異世界でレストランを始めたんだけど大変なことになりました。

異世界ふぁんた

第1話 小春、異世界へ

「急げ急げ~、電車は待ってくれないよ~」


 アルバイト帰りの小春は駅へ走っていた、現在高校二年生、昼間は学校で部活は料理部、放課後と休日は飲食店でバイトしている。

 とにかく料理が好きで最初はラーメン屋さん、その次は定食屋さん、その紹介で居酒屋さん、その紹介でお寿司屋さん、その紹介で料亭、その紹介でビストロ、その紹介でフランス料理のレストラン。

 そして現在、銀座にある高級三ツ星レストラン『シェ・ノア』でアルバイトしている。

 小春は17歳なので22時以降は働けない。


「賄い食べたかったなぁ~、今日はシェフが作ってくれてたのに~」


 小春の料理の腕は控えめに言って卓越している、国際料理コンクール、アンダー18で三年連続金メダルをとっている、その他にもお菓子やB級グルメなどの上位入賞者の常連だった、レストラン雑誌の取材もよく受けていた、『現代料理界のプリンセス』と呼ばれ、沢山の企業が青田刈りでアプローチしてきていた。


「ふぅ~、ギリセーフ」


 電車に乗るとカバンからノートを取り出し、今日のコース料理のレシピや調理法、盛り付けなどを書いていった。


「え~っと、デザートで使ったソースの材料なんだったっけ?」


 いつも、こんな調子で料理にどっぷりハマっていた、スマホの待ち受け画面は尊敬する外国人シェフの顔で、いつも同級生にからかわれていた。




「ただいま~」


 小春は店のドアを開けて帰ってきた、家は飲食店を経営しており店の奥と二階が住居になっている。



「おう、おつかれさん。」


「今日、お客さん多かったの?」


「そうだなぁ、まぁ2回転ってとこだな。」


「相変わらず繁盛してますなぁ、お小遣い増やしてもらわなきゃ」


「フランス料理屋でバイト代稼いでるじゃないか」


 二回転というのは店の客席が2回満席になったという意味、

 父親のお店の客席数が30席で客単価が3千円くらいだから

 30人x3千円x2回転=18万円、

 店は夕方5時~9時までで18万円だから個人店にしてはとても繁盛している。

 週イチの店休日を除いて月の売上が夕方だけで450万円、

 これにランチタイムの売上がプラスされる。



「今日のゴハンなに?」


「賄い食ってこなかったのか?」


「今日は忙しかったからね」


「そうか、じゃぁ今日は特別に【豪華残り物コース料理】だ!」


「はいはい、いつもどおりって事ね。」


《残り物でも父さんの料理ってホント美味しんだよね。》


「小春も早く食べて宿題終わらせなさい!」


「うん、わかってるよ、お母さんコック服は洗濯してくれた?」


「アイロンも掛けていつものところに置いてあるわよ! 部長なんだから自分でアイロンくらい掛けなさいよ!」


 小春は「料理クラブ」の部長である


「はーい! ありがと~!」


《少し小言がおおいお母さんだけど、お店やりながら面倒見てくれてるからとっても感謝してるよ、お母さん。》


 コンクールのトロフィーや部活の集合写真を眺めながらコック服をカバンにいれた。


「明日の部活のメニュー何にしようかなぁ…… あまり簡単なのは面白くないし。」


「デザートにするかなぁ~」


「それともB級グルメ系?」


「新入生が入ったばかりだから、デザートでお茶しながらお喋りするのもいいかもね」


「じゃ、モンブランにしよう!」


「甘いものは皆んな大好きだもんね、料理は楽しく美味しくだよね!」


「フン フン フン フフフ~ン♪」


 機嫌がよくなるとヴィヴァルディの【四季:春】を歌うクセがある小春はひとしきり独り言を喋ってから、宿題するのを忘れて眠った。




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