第1章 コリン村

第1話

 僕の名前は「ルーク」コリン村の農夫の家系に生まれ今年で5歳になる。

 なんでも、僕は勇者の生まれ変わりらしい。

 光りながら生まれてきた僕は、それからというもの、3か月程度で言葉を話し、父、母との会話に混ざり楽しく雑談をしていた。そして、1歳になる頃には、家のすぐ前の小さな庭で走り回りながら遊んでいた。人より成長が早いようだ。

 これには、村の人たちは少し奇妙がりはしたが、家の前を通ると優しく話しかけてくれるから僕は大好きだ。その中でもやはり、父である「デューク」と母である「マリナ」は大大大好きだ!

 普通なら奇妙がるはずの僕のことを大切に、育ててくれていて、毎日何をしていてもなんでも凄く褒めてくれる。

 たとえば、1歳の時には母のお手伝いとして洗濯物を一緒に洗ったり、これは今でも手伝っている。そして、2歳になる頃には、村長宅の古い文献を読み漁るようになり、3歳になる頃にはいろいろな国の文字を書けるようになった。そして、今、4歳である僕は父の畑仕事も手伝っている。

 これらに対して、僕の両親は


「一緒に洗濯物を洗ってくれるなんてママすごく助かるわ!流石ルークちゃんね!ルークちゃんのおかげですっごく奇麗になるわ!」


「えっ。もう本を読めるようになったのか?さすが、ルークだ!パパなんてほとんど読めないぞ」

「すごいわー!パパと違って賢いもの。将来が楽しみだわ」


「なに!?もう村長の所の本を全部読み終わって文字まで書けるようになったのか!?すごいなー」

「一つの国だけじゃないのよ!いろいろな文字を書いてるの!やっぱり天才で勇者様の生まれ変わりよ!!」


 と、このように溺愛されているわけで、少しうざいなと感じる時はあるが常に幸せを感じている。


 今日はも午前中に、母と父の手伝いをし、お昼からは僕の自由時間をくれている。くれているというか、子供は遊びなさいと父に言われ昼からの手伝いをさせてくれないのだ。もう秋で収穫の時期で忙しいのにだ。仕方がないので、何をしようか悩んでいると、


「ルーーーク!あーそーぼー!!」


 家のドアを勢いよく開けて入ってきたこの女の子は、村長の子の娘で同じ年の「ミル」である。

 すごく元気な女の子で、僕が本を読んで過ごしていても無理やりに外に連れて行く。あと、なぜか僕の他にも村には子供がいるのだが、僕の所にしか誘いに来ず、大勢で遊んでいても僕にぴったりとくっついて離れようとしないし、あまりしゃべりもしない。二人の時はいつも笑顔でおしゃべりだし、可愛いのになぜだろうか。女の子はほんとよくわからない。


「いいよ。何して遊ぼうか?」

「今日はね、村に紙芝居屋さんが来てるの!一緒に見に行こ!」

「紙芝居?」

「そう!いろいろな国の物語をお話ししてくれるんだって!」

「そうなんだ。それは面白そうだね!行こうか」

「うん!早く!早く!」


 気を付けて行ってくるのよ。と母から後ろづてに言われながら駆け足で家を後にする。


 コリン村は、王都からも遠いこともあり、数か月に一回程度、行商人が訪れる。その行商人から食糧などを購入するのだが、子供たちにとっては、様々な遊び道具などを売ってくれたりするので、皆お小遣いを握りしめて行くのだ。

 村の中心に向かう中、その中でもミルの話によると様々な国の物語を絵にして披露してくれるそうだ。普段から僕は、本は読むが絵がついているいわゆる絵本は村にも数種類しかなく既にすべて読み終えているので、他の国の物語を見れると知り、内心心が躍っている。


 そうこうしているうちに、大きくない村なので、子供の足でもすぐ中心にたどり着くと、行商人の様々なお店が展開していた。

 美味しそうな食べ物の匂いから、水水しい甘そうな果物。その他、派手な衣服から武器、玩具なども並んでいる。


「すごいおいしそうだね」

「お洋服もあるよ!かわいい!」

「どう?このおっきい剣!似合う?」

「うん!かっこよすぎる!なんでも似合うよ!!」


 二人であちらこちら見て回りながら目的の紙芝居屋に着いた。


「さぁさぁ!紙芝居を始めるよ!見たい子はこっちにおいでー!」


 荷車に大きめの扉が付いたような箱を乗せてお兄さんが子供たちを集めている。


「あっあれじゃないかな?」

「行こ!行こ!」


 手を引かれながら僕たちも紙芝居屋さんの前まで行く。


「さぁっ!今日のお話は・・・みんな大好き!勇者様の物語!僕の声が聞こえるようにみんな近寄ってー。静かに聞いてね」


 わぁーーと他の子どもたちが盛り上がる中、内心僕はがっかりしていた。なぜなら、何回も読んだ物語だからだ。そして、その勇者の生まれ変わりが僕だとずっと前から言われているので、聞き飽きたということもある。

 これなら他のお店を二人で回ってた方が楽しかったのではないかと思い、隣のミルをちらっと見ると、目を輝かせて今かと待ち望んでいたので、おとなしく聞くことにした。

 そして、物語が始まった。


 物語が終わり、結論から言うと、僕は感激して一人立って拍手していた。

 物語自体は僕が知っている通りの勇者物語。

 簡単に説明すると、千年前の勇者は、幼いころから圧倒的な力を誇り、魔物を屠っていった。そして、当時同盟を組んでいた、エルフ、ドワーフと共に魔王を倒した。

 という物語なのだが、このお兄さんの絵ももちろんなのだが、読み方がすごく上手なのだ。

 抑揚を付けられた話し方で、当時の勇者やその他の登場人物の感情が、実際にそうだったのではないだろうかというほど感情がこもっていた。

 素晴らしかった。


 紙芝居が終わった後の帰り道、ミルと二人で手をつないで歩いて帰る中もずっと頭の中では、さっきの物語が頭を回っている。


「面白かったねー」

「うん!正直何回も読んだ物語だったのに、あんなに読み方で面白さが変わるとは思わなかった!すごかった!面白かったなー」

「うふふ。終わってお兄さんに感想まで言いに行ってたもんね」

「ちょっと引かれ気味だったけどね」


 そう、終わった後、お兄さんに2時間ぐらい感想を言いに行っていた。

 やっぱり、素晴らしかったものには感想を言わないと気が済まなかったのだ。それにより、夕方になり帰る時間になってしまったのだ。


「あんまり遊べなくてごめんね」

「大丈夫。ルークが楽しかったら私も楽しいから!」


 にこっとすごくかわいく笑顔で言ってくれる。


「やっぱミルは、かわいいね」


 えっと声に出たかと思うと急激に顔が赤くなりぎゅっと手を握っていた手を放し、顔を隠すようにする。


「・・・ありがと・・・すき」

「ん?何か言った?」


 声が小さく聞こえなかったので聞き返すと、スタスタと前を歩いていき振り返ると


「ありがと!って言ったの!バイバーイ」


 そう言うと、さっさと走って帰ってしまった。


「うーん。なんだったんだろ?」


 疑問に思いながらも僕も家に帰った。

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