…… ンバ……ワ……」
震えるような声が玄関からしている
《幽霊?》
「お!おばけ?」
シルフィは小春の後ろに隠れた。
黒い影が入り口の外で揺れている。
「…ン…ワ …タ…ス…ケ…テ……」
ガタガタガタ!! と扉が揺れた。
「ギャー! ゾーイ! おばけ!」
小春たちはゾーイの背中にしがみついた。
「シェシェシェシェフたちはコココココに居て下さい、わわわ私が見てきます」
ゾーイもガタガタ震えながら、扉へ近づいた。
ゴトゴト!
「タ……ス…ケ……」
ゾーイは意を決して扉の鍵をあけ一気に開いた。
ガチャッ!
ゴトッ・・
「ウギャーーー! で、出た! おばけー!」
三人は腰を抜かして厨房へ行こうとしていた。
「何者だ!!」
警護していた衛兵たちがなだれ込んできた。
衛兵が持つ灯りにてらされた先には、行き倒れた男がいた。
「ミ…ミズ…ヲ…… タ…ベ…モ…ノ……」
「遭難者? こんな都会で?」
「とりあえず詰め所へ連行します」
衛兵たちが男の両腕を抱えた。
「ちょっと待って、ゾーイ、お水と何か食べ物を持ってきて」
「は、はい」
「衛兵さん、もうちょっと待ってもらっていいですか?」
「分かりました」
そう言って小春は男に水と食事を与えた。
「そんなに急いで食べちゃダメよ、ゆっくり食べて」
男は腹を空かせた動物のようにがっついていた。
ひとしきり食べ終わると、バタンと倒れた。
「ちょっと、あなた、大丈夫?」
すでにいびきをかいて熟睡していた。
「えっと、どうしましょう?」
衛兵たちは小春を見つめた。
「ん~、害意はなさそうだし、少し寝かせてあげましょう」
「わかりました」
衛兵一人を残し他は警備に戻った。
明け方頃
「小春様、男が目を覚ましました」
衛兵の一人が小春の肩を揺らして起こした。
「ん、ん」
シルフィとゾーイは寝ずに見張っててくれてたようだ。
「ごめん、寝ちゃってた」
男は小春にジャンピング土下座をした。
「申し訳ありませんでした~!」
悲痛の叫びで男は謝った。
「うわっ! びっくりした!」
シルフィとゾーイがササッと小春の前へ
「大丈夫」
小春は二人を制して、男の肩に手をあてた。
「話しを聞かせてくれるかな?」
優しく問いかけた。
「はい、私はゲイルといいます、タタキさんの紹介で小春さんに会いに来ました」
「ゲイル?」
衛兵が驚いた。
「あー、タタキさんの、でもどうしてあんな夜中に?」
「何事も早いほうがいいと思いまして、タタキさんから話をきいてすぐに来たのですが、三日間なにも食べてなくて……」
「なるほど、ちょっと待ってね、ゾーイとシルフィも朝ごはん食べるでしょ?」
「あ、はい、俺たちが作りますよ」
「ありがとう」
ぐぅ~ っと衛兵のお腹も鳴った。
「し、失礼しましたっ」
「せっかくだからここに居る全員分おねがい」
「はい」
二人は厨房へ入っていった。
朝食を済ませて、ゲイルから詳しい話を聞いた。
ゲイル曰く「騎士団はたるんでる」「注意したら逆ギレされる」「無能な上官が嫌がらせする」「上官のくせに弱い」などなど文句を言ったらクビになったそうだ。
《ん~、結構クセが強いかも》
「それでゲイルさんの意思はどうなの? べつにウチじゃなくてもお仕事見つかりそうだけど」
「いえ! 小春様はすでに命の恩人です! 是非、働かせて下さい! 給金は要りません、食事だけ頂ければ結構です!」
「それじゃ奴隷ッスよ」
シルフィがツッコんだ。
小春は苦笑い。
「では、試用期間を3ヶ月ほど設けてもいいかなぁ? それで判断して決めるのはどう?」
「わかりました」
「いつから働けそうですか?」
「今からでも、問題ありません!」
ゲイルの身なりを見て
「とりあえず身体を洗って綺麗な服に着替えましょうか? ゾーイこの人に服を貸してもらえる?」
「わかりました、ついて来い」
「ついて来るッスよ、私達は先輩ッスからね」
「はい! 先輩!」
そうしてゲイルの試用期間が始まった。
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