第29話 警護
「おーい! 小春いるかぁ~?」
階下からタタキの声がする。
「おーい!」
「はーい、今行きまーす」
小春は一階に降りていった。
「あら、タタキさん、どうしたの?」
「災難だったな、小春、怪我はもういいのか?」
「動くと、少し痛むけど仕事には差し支えないわ」
「そうかい、無理しなさんなよ」
「うん、ありがとう」
「それで、きょうは?」
「あ、そうだった、お前さん用心棒雇わないかい?」
「用心棒?」
「まぁ、護衛だ、表に居るようなゴツいのがついて回っちゃ、お前も疲れるだろ?」
「そうなのよ、陛下のお気持ちは有り難いんだけど、四六時中ついてまわるから街の皆んなも話しかけづらいって言っててね」
「だろうなぁ、そこでだ、俺の知り合いに近衛騎士やってるヤツがいるんだがそいつの紹介で腕の立つヤツを紹介できそうなんだ」
《陛下のご意向もあるしなぁ、一度相談に行ってみよっかな》
「ありがとう、でも一度、陛下にお伺いたててみる、いろいろとお世話になってるしね」
「そうか、わかった、また連絡してくれ、近衛騎士のヤツには話し通しとくからな」
「うん、ありがとう」
それから2日ほどして、小春は職人街の服屋におもむいた。
「おばちゃ~ん、いる?」
「あら小春ちゃん」
「どう? 出来てる?」
「あぁ、完璧さ、試着していくだろ?」
「うん、そうさせてもらうね」
そういって、頼んでおいたドレスを試着した。
それは、淡い緑と桜色の薄い生地で仕立てられ、小春のイメージにぴったりだ
「おかみさん、すごーい! 軽くて動きやすいよ」
「そうだろ、この生地はこの辺じゃ手に入らない特級品さな」
「さすが、女将さん! センスも最高だね、良い仕事してるよ~」
「まぁ、こんな良い生地使わせてくれるのは小春くらいだか、こっちも気合が入るってもんさ」
「そりゃそうと、大変だったねぇ、怪我はもう大丈夫なのかい?」
「はい、おかげさまで」
「そりゃ、良かったよ~、職人街の連中も心配してたんだよ」
「ごめんなさい」
「小春が謝るこっちゃないよ、ハッハッハッ」
女将はそう言って小春の肩を叩いた。
「女将さん、私はこれで」
「あー、気をつけてな」
「はーい、あ、代金はこれで足りるかな?」
「5万だよ~」
「残りは受けっ取って~、チップってことで~」
小春はそう言って7万Gを机に置いて出ていった。
「まったく、あの娘は・・」
翌日、王宮にて
「陛下、小春様がお見えです」
「うむ、庭に通せ、それから近衛騎士団長も庭に待たせておれ」
「は、畏まりました」
陛下の側仕えは下がった。
「おぅ、待たせたな小春よ」
「はぃ、陛下におかれませしては、ますます・・」
「堅苦しい挨拶はよい、まぁ、座りなさい、お前も座りなさい」
そう言って、小春と近衛騎士団長を座らせた。
「おい、茶を持て」
「はい、只今」
「して、小春や、コヤツからだいたいの話しは聞いたが、お前からも聞かせてくれるかの?」
「はい、陛下、実は、カクカクシカジカでカクカクシカジカなんです」
「なるほどな、そこまでは儂も気が回らなんだ、許せ小春、して、どうしたいのじゃ」
「私の知り合いが近衛騎士に知人がいるそうで、その方から紹介して頂けると聞いております」
「そうなのか?」
近衛騎士団長に尋ねた。
「はい、陛下」
「して、その者はどのようなヤツじゃ?」
「はぁ、剣術、体術、ともに非常に優れております、しかし、その正義感が強いと言いますか曲がったことが嫌いと言うか」
騎士団長は歯切れがわるく濁した。
「それの何が問題なんじゃ?」
「その、正義感が強すぎて、自分が正しいと納得できないと上官にも楯突くしまつで、もう何人も上官がボコボコにされておりまして・・」
「ふむ、融通がきかんタイプか、それはソヤツを上手く使えん上官に問題があるのぉ」
「はい陛下が
「その者を呼びなさい」
「は、それが、ソヤツは既に辞めておりまして・・」
「ふむ、ソヤツを再度、招聘して隊を任せることはできんか?」
「おそらく、誰も隊に入りたがらないかと・・」
「ふむ」
王はヒゲをつまみながら考えた。
「あの、陛下」
「ん? 何か良い案でも思いついたか?」
「一度、その方に会ってみようと思います、話してみてそれから判断しても良いかと」
「ん~、そうじゃな、それが良いじゃろう、また報告に来なさい」
「はい、そうさせて頂きます」
「して、小春よ、今日の手土産は何じゃ?」
「もう、陛下ったら、私よりお菓子が本命ですか?」
「何を言う、
「ちゃんと、お持ちしてますよ人数分」
「ん? こやつの分もあるのか?」
騎士団長の目が輝く。
「こやつのは必要なかろう?」
「陛下、そんな事してたら
「フォッフォッフォッ! 冗談じゃよ、ほれお前も座れ」
「ハッ!」
「では、わたしはこれで失礼しますね、陛下、あまり食べすぎないでね」
そう言って小春は王宮を出てその足でタタキの工房へ向かった。
「タタキさん居る~?」
トンテンカンと忙しそうにタタキの弟子たちが仕事していた。
「よう、小春、どうした?」
タタキが汗を拭いながら奥から出てきた。
「今、忙しい?」
「いや、構わん」
「お弟子さん増えたね~」
「あぁ、小春の所の仕事受けてからお貴族様からの注文が増えてなぁ」
「よかったじゃん」
「小春さまさまよ♪ それで、何のようだ?」
「そうだった、この前の護衛さんの件だけど、一度会ってみたいの、どうかな?」
「ああ、そうだな、それが良いかもな、連絡つけとく、いつがいい?」
「私は営業時間外ならいつでも大丈夫」
「わかった、明日にでも小春の所に行かせるよ」
「うん、ありがとう、ところでコレ何?」
「鷹の石像だ、どうだ、いい出来だろ?」
「タタキさんとこって彫刻とかもやってるの?」
「いや、大工仕事が本職なんだがお貴族様がどうしても作って欲しいってんで、俺様が初挑戦したって訳さ」
「へぇ~タタキさんってホント器用だよねぇ~」
3メートルほどある鷹の石像を上から下まで眺めた
「ん? コレってどうやって工房から出すの?」
「しまった! 夢中でそこまで考えてなかった!」
タタキの工房の入り口は2メートルほど
「入り口壊さなきゃだね♪」
「くぅ~~~~」
「まぁ、今度はスゴイ入り口にしたらいいよ!」
「そ、そうだな、ハッハッハッ」
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