第2話 ルディとの出会い

 ピピピッピピピッ!


「ヤバっ! 寝過ごしたー!!」


 小春は飛び起きて階段を駆け下りた。


「ヤバイヤバイヤバイ!」


「お母さん! どうして起こしてくれなかったの~~!」


「今日は部活の準備で早く行くって言ってたのに~!」


「あらそうなの? 聞いてないわよ」


「部活は放課後じゃないの?」


「今日は準備があるの、放課後に使う分の仕込みがあるの」


「間に合うかなぁ~ 朝ごはんはいらない、行って来ま~~す!」


「忙しい子ねぇ」


 ガラガラガラ~


 勢いよく出ていく小春


「ダッシュダッシュ・・・・って、アレ? ん? どういうこと? なんで?」


 ダッシュしかけて異変に気づく小春の目には、見たことない世界が広がっていた。


「ココドコ? ちょっと整理しよう、朝起きて、お母さんとなんか話して、玄関飛び出たうん、ここまでは覚えてる」


「って、ココどこよ~!」



 悲痛の叫びとも遠吠えともつかない声を出したら、周りの人がビックリして小春に注目した。


「あ、いえ、ごめんなさい、私、怪しくないです」


《じゅうぶん怪しいですね、スミマセン》



「え~っと、あそこに座って一旦落ち着こう」


 広場の小さな噴水に腰掛けた


「これってラノベとかである『転生』? あ、生まれ変わってないから『転移』? じゃぁ『ステータスオープン!』あれ? 違う? 『スキルウィンドウオープン!』…… おふぅ。」


 玄関出たところを振り返って見ても家が消えてる。


「なんだ夢か、寝る!」


 小春は二度寝した。





「部長オハヨ~~」


「部長おはようございま~す」


「皆おはよう、ってどうしたのみんな? こんなに早く」


「少しでも小春の負担を減らしてあげようと思ってね。」


「そうだよ、実家の手伝いもしてるでしょ。」


《なんて優しい子たちなの・・ 惚れるわ♡》



「そうだ部長、今日はどこに狩りに行く?」


「やっぱりダンジョンだよね! ダンジョン!」


「え? 狩り? なんの話し?」


「前に言ってたじゃない、毎週一回は定期的に休もう、その分狩りに行くときはガッツリ稼ぐ! って」


「ちょっとお尋ねします。私達って何部?」


「魔王討伐部」


 周りもコクコクとうなずく、そして場面は魔王城へ


「うりぁ~~~! とりゃ~~~!」


「●ねぇ~! このク●魔王め~!」


「部長! そっち魔王行った!」


《その『ボールそっち行った』的な言い方やめろ!》



「えーっと、必殺千切りアタ~ック!」


「ふん、効かんなぁ、全く効かん。それで必殺とは笑わせるわ、必殺とは、こういうのを言うんだ~! 必殺アツアツたこ焼き~!」


「うふぁ! ふぁふぁふぇふぁ~!」


 焼き立てのたこ焼きを口に放り込まれた瞬間飛び起きた。



「アチッアチッ! み・み・水! あ、丁度いいところに、ゴクゴクゴク って、あれ? 熱くない」



「お姉ちゃん、その水飲んだらお腹壊すよ。」


「え? あ? 噴水」


 小春は改めて周りをみまわした、馬車が走っている、ファンタジーアニメで見たような服装それに見たことない文字。


「ねぇ、ここは何処なの?」


「ココって王都のこと?」


「王都?」


「そう王都」


「なんて国? 国の名前は?」


「テレス王国だよ。」


《聞いたことない国だなぁ》



「ヨーロッパの方?」


「よろぱーは知らない、ここはテレス王国」


《やっぱりココって本物の異世界? なんかよく分かんないけどテンション上がる。》


「お姉ちゃんココの人じゃないよね? 変な格好してるし」


「え? あ、そうなの、どうしてココにいるのか分からないの」


「どこから来たの?」


「日本って国」


「ニホン? 聞いたことない。」


《だよね、だって異世界だもん。あれ? 日本語通じてる? あー、アレだ異世界補正ってやつだ》


「君、名前は? 私は小春、日向小春ひなたこはるって言うの」


「おれはルディ、みんなルディって呼ぶ」


《弱ったなぁ~、これからどうしよう・・・》


「グゥ~~~~ゥッ」


《やだ恥ずかしい! お腹なっちゃった。》



「小春おなかすいてるの?」


「う、うん。朝ごはん食べそびれちゃった」


「今はこれしかないけど食べる?」


 ルディはポロポロと崩れる黒パンをポケットから出して半分くれた


「あ、ありがとう。」


「硬いから水に浸して食べるといいよ」


「うん、そうする」


 噴水の水に浸そうとしたら。


「その水飲めないから」


「あ、そうだった」


「こっち来て」


 後ろを歩きながらルディを見ると、かなり痩せているのがわかった。


「ここの水は飲めるから」


 バラック小屋の軒先に雨水を溜めた樽があった。


《コレ飲むの?》


「あ、ありがとう」


「湯冷まし持ってくるから待ってて」


《そうだよね、アセったわ》


 ルディが縁が欠けた木の椀に水を入れて差し出してくれた。


「ありがとう」


《う、硬い! あり得ないくらい硬い! なんだろう、日本で例えるならば軽石だ! 軽石食べたこと無いけど・・・》


「どう?」


「うん、多分美味しい ありがとう」


《ルディの身なりや周りの建物から推測するとココってスラムだよね? この黒パンってルディにとって貴重なんじゃ?》


「小春はこれからどうするの? 寝るところとかあるの?」


《そのとおりなんです、それが一番の問題なんです、食事に寝る場所、トイレは最悪どうにかなるはず。》



「どうしよう……」


「寝るだけならうちに泊まっていいよ、汚いし狭いけど」


《スラム怖いなぁ・・でも野宿はもっと怖いよ~》


「ありがとう、お言葉に甘えさせてもらうね、ご両親に挨拶させてね」


「親は居ない、死んだ」


「あ、ごめんなさい」


「気にしてないよ、この辺りは皆んな孤児だよ」


《しまったなぁ、私ったら思慮が足らなかった。》


「お姉ちゃん、お金あるの?」


「そうだった、お金まったく持ってないオケラだ」


「おけら?」


「オケラは一文無しって意味だよ」


《祖父の言い回しが気に入って使ってた言葉が無意識に出ちゃった。》


「文無しかぁ、僕もカネは持ってない」


「いつもご飯はどうしてるの?」


「拾ってくる」


「え? さっきのパンって・・・」


「あれは2日前のだから大丈夫」


《げっ》


「大丈夫だって、お腹壊さないから」


「お、おぅ」


「小春は身なりは良いから、どこか日雇いで雇ってもらえるかも」


「私、料理なら自信ある!」


「さっきの噴水の近くに繁盛してる料理屋あるから行ってみたら? 店の前まで連れてってやるよ」


「うん、ありがとう!」


《こんな小さな子にお世話になりっぱなしだなぁ、いつか恩返ししなきゃ》


 噴水からすぐのところに行列の出来ている店があった。



「『噴水亭』ここがさっき言ってたお店、入ったこと無いけど安くて美味いらしいよ」


「ありがとう、あとは一人でなんとかするから」


「じゃぁね、がんばってね小春」


 そう言ってルディは戻っていった。


「さて! いっちょやりますか!」


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