第14話 発明


建築を始めて3ヶ月ほどで小春の店は完成した。


「タタキさんヒルダさん、それにタタキさんのお弟子さん達、お疲れさまでした、本日を持ちまして完成です」


パチパチパチと拍手


「噴水亭から料理とお酒を取り寄せました遠慮なく召し上がって下さい、あ! 家具とか汚さないで下さいね~ 弁償してもらいますよ~」


そう言いながら乾杯した。


「そういや小春ちゃん、店の名前は決まってるのかい?」


タタキが尋ねた。


「はい、決まってます、名前は『プリマ』にします」


『オォォォ』


一同感嘆



「プリマってのはプリンの仲間かい?」


「いえ、私の名前が小春でしょ「小さい春」って意味なの、それで私のいた国では「春」のことを「プリマヴェーラ」とも言うのね、そのままじゃ長いから『プリマ』です」


『オォォォ~!』


「洒落てるね~、名前は『プリマ』で良いとして、シンボルマークはどうするんだい? 例えば肉屋なら鶏の印とか花屋なら花の印とかあるだろ?」


「それも考えてますよ、私の育った国では春になると『桜』という花が咲きます、正確には木に花が咲くんだけどね、その花の印をシンボルマークにします」


『オオォォ~』


「へぇ~、後で絵を描いてくれねぇか? ヒルダに清書してもらって看板を作るわ」


「はい、お願いします。」



「小春シェフ、感慨深いものがありますね~」


ルディが腕を組みながら店内を見渡した。


「そうだねぇ~、ルディがあの時助けてくれなかったら私今頃奴隷になってたと思うよ」


「いえ、シェフはすごくすごいですから」


《「すごくすごい」か》


「ノーラもありがとうね、ノーラが居なかったら今の私が想像できないよ」


「ん、ノーラは知ってた、小春の料理美味しいから」



「いいお店にしていこうね!」


「ん」


「ハイ喜んで!」


「ルディ、それ止めない?」



「そう言えば『すてんれす』はどんな具合ですか? この間鍛冶屋さんが来てたようですが」


「ん~、なかなか難しいみたいね~、アガシの親父さん苦戦してるみたい、ノーラ何か思いつかない?」


「ん、ノーラが出来るのは魔法を使うこと」


「そうかぁ、今度三人でアガシさんとこに顔だしてみようか」


「ん」


「とりあえずはノーラの簡易冷蔵庫と冷凍庫で行きましょ」


「そうですね」






――― 数日後、アガシの工房にて ―――


「こんにちは~」


小春達は鍛冶屋を訪れた。


「おう、嬢ちゃん」


「どうですかぁ~?」


「あぁ、だいぶ見えてきたんだがなぁ」


アガシは頭をさすりながら答えた。


「というと?」


「いやな、火力がたりねぇんだ、火の魔石も大きいのを使ってみたが火力が足りねぇ、コイツが解決できれば上手くいくかもしれねぇ」


「火力、ある」


とノーラ


「ん? どうした嬢ちゃん」


「ノーラ、火力出せる」


「あ、この子魔法使いなんです、結構凄腕の」


「凄腕ってもこの火力より強力なのはそうそう出来ないだろう、宮廷魔術師5人くらいでやっても上手くいくかどうかの火力が必要だぞ」


「ん、問題ない、どこ燃やす?」


「そこまで言うんなら試しにこの鉄を温めてくれ」



コーーーーーッ!


鉄が溶けて煙になって蒸発した。



「おうおうおう! ちょっと待て、一旦止めろ!」


アガシが焦ってノーラを止めた。


「ん、燃やした」


「火力は分かった、店は燃やすな」


「鍛冶屋が火事や」


ノーラ、久々のオヤジギャグ


「ね、凄腕でしょ?」


「凄腕なんてもんじゃないぞ、この嬢ちゃん」


「嬢ちゃん違う、ノーラ」


「ノーラちゃんよ、今度はコッチの石を溶けるくらいで頼む、蒸発させるなよ!」


「ん」



コーーーーーーッ!


クロム鉄鉱石がみるみる赤くなり水のように柔らかくなっていく。



「おぉぉ! こりゃ凄いぞ!」


「これでいい?」


「ああ、とりあえず火力はよさそうだ、だが、ノーラちゃんにしょっちゅう来てもらうわけにはいかんだろ?」


「問題ない、炉作る、どこがいい?」


「作るってどういうことだい?」


「ノーラは土魔法で炉を何処に作るか聞いてるんだと思います」


「ん、それ」


「じゃぁ、ちょっとまってくれ片付けるから、このへんに頼む」


「ん、分かった」



まずは土魔法でゴゴゴゴッ



「大きさはこれくらい?」


「ああ」



さらにゴゴゴ



「高さはこれでいい?」


「ああ、しかし、高温に耐えれるようにしなきゃなんねぇから、このレンガみたいな感じできるかぃ?」


「具体的にどうすればいい?」


かまを高温で焼いてほしい、真っ赤になるくらい少しづつ温度を上げてくれ」


「ん」



コボボボボ~



「そんなもんだ、今度はゆっくり冷ましてくれ」


「ん」



風魔法でヒュ~~



「これでいい?」


「あぁ、あとは窯の中だが、どうやるんだ?」


「さっきの温度でいい?」


ノーラの永遠に効果が続く魔法だ。


「あ、ああ」



コーーーー



「ん、出来た、試すといい」


「出来たのかぃ?」



鍛冶屋はクロム鉄鋼石を炉に入れてみた、じわじわと溶けて真っ赤になった。


「完璧だ、なぁノーラちゃん、この炉の横にもう少し温度が低いのを頼めるかい?」


「ん、問題ない」



ゴゴゴ~~、ヒュ~~、コーーーー



「ん、出来た」


「嬢ちゃんすげぇなぁ」


「嬢ちゃん、違う、ノーラ」


「あぁ、ノーラちゃん、あんた何者だい?」


「秘密、漏らしたら鍛冶屋が火事や、覚悟するとイイ」


「おっかねぇなぁ、秘密にするさ」


「親父さん、これで行けそう?」


「あぁ、久しぶりに腕がなるぞ! 期待して待ってな」


「じゃ、出来たら連絡下さいな、あ、おカネは足りてますか?」


「あぁ、まだまだ山程余ってるよ、心配するな」


そう言って鍛冶屋を後にした。




「シェフ、楽しみですね!」


「うん、ステンレスできると凄いことになるよきっと」


「ん、ノーラも楽しみ」



小春がステンレスの材料を知っていたのには訳がある、以前働いていたレストランのナイフ・フォークと三ツ星レストランのナイフ・フォークは同じステンレスでも光り方の具合が違うのに気づいて、ネットで調べた所クロムと鉄の割合で光り方が異なると書いてあったのを覚えていたのだ。

それで、ステンレスは鉄とクロムとニッケルで出来ているのが分かったが、ニッケルはどういったものか分からなかったのでクロムと鉄だけで試してもらったというわけだ。




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